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2話 一撃の聖剣と、即席の箱庭

「……な、何、これ……っ!?」


 銀髪の聖騎士、フィオナの手の中で、折れていたはずの鉄屑が眩い奔流を放っていた。

 それはもはや剣という概念を超え、光の柱そのものだった。


「いいから、振れ。投資の回収(オークの討伐)が先だ」


「あ、ああ……っ!」


 フィオナが戸惑いながらも、迫りくるオークの一団に向けて、光の刃を横一文字に薙いだ。

 

 ――轟。


 衝撃波が森を揺らした。

 斬撃から放たれた白銀の雷光が、十数体のオークを一瞬で蒸発させた。

 それだけではない。刃の延長線上にあった巨大な岩も、何十本もの大樹も、まるで熱したナイフでバターを切るかのように、音もなく両断されていた。


「…………え?」


 フィオナが呆然と立ち尽くす。

 彼女の背後にいたエルフの子供たちも、涙を浮かべたまま口を半開きにしていた。


「ふむ、出力を少し上げすぎたか。『絶対切断』と『神の雷』の同時付与は、このレベルの素材には負荷が強かったな」


 俺が呟くのと同時に、フィオナの手の中で光が霧散した。

 残ったのは、先ほどよりもさらに細かく砕け散った、ただの鉄の粉だけだ。

 概念を上書きされた素材が、その強大すぎる定義に耐えきれず、役目を終えて自己崩壊したのだ。


「あ、あの……今のは、一体……? 私の剣が、まるで伝説の神話に出てくるような……」


「ただの効率化だ。折れた剣で戦うより、一撃で終わらせる方がお互いのためにいい。それより、怪我を見せてくれ」


 俺は跪き、彼女の太ももに刻まれた深い裂傷に手をかざした。

 

「定義:この傷は、一秒前に『存在しなかったこと』とする」


「っ!?」


 フィオナが短い悲鳴を上げた。

 光が走る。次の瞬間、彼女の鎧はボロボロのままだが、その下の肌は傷跡一つない滑らかな状態に戻っていた。


「……治ってる……。聖教国の高位治癒術師ハイ・ヒーラーでも、これほど一瞬で、完璧に治すなんて不可能です。あなたは、本当に何者なのですか……?」


「ただの事務員だ。さて、自己紹介よりも先に、今夜の宿を確保しないとな」


 俺は立ち上がり、辺りを見回した。

 この「死の森」の深部は、本来なら人間が足を踏み入れれば数分と持たずに魔物に食い殺される地獄だ。

 だが、俺の「効率的」な判断によれば、こここそが最高の拠点になる。


「騎士さん、そしてエルフの君たち。もし行くあてがないなら、俺の『庭』作りを手伝わないか?」


「え、ええ……。命の恩人の頼みなら、喜んで……」


 フィオナはまだ混乱しているようだったが、俺の差し出した手を取った。


 ◇◇◇


 俺たちは少し開けた、泉の湧き出る広場に移動した。

 

「さて……ここを拠点とする。まずは土地の安全確保だ」


 俺は地面に手を突き、概念の波道を広げる。


「定義:この領域において、俺が許可しない『悪意ある生命体』の侵入を禁ずる。また、内部の植物は一晩で理想の状態まで『急成長』せよ」


 ドォォォォ……! と、地鳴りが響いた。

 周囲の木々が生き物のように動き、絡み合い、広場を囲う巨大な「生きた城壁」を形成していく。

 足元には、ふかふかの青い芝生が瞬く間に広がり、色とりどりの花が咲き乱れた。


「な、なな……っ!?」


 エルフの子供たちが、驚きのあまり芝生の上で転がっている。

 彼らにとって、森は恐怖の対象だったはずだ。それが一瞬にして、王都の王立庭園すら霞むほどの美しいパラダイスに変わったのだから。


「次は居住空間だな。……あそこにある岩山を使うか」


 俺は視線の先にある巨大な岩の塊に人差し指を向けた。


「定義:この岩の内側を、一五名が快適に過ごせる『ラグジュアリーな住居』として再構築せよ。設備は――そうだな、自動洗浄機能付きの風呂と、温度調整された寝室を完備して」


 パキパキ、と硬質な音が響き、岩山が滑らかな大理石のような質感へと変化していく。

 やがて、そこには自然と調和した、幻想的な石造りのヴィラが完成していた。


「……ありえない……」


 フィオナが膝をついた。


「魔法……? いいえ、こんなの魔法の範疇を超えています。城塞都市を一つ建設するのに、どれだけの工員と魔導師が何年かけると思っているんですか……。それを、たった数秒で……」


「言っただろう。俺は効率を追求しているだけだ。さて、フィオナさんと言ったか。君は今日から、この拠点の『防衛責任者』兼『家政補佐』だ」


「へ? 私が……ですか?」


「ああ。俺一人で全てを回すのは非効率だからな。エルフの子供たちの教育も、君に任せたい」


「…………」


 フィオナは、呆然と目の前の「即席の楽園」を見つめた後、深く、深く溜息をついた。

 そして、どこか吹っ切れたような笑顔で、俺に深く一礼した。


「……分かりました。この命、あなたに預けます。カイル様……とお呼びしても?」


「好きに呼べ。……さて、お腹も空いたな。今夜はオークの肉の『有害物質』を全て消去して、最高級の『和牛』の味に書き換えて食うか」


「そんなことまでできるんですか!?」


 こうして、死の森の奥深くに、世界で最も危険で、世界で最も平和な「庭」が誕生した。

 

 その頃。

 王都のギルド『黄金の翼』では、勇者ゼクスが絶叫していた。


「おい! なんで俺の聖剣が折れてるんだ!? ミレーヌ! お前の魔法も威力が半分以下になってるぞ! どういうことだ!?」


 彼らはまだ気づいていない。

 自分たちが捨てた「ゴミ」こそが、世界の理を支えていた柱だったことに。

AIの文章が含まれています。

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― 新着の感想 ―
サンドイッチがあるならサンドイッチ伯爵がいるはず!などとは言いませんが わざわざ最高級の牛肉とかではなく和牛を使ったのは日本が存在するとか何か裏がありそうです。
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