8/10
『悪夢』
「何で、何で死ねないのよ!」
「死にたいのに、力が入らない」
「もう嫌よ。あんな夢、見たくない……」
女は泣き崩れた。
あいつから目を背けたまま、自分だけ逃げることは許さない。
「彼女が差し伸べた手を振り払った私に、生きる資格などない」
「夢を見るたびに、己の愚かさが憎い」
「……なのに、死ぬのが怖い」
男は首筋からナイフを離し、床に落とした。
「ごめんなさい」
母親にもう夜は来ない。
あいつの声が届く場所にいた者すべてに、夢を見せた。
自分の罪を理解した者もいた。
自分だけを哀れみ続ける者もいた。
どれもこれも、つまらない。
少しは気が晴れるかと思ったが、見れば見るほど不愉快で仕方がない。
俺は何もないあいつの部屋で、静かに目を閉じた。




