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『教師/侍女』

また、悪夢だ。


彼女が死んでから、毎晩同じ夢を見る。

生徒の模範となるような勤勉な生活。


しかし、いつしか噂が流れ始める。

彼女を貶める悪意のある噂だ。

誰もが遠巻きに眺める。

周囲の全員が敵に見えて恐ろしい。

しかし、彼女は噂にも動じず完璧に振る舞う。


だから私は、彼女なら一人で何とかできると思った。

いや。

そう思うことにした。


「先生、少しご相談したいことがございます」


また、この場面がやってきた。

目の前には、私がいる。

公平なつもりでいる愚かな男が。


公爵令嬢の口が開く。

彼女は助けを求めていた。

それなのに。


「君は優秀な生徒だ。この程度の噂なら、毅然としていればいずれ収まる」

「下手に教師が介入すれば、かえって騒ぎが大きくなる」

「君なら自分で対処できるだろう」

「期待している」


目の前の私は優しく笑っている。

寄り添っているつもりなのか?

ああ、そうだ。

私は勇気を与えた気になっていた。


だが、こんなもの励ましでも何でもない。

冷たく突き放しただけだ。

私は、彼女の伸ばした手を残酷に振り払った。

それなのに、彼女は微笑みを崩さなかった。

目の前の愚かな男に礼を言い、教師室を出ていく。


翌朝、彼女はまた学園へ向かった。

噂がこれほど恐ろしいとは思わなかった。

私には、こんな視線など一日たりとも耐えられない。

それでも、彼女は毎日学園へ向かう。


……もう、私を殺してくれ。


また、悪夢を見る。


お嬢様が亡くなるまでの夢を。

学園の生徒たちは、常にお嬢様から距離を取っていた。

王子に邪険にされている婚約者を、どう扱えばよいのか分からなかったのでしょう。


そして、噂が流れ始めた。

屋敷に仕える私は、そんな噂を知る由もなかった。

けれど、お嬢様をきちんと見ていれば、分かったはずだった。

お嬢様が、どれほど辛い立場におられたのか。

あの方には、家にさえ居場所がなかったのに。


旦那様も奥様も、お嬢様に厳しかった。

お嬢様は、朝早くから勉強し、学園から帰っても、夜遅くまで勉強をする。

毎日、その繰り返し。

それがお嬢様の日常だった。


夜になる。

目の前には、書き込みで埋まりかけたノートが開かれている。

顔を上げると、夢の中の私がお嬢様に紅茶を淹れている。

それを受け取ったお嬢様は私の顔を見てお礼を言う。

なのに、私はお嬢様を見ていなかった。


見ているつもりで、表情なんて何も見ていなかった。

その後も、勉強するお嬢様は何度か顔を上げ、そばに控える私を見ていた。

けれど、私は気付かない。


それから、数日。

お嬢様が言った。

「今夜だけ、もう少しここにいてもらえますか」


どうか「はい」と言ってほしい。

そうすれば、何かが変わったのかもしれない。

私でも、お役に立てたのかもしれない。


でも、そんなことはあり得ない。

それは自分が一番よく分かっている。

「申し訳ございません。まだ仕事が残っておりますので」

そんな理由で、私は断ったのだ。

使用人だからと、立場をわきまえたふりをして。


その後も、同じような日々が続いた。

お嬢様は何度か私を見た。

けれど、もう「そばにいて」とは言わなかった。

そして、やがてこの世を去った。


目が覚める。

この絶望を抱えたまま、私はいつものように侍女の仕事をする。


私には勝手に死ぬことなんて許されない。


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