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悪役転生。転生したら裏切り役キャラになっていたDLC  作者: 綿木絹


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そもそも見なかったこと。

 魔神軍団が隊列を組んだ後に、勇者たちの動きが止まった。

 ただ、今回は前までとは違う。

 ラブMAX連打の時と違うのは、行動の自由が存在することだった。


「キラリがいなくなったんだけど、アタシもアイザを迎えに行っていい?」

「仲間から外れた後なら、いいよ。その前なら返り討ちされるぞ」

「だったら俺も協力するぜ」

「アンタはいい。NPC(ざこきゃら)になってるアイザに何するつもり?」

「我も子孫を連れ帰りたいのだが」

「レイ。ハーレムルートは本当に存在するのかい?」


 未だにユーノが放つ闇の波動の下だ。

 けれど、ゲームのように強制される感覚はない。

 因みに皆は、空気が切り替わった瞬間を肌感で掴んでいた。


「俺の知ってる世界なのか、そうじゃないのか。もう訳が分からない…」

「君が言うバトル画面は外から破られたわけだね」

「マロンたちに助けられるとはな。逃げた後は研究施設でいいな?」


 デジタルで張り詰めていた空気が、偶然性を持つ自然に戻った。

 直後、マロカロボロ三姉妹が現れた。

 キラリは誤解されたまま、アルフレドに斬られようとした。

 レイの咄嗟の判断で、ハーレムルートが終わったのかもしれなかった。


「レイ。気にしても仕方ないわよ。魔王の間に来て、アタシたちが戦ってるんだから、マロンたちは役目を終えてたんでしょう?」

「然り。役目を終えた魔物に攫われるのは、勇者が先に捨てたからにござる」

「ボクたちが役目を貰ったのは、条件下にあったからだしねぇ。さて勇者の言う通り、新生した世界でまた会おうか」


 身近にもヒントが溢れていて、レイは項垂れる。

 人生と同じ。ここに居る全員が初見の反応だ。

 世界の再生を望んでいたアズモデは、今まさに他力本願で叶えようとしている。


「その未来は存在しないんだって」

「何故、そう言い切れる?君は確かによく知っている。君が知ってる世界のシミュレーターが全て正しいと言い切れるのかい?」

「正しい…んだよ」

「でも、ここ暫くは知らないことばかりなんでしょう?」

「頭痛が痛いでござるな。面妖なまやかしであったのであろう」


 ユーノを解放した後から、知らないことばかりが起きる。

 三姉妹が予定調和を崩したのか、予定調和が崩れたから三姉妹が登場したのか。

 全部がレイの勘違いとか、偶然の一致とか、ただの幻かもしれない。

 魔王軍の味方さえも、勇者アルフレドの考えを受ける。

 だから勇者たちが動きを止めても、復活四天王は何もしない。


「…まぁ、そうかもなんだけど」


 頭を抱えたレイ。彼が考えているのは、


 どうして予定調和が崩れ、知らないことが起きる世界を、確信を持って自分はゲームと言えるのか——


 というのは、悩みの1%にも満たない。


 眼前に広がっている圧倒的な疑問に比べたら、些細すぎる問題だった。

 ゲームだとか、ゲームじゃないとか、原田Pが何を考えていたかなんかも関係ない。

 完全デジタルのゲームだったとしても、逃れられない運命だったとしても、


 どう考えても、三つ目のエンドは存在するのだ。


「予定調和が崩れたから自由に動けた。あの時はキラリを庇ったけど、アルフレドを倒して止めることも出来た。勇者が居なくなったら、ユーノはユーリのとこに行って、全部終わらせる。アルフレド以外が生き残る世界が残る?いや、ゲームに従えば…」


 そう、

 勇者が死ぬバッドエンドはルート分岐に関係なく存在する。

 現実世界なら当然のことだし、ゲーム世界でも勇者チームの全滅はちゃんと存在する。


「や…ば…。そんなの試せてないし、試そうとも思わなかったし…」


 存在はしても、この世界線に存在していないのだとしたら…


 論破されはしたが、勇者の考え方は普通ではなかった。

 そしてヒロイン達の心酔ぶりが、ただ好感度MAXだからではないとしたら


「最後に触れた女神像の前に戻る。完全版はユーザーフレンドリーだから、レベルも経験値も引き継ぎ…。経験だから記憶を引き継いでるから、あいつらは世界が再生されると確信している…」


 勇者たちは一度、若しくは何度か全滅をしたかもしれない。 

 そこに辿り着くと、いよいよ頭痛が痛いくらい頭が痛い。

 厄介にも、魔王軍側では探知不可能。

 ムービーを挟む戦闘だとしても、魔物側はまるで初めて戦うような素振りを見せる。 


「アーマグ以降、どっかで死んだのかよ…。元・既プレイヤーであって、今は魔物仕草しか出来ない。さっき俺が殺したとしても、その世界線は無かったことになってるかもしれないのか」


 勇者を殺しても、なかったことにされて、同じ道を辿る。

 かと言って、ここで殺されたらアウトだ。

 光女神の再生の力を身をもって信じる勇者は、本気で神になれると信じている。


 そもそもの話。


 あの勇者がハーレムルートに行くとは思えない。

 ハッピーエンドの道は、五里霧中でも暗中模索でもない。

 暗雲低迷、万策が尽きた、八方塞がり、四面楚歌、進退維谷…、色々あるが


 絶体絶命、この一言が一番しっくりくる。


「いや…。そんなんじゃだめだ。だって…、それじゃ俺はなんでレイモンドになったって話なんだよ‼」


 絶望深淵の中で、

 魔神かどうかも分からない、元・超越者は


 ここにいる意味を見つける為に、勇者に向かって歩き出した。


     ◇


 元・既プレイヤーレイ。

 彼の気づきは大正解だった。

 ただ、レイが考えているほど、とんでもないことを考えてはいない。

 その度に、元・既プレイヤーが調節に動くから、大きく踏み外すことはなかった。

 レイは簡単に考えたが、全滅は二度と経験したくない苦痛を伴う。

 アーマグ大陸に渡った後に一度、秘密の塔の前で一度の計二回。

 二回しかなくても、アルフレドは光女神の使徒で間違いないと確信するには十分だった。


「最初から再生される。そうすれば、全部上手くいくよね」

「それはそうよね。ユーノちゃんが光女神なら、こんな苦労しないんだし」

「ばっちいおとこがいなかったら、ばっちりなのら」


 あと一歩まで追い詰めているが、彼女達の仕事はほぼ終わっている。

 ラブポイントは邪神デズモア=ルキフェ戦で登場した好感度のチラ見せ、即ちメインヒロインが誰かを匂わせる為に作られたスペシャル技の為に使われる。

 好感度の高いキャラほど溜まりが早く、100%になると出現する。


「アルフレド。あと少しですわ」

「フィーネが決めていたらね」

「それは…、魔神が予想外の行動をとったから」

「だいじょうぶなのら。魔神は回復してないのら、まだ間に合うのら」


 匂わせ用だし大ダメージを与えるしで、戦闘中に一度しか発動できない。

 好感度MAX縛りではない、DLC前は多くて三人。三人で十分にゲームバランスを破壊出来た。


 因みに、ここで重要なのはDLC前の事情だった。


 ファイナルヒロインは好感度がMAXが選ばれるのではない。

 最低限、これくらいというのもない。

 一番好感度が高かったヒロインがファイナルヒロインに選ばれる。 


「そ、そんなことより基礎を固めようよ。バフ、デバフの用意はいい?誰を狙うかも考えようか」


 すると勇者は仲間に再び指示を出した。

 だが、彼の発言はヒロインたちの神を信じる心と、無償の愛を以てしても、違和感しかなかった。

 勇者を創造神として、新世界を創って貰って、麗しい世界を創って貰える。

 勇者ではなく、王子ではなく、王でも皇帝でもなく、神の化身として。


 一人一人が恥じることなく、迷うことなくアルフレドとの未来を語ったのは、仮初ではない未来の自分達を思い描いていたからだ。


 ピロー枢機卿団は正直に、迷うことなく、まだ勇者の彼に告げた。


「あと少しだよ」

「ユーノのラブMAX技で、とどめを刺しましょう」

「ですわね。幸い、魔神は回復をしていませんわ。アルフレド、あと少しですわね」


 好感度MAXは売れ入れられる。

 一人欠けてしまったが、全員が同じ気持ちだった。


 だとしても神の化身となる勇者には逆らえない。


「ユーノのラブMAXスペシャルは、ユ、ユーリ用なんだ。ここは僕たちの力で押し切るよ!」


 けれど、ユーノは違う。


「ユーノの闇の力だから、ユーリとの戦いで意味があるのかな」

「打ち消し合う、という意味はあると思うけれど。でも、キラリの話だとこのバトルだけ出現したんでしょう?」

「裏切りのレイを倒す為です。今が好機かと」

「そうじゃなくて。ユーノは邪神だから、みんなとは違うというか」

「勇者たま。さっき、キラリたんが言っ…」


 ジャキィィィィィィ…


 鞘から抜かれる擦過音、反響していないのにそれにしては長い。

 ヒロインたちが険しい顔になっているから、何が起きたか言わなくても分かる。


「おいおい、勇者。いくら死に戻りしてるからって、こんな可愛い子を虐めちゃダメだろ」

「…何の話?それにお前は時間切れだって」


 黒刀を光の剣がスライドする。


「アルフレド。お前に聞きたいことがある」

「何が…?死に戻りのこと…、なんだ。やっぱり知ってるのか。みんなはそのまま見てて。さっきのは無し。コイツだけは僕が倒さなきゃ気が済まないんだ」


 そしてピンと幼馴染が通じ合う。

 少しだけズレているが、それでも剣と剣はちゃんとぶつかる。


「一対一か。アルフレド。俺が知らない世界で、おかしなことはなかったか」

「あったとしてもお前に教えるか。お前さえ倒せば…」

「俺を倒したら、どうなるんだ?」


 奇妙なバランスが生まれていく。


「お前のいない新世界が始まるんだよ。ユーノと僕とみんなで」

「そっちじゃない‼お前を殺しても、お前は死んでも女神像の前に戻る。俺が知らないことを知っているんだろ。何があったのか、教えてくれ」


 魔王軍最強のレイと、人間最強のアルフレドがぶつかる。

 全員が見守る中、一騎打ちの戦いは心を熱くさせるだろう


 でも、先のでアイザは退出。エルザとゼノスがアイザを連れて、研究施設に向かった。

 アズモデはニヤニヤと見ているだけだし、ドラグノフも腕組みして戦いに参加する様子はない。


 キラリ、アイザはアウト。

 エルザ、ゼノスもアウト。


 四天王は残り二人、ヒロインはユーノを除いて六人。

 減った人数は同じでも、少人数になればなるほど人数差は効果を発揮する。

 しかもドラグノフは読めないが、アズモデは内に抱えた本願が叶うかもしれないと参加を拒否した。

 これではもう魔神と言えども、レイに勝ち目はない。


「さっきから何を言ってるんだよ。僕は怒ってるんだ。…お前がフィーネのやつを避けたせいだ。その後もチャンスをやったのに…。お前のせいでユーノが責められてるんだ」


 レイは違う意味で勝ち目がないから、勇者本人に直接解決策を聞いた。

 開き直って素直に聞いたのに、勇者は激昂する。

 これもまた初見と既プレイヤーの違いか…


 いや、別の理由。


「なんで今の流れでユーノが責められるんだ?そんなことより…」


 似たようなステータスだから、一進一退の攻防だ。

 LPを使い果たしたヒロイン達は参加しないのは、彼女達にはチェックメイトが見えているからだ。

 ユーリとのラストバトルは勇者とユーノのペアで、ユーリと戦う。

 勇者がユーリと戦って負けて、死に戻ったとしても、ヒロイン達はいないから、彼女達はこの先を知らない。


 聞くなら勇者しかないのだが…


「そんなことって…。ユーノはラブMAX技が使えないから、皆から責められてるんだよ!」

「ユーノのラブMAX技はユーリ戦で出る…、あ…れ?」


 戦いながらのダブルタスクの中で、最近も何も役に立っていない魔神は、とんでもない大ポカに気付いた。


「違う!違う!そうじゃない!!アイツは俺とは違う!間違えたっ…、忘れてく」

「何って…?」


 メラメラと何かが燃え上がる音の中

 あっけらかんと、膝を打つ。


「だから忘れてくれって。そうだよな。アルフレドはユーノのラブMAX技を見てないが正しいのか…。じゃないと、アイツがあんな言い方をするわけない」


 本当に仕方のない男だ。

 魔神というキャラに押し込められた既プレイヤーとは違う。

 勇者が死に戻りを繰り返したとしても、あの超越存在には見えている。

 全知全能の神ユーリが「デッドライン」と言った以上、そこが間違いなくデッドライン。

 アルフレドの発言から、死に戻っているのは間違いないけれど、この先には行ってない。


「アイツって何?まるでレイは見たことあるみたいな言い方…だね」


 バチバチと燃え盛る心のせいで、瞳のハイライトが溶けてなくなる。

 煽り魔法の中でも最火力の魔法だろう。


 無自覚な、無神経な、ノンデリな、何も気付ず、意識もしない返答


「見たことあるって言っただろ?皆にも言ってる通り、俺は」


 俄に出現する可視化された炎。

 そして、落雷の如き黄金の光の全力突き。


 だとしても気付かないレイは、ヒラリと躱した。


「どうして避けるんだよ…」

「ちょ…、落ち着けって。ユーノが責められてるってんなら、俺からも」

「これ以上喋るな。ユーノの為に僕は勝つんだ」


 アルフレドの攻撃はそれでも止まらない。

 理由は分かりきったことだ。


「ユーノは僕のものだ。僕の方がずっとずっと前から好きだった。だからお前には負けられないんだよ、レイ‼」

「いきなりなんだよ…って、…え?えぇ?」


 明言しなかったのは、この悪魔が1㎜も気付けずにいたから


「僕は死んでもお前を倒す‼お前なんかにユーノを渡さない‼」


 ずっと前から殆どの人間、悪魔も半魔も気付いている。

 アルフレドは最初から徹頭徹尾、レイを恋敵として意識していた。


 理由は勿論…


「お前たちは死んでも女神の前で再生するだろうがっ‼だー、そういうことだったのかよ‼」

「無様に、みっともなく死んでよ。ユーノはお前なんか、大嫌いなんだからな‼」



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