勇者アルフレドVS魔神レイ(下)
ラブパワースペシャル技はゲームシステム由来だ。
「暗室の安息!」
故にターン制で動けるから、魔神たちは回復魔法を挟める。
魔神でも流石に25万ダメージはやはり痛い。
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そしてやってくるハートの形をしたミサイル。
次はキラリの番だ。
「アルフレド君…」
「今度、キラリの部屋に行きたい。もっと科学の本を読みたい」
「うん!あんなのに運転させてたんだから、アルフレド君はもっと勉強しないと駄目です」
「そうだった。…最初からキラリがいてくれたら…じゃなくて、これからもずっと一緒だよ。また、デスモンドでお茶をしよっか、キラリ」
その次はソフィアの番。
好感度MAXのヒロインとだけ出来るスペシャルな力。
「勇者様。あの男は伝承になかったのです。裏切ることは分かっていた…。もっと早くに私が」
「それは違う‼…大丈夫。ソフィアは何も悪くない。一緒に平和な世界を作ろう」
「はい…」
「いつも、ありがと」
「い、いえ。私は」
「ソフィア、大好き…だよ」
「はい、私も…。…え?そ、そ、その…」
愛を語り合い、世間的に許されるくらいのボディタッチが、重粒子砲とでも呼ぶべきレーザーに変わる。
それは、HPの四分の一くらい削る最強の攻撃技。
物理ではなく、魔法でもなく、愛の力。
愛って何なのさと言いたいが、体は傷ついてHPは減っていくし、何なら心も傷つくからMPも減っていく気がする。
「レイ、大丈夫かい?」
「滅茶苦茶痛い。ってか、連打するとか反則だろ。チートだ。システムを逆利用したある意味バグ技だ」
流石にバクかと訝しむ。
とは言え、ユーノルートは好感度MAXを強いる世界。
「やれやれ。エルザ、弟の回復をヨロシク。…次元破壊!」
とは言え、ハーレムルートだって同じことが起きるかもしれない。
そもそもこのチート行為を誰に報告すべきかも分からない。
そんな事を考えているうちに、次がやって来る。
「次、アタシ!えっとぉ。勇者様っ!この戦いが終わったらどっかに遊びに行かない?」
桃色の長い髪が勇者に纏わりつく。
アレをピンクゴールドと呼ぶかはともかく
「マリアのその明るさにいつも助けられてるよ」
「えー、そーかなー。お父様がね。今度はちゃんとお出迎えしたいって!」
「これが終わったら、マハージ様とイザベル様の、エクナベルのお屋敷で披露宴だね」
「うん!直ぐにエータ達に連絡するね」
ラブMAX技は正しく発動している。
DLC前のを使い回した演出でもよかっただろうに、収録し直している。
ほな、ハーレムルートか!と思ったところで鋭い視線が魔神の頭蓋を貫く。
「あの日…、不逞な輩をエクナベル家に招かなければ」
「マリアのせいじゃない。僕が連れ出したんだ」
「絶対に…、許せない」
「うん。そう…だね」
「勇者様…。愛している!」
「僕も。マリア、好きだよ」
♡
二人の究極の愛の形はたしかに眩しい。
そして今回も、だった。100%のラブと、敵意が同居している。
「ガハッ…、なんだよ、これ。愛を語るだけじゃダメなのか。DLC前は無かったぞ。相手は俺じゃないけど」
だからHPが削られるし、MP若しくは心が抉られる。
「知らないんだね。LPはただのラブじゃない。レイがロンリーでルーザーになるポイントでもあるんだ」
「はぁあああ⁈なんだよ、それ。聞いてねぇし‼」
「なんだ…、その程度なの?」
アルフレドのレイに向ける喋り方はきつい。
ただ、ラブMAX技のせいか、表情は柔和なまま
にやけて、暴言を吐く。気持ちの悪い顔。
「ってか、レイモンドの頭文字はRだよっ‼」
「何を言ってるのか分からないけど…。次、行こうか。エミリ‼」
◇
些細な違和感はハートのメテオストライクで掻き消える。
赤色のカーペットも元が赤と分からないほど、桃色に照らし続ける。
今回はせっかく同じ色のカーペットのヒロインが来ると言うのに
「お父さんがね、今度は畑も見て行って欲しいって」
(え…?)
「ってか、あんな大きな畑をお父さんとエミリだけで…」
「うん!でも、これからはアル様も。それから」
150㎝に満たないが、最も母性を感じさせる少女。
アルフレドの顔は二つの峰に埋もれて、嬉しくて、心地よい、窒息感を味わう。
同時に立たされたままの魔神は背筋に冷たい汗が伝う感覚を…、残念ながら味わえない。
明らかにおかしなことを言ったのに、ゲームに支配された世界、スキル発動のアニメーションは、時止めと同義だった。
「いっぱいいっぱい!子供を産む‼アル様のっ‼」
「く…、くるしい」
「ひ、ゴメン‼」
一分も満たないが、少なくとも三倍くらいに感じる時間。
そしてやって来る
「…あの時からアイツはひがんでたんだね」
「昔っからだよ。そういう奴なんだ」
不必要にレイの心を抉るターン。
それからも暫くいちゃついて、例のラブラブビームが魔神の体を焼く。
キラリが覗くスコープにはぐんぐん減っていくHPゲージが見えているだろう。
その後に、ぶはっと息を吐く。
背中からぬるりと液体が噴き出る。
「ちょっと待てよ」
「また嫉妬?ほんっとしつこいなぁ」
「お前には言ってない。エミリ、お前は何を」
「ひ…。アル様」
確かめなければならない、そんなルールはないのだけれど
二人が離れていく。
「お前がやられたら終わりなんだろ」
「ゼノス、ちょっと待て」
「今は退くで御座る。酷い出血…。最後まで戦いきれまい」
流れたのは、噴き出したのは真っ赤な液体だった。
復活四天王たちも魔神がやられたら終わりと本能で察知し、レイを連れ戻した。
ヒーラーに乏しいから、完全回復が出来ていない。
あと少しで魔神は滅ぼされるところだった。
キラリはそれを分かって覗いていた。
「…さ。そろそろ終わらせよっか、フィーネ」
「えぇ…」
リディア、サラ、アイザ、キラリ…
「フィーネ。アイツは孤独で蟲毒な存在だった。昔から」
「…分かってる」
ソフィア、マリア、エミリ。そしてフィーネ。
HPは100万もあるが、仲間たちの回復が無ければ1回半は死んでいる。
完全回復魔法持ちはいないし、一度の回復にも限度があるから、もしかしたらこれで終わるかもしれない。
「大丈夫…なんだよな。お前達は分かって、そうやってるんだよな。バグなんかじゃ、ないんだよな」
「レイ。もう観念しなさい」
晴れやかなドレスに着替えた水色髪の才女は、深い青色のドレスに包まれる。
もっと包んだほうが良い、とか老婆心も溢れそうになるが、
死を予感した魔神に余裕はない。
「僕からも忠告だよ。レイのロンリールーザーだった人生はちゃんと活かされるから。僕の中で生きるんだから」
「だから!お前には聞いてない…。この…」
すると視界が暈けた。
またハートストライクが始まった…
いや
手は動く。血が足りなくて、目が霞んだ。
それもあっただろうけれど、レイは自分の手を見て目を剥いた。
何故だか、濡れていた。でも、目を剥いたのはそっちじゃない。
「この世界で生きていく…。それでいいん…だよな…」
幼馴染二人も目を向ける。
新島礼だって、自分自身を俯瞰にして目を向けていた。
勿論、それはただの錯覚で、脳内のバグのようなものだ。
観念している自分を、ちゃんと確認して諦観した、そんな感じ。
それが一人の人間として衝撃的だった。
だが、この道の名はハーレムルートだ。
ラブMax技をヒロイン全員が使えるのは、ヒロイン全員の好感度がMaxだからだ。
「なら、俺一人を殺せ。俺だけが死ねば世界は救われる」
「レイ‼」
「何を言ってるのよ。総大将は貴方よ」
「戦わずして、負けるで御座るか」
ハーレムルートはユーノを失うルート。
アルフレドは昔からユーノのことが大好きで、昔からレイモンドのことが嫌いで、嫌いなヤツにユーノを穢された。
許せない気持ちは分かる。殺さないと気が済まないのだろう。
それでもお釣りがくるかどうか、それくらいには憎んでいる。
この大好きな世界を守るのは一人の犠牲で済む。
しかも一番納得しやすいカタチ、即ち自分自身の命で、だ。
そういや、神に。
…世界を愛しているのかって聞かれたんだっけ。あれはこう言う意味か
「レイモンドは嫌われ者だ。俺は一人、孤独に負けて死ぬ」
「…レイ。やっと認めたんだな?大将ヅラはもういいんだ」
「あぁ。ユーノがいなくなって世界から神の力が無くなって、新たな時代が到来する。アル、皆のことを頼んだぞ」
「カッコつけるなよ。お前はただ死ぬんだ」
「…そうだな」
「さ、フィーネ」
「…うん」
そして勇者は強烈な眼光を放って、最後のショーを始める。
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最果ての村から、いや生まれたときからずっと一緒の二人。
双子でも兄妹でもないが考えていることくらい分かる。
それでも、口にしないとダメな時もあるわけで
「あり…がとう。アルがいてくれてお陰で、私はちゃんと考えられるようになったよ。アル、私はアルのことがだーい好き」
「え…?え、えと。僕も大好き…。ううん。大大、大好きだ」
ただ口に出してしまうと、壊れてしまうかもしれない。
兄妹みたいな関係から、異性という存在へ
互いに思っているからこそ、いつもよりも距離が遠くなる。
「もう。何よ、それ。私の方がずっと上、超大好きなんだから」
「そんなことないよ。僕も超超超超‼大好きなんだよ」
「ううん。これだけは譲れない…」
そこから一歩踏み出す、 踏み出し過ぎていつもよりも近くなる。
水色の長い髪が慣性に従うか、逆らうかで揺蕩う。
本体がぴたっとくっついて、微動だにしないんだから。
それ故に残念ながら彼女の顔は見えない。
いつもはクールなフィーネの顔は赤く染まっているのだろうか。
「アル。私は世界で一番、…アナタを愛している」
やはり立たされたままの魔神は、動けもしないのに目を剥いた。
フィーネの強い気持ち、強い想いが篭められた言葉。
そして空色の髪故に僅かに透き通って見える、愛の顔。
——同時に、レイの頭の何かが繋がった。
もう遅い、とアルフレドは愛のささやきを強めた。
「僕もフィーネを、みんな愛してる…」
「私も。アルの全てを愛してる…。またスタトに戻って一緒に」
「うん。その前にフィーネ、同情とかしちゃダメだからね。幼馴染の僕たち三人がアイツを倒すんだ。悪いレイを…」
遅いも何もアニメーション付きの攻撃だから動けない。
さっきだって…、なんて思う前に
DLC始まって以降、初。本日二度目の
「ちょぉぉぉぉぉっと‼待ったぁぁあああああああああ‼」
コールが叫ばれた。
レイは自分自身を、観念して諦観したつもりになった自分をぶん殴りたい気持ちで飛び出していた。
「フィーネ、行くよ‼」
「…うん」
「その愛‼俺は絶対に認めない‼」
今までのラブモーションでは言い切れなかった。
今だって同じ考えのままなら、同じリアクションだった。
「これはゲームだからとか、この子の設定はこうだからとか。ステータスはどうとかさ。でも、それは間違ってて、気持ちは関係ないって」
ピロー枢機卿団なんて形成して、未来を憂うくらいだ。
間違いなく、皆は生きているのだろう。
「——幼馴染のテンプレラバー砲‼」
だから、これはフィーネの意志。フィーネと勇者が絡む攻撃。
勇者たちは愛を見せつけ、断面ハート型のビームが放つ。
敵がなんと言おうとも、これは必中技である。
「ふざけたネーミングしやがって」
どんな仕組みか、必中技は魔神のみを穿つ。
それは愛が為せる力…、であれば
残念なことに魔神は身を翻して、辛くも避けきれる。
必中だった理由が今、桃色の光の下に晒される。
先ずは心を抉る攻撃が入って、ターゲットされるからこその次の物理ダメージ攻撃が当たる。
「ちゃんと皆考えてくれて?ちゃんと自分の足で立って?いーや、システムだ。ステータスだ」
「な…、避けた?」
「私のせいじゃない。私は…、レイ、駄目よ‼」
心のどこかに嫉妬があった。
だが、答えを合わせるとちっとも嬉しくない。
これはある意味で功罪。好感度Maxというステータスの呪い。
プレイ中にも気付けていただろう、ヒロインたちの価値観。
「全てを受け入れる無償の愛?私たちはアルフレドの全てを受け入れる?世界が壊れてもいい?…そんなのは情緒じゃない。奥ゆかしさもない。ただの傲慢な人間以下の愚かな行為だ。そんな奴らに相手に俺は、…絶対に世界を終わらさせない‼」
ゲーム内、ゲーム設定の異世界もしくは単に異世界。
そんなこと、どうだってよかった。
彼も、彼女たちも、ちゃんと生きている。
だが、所詮はゲームだ。
それなのにレイはずっと、ここはゲームではない自然な世界だと何故か勝手に考えていた。
そうしなければならなかった部分も多い。
でもレイは今、彼女たちの心に触れて、改めて自分自身に誓った。
「ちっ。掠っただろ。それで倒れろよ」
「悪いな、アルフレド。簡単には死なないのが、俺の大事な個性だ。さて次は、散々舐めプしくさったお前が攻撃されるターンだったよなぁ‼」




