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悪役転生。転生したら裏切り役キャラになっていたDLC  作者: 綿木絹


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59/71

DLCの悪役もやはり

 ムービーは主観視点で眺めていた。

 どんな終わり方をしたかって言うと、自分語りだ。


「まぁ、今なら何となく分かる。。白い着物って言ってたけど、あれは白衣。この世界で白衣を着ているのは、研究所絡みの連中。キラリの記憶を奪ったのと同じ系統。それはそうだ。その研究に俺の親父も絡んでたんだからな。ってことは、チョウロもドラゴニア関係者。スタトは避難した人間によって作られた村」


 その後、語るならこんな感じ。


「やっぱりユーノは私と同じ時期の生まれじゃない…ってこと?」

「そうらしいな。忌み嫌った技術を使ってまで、俺の記憶を奪った。なんでだ?」

「私は記憶を奪われてなんかないわよ」

「当時のお前は五歳だ。ユーノはそれまでチョウロ様の家で暮らしていて、肌も弱かった外に出られなかったって言えば、普通に信じるだろ?」


 聞き手もいるから、終わったことに気付けない。


「うーん。10年以上も前のことだし…。ユーノの肌は白すぎて、日光に弱そうだし。だから分厚いコートを羽織っていたんだし」

「だろ。だから記憶を消されてたのは俺だけだ。それにしてもユーノって」

「うん。驚きだわ。ユーノは十年以上前からあの姿だったなんて」


 でも、このフィーネの反応で


「流石は神の器。ってか神だな。体の大きさまで…、って、フィーネ、今なんて言った?」

「何ってアンタが言った通りよ。ムービーであんなの見せられたら、信じるしかないじゃない」


 彼は漸く、ムービーの終わりを知る。

 勿論、目を剥いて


「み、見てたのか?なんでだよ」

「なんでって、ムービーはそういうものでしょう」


 ムービーにはルールがあった。

 ムービーを見れるのは、そこに登場した人物とプレイヤー、および恐らくユーノとユーリ。


「あたしも最初は女神像だと思ったけど、次の瞬間にはなくなってたもんね」

「ユーノ様は最初から女神様だった…ということですか?」


 だのに、エミリやフィーネ、それから四天王達も


「だー!てめぇ。そんなとこに突っ立ってんじゃねぇよ!頭が邪魔して」

「頭…、こうか?」

「今、やってもおせぇんだよ」

「このロリコン犯罪者は無視していいわよ。でも、ビックリした。レイはいつも、こんな感じにみえてたってことね」

 

 この場にいる全員が見えたらしい。


 ゲームやアニメの過去回想に、そ過去ムービーの全員が見たという描写がある。

 語り手は「思い出したくもないくだらない過去だ」なんて締めくくるし、聞き手も「そんなことがあったのか」「それが今に繋がるってことね」なんて反応する。

 語り手は、どれほど語り上手なんだよ!ってのは仕方のないことなのだけれど。


 今回は神・設定資料集のお陰で簡単に説明がつく。


「感情、精神、記憶、魂、そして経験。それらを構成しているのは闇女神の素子。そしてバトル場に展開しているのは、闇の波動(ダークネスヴェール)。この場のネットワークが全員に追体験のような現象を齎した」


 勿論、ユーノが超越者なのも忘れてはならない。

 戦いの途中で、幼少期を思い出したのだって同じ。

 神のような何かになろうとした人間が作った薬だ。

 神にとってはその薬効の分解くらいお手の物。


 だからその辺はすっとばして、


「って、クソ親父。何かある度に体罰してたんじゃなくて、俺を近づかせない為に、クソ厳しかったのか」

「アンタがアタシばかりに固執してたのって、そういうことだったのね」


 DLC転生直後まで遡る。

 確かに彼の奥底にある魂はアルフレドや他ヒロインの存在に慣れていた。

 だからって、初出場のユーノに対して、体が震えるほどの、身動き取れなくなるだけの反応をしてしまうだろうか。

 ミッドバレイでの血圧上昇もそう。


「あぁ。両親から徹底的にボコられたからだ。マジでどうかしてる」

「それはボクも同感だね。アーモンド・デズモアは、クソ過ぎる父親だね」


 そう、これもまた設定資料の話、DLC前の世界線に魔物が蔓延ったのは、結局のところルキフェの父、そしてレイモンドの父のやらかしのせいだ。

 彼がもっと息子、ルキフェを支えていれば、本心を知っていれば

 レイモンドに関しては、もっと優しく接していれば。

 勿論、レイモンドに関しては自責の念も手伝っていたのだろうけれど


「アーモンドさんのことは知らないけど…。アンタ、両親の仇で旅立ったのよね」

「マジで道案内なんだって。スパルタの九割はアルフレドに魔王を倒させる手伝いだからな」


 記憶するコツとして、他の事柄と紐付けて覚えるというのがある。

 今回はその反対、思い出した切り口から、本来紐づけられる筈の記憶が蘇る。


「…そういうことね。今だから言うけど、アンタがユーノを助けるぞって言わなかった、ちょっと違和感があったの」

「チョウロ様の薬と、両親からの家庭内暴力…。洗脳とトラウマ。今考えるとえげつない。っていうか、チョウロ様って妙なルビが」

「ルビ?」

「あ…。いや、なんでもない。っていうか」


 なんでチョウロがハラダなんだよ。

 先代のスズキの顔写真といい、ふざけまくってんだろ。


 言いたいことはいくらでもある。

 だけど、今のは世界の意志——


「あぁ、そうだよ。俺は始まった時からナーフされてたんだよっ」


 ミッドバレイでの出来事と、フィーネの回想によると、レイはユーノを含めて三人の面倒をよく看ていた。

 そんな彼が冒険で一歩引いていたのは、過去に刻まれたパブロフの犬のような条件反射だった。


     ◇


 ——さて、こんな茶番はこの辺にしよう。


 アルフレドは剣を突き立てて、叫んだ。

 温厚な顔に影がさし、青空を宝石にしたような碧眼の殆どが隠れる。


「やっぱり…だ。やっぱりレイが全部悪いんだ‼」

「な…。俺が?いや、DLCで悪いのは魔王とユーリだろっ‼」


 アルフレドにもさっきのムービーは見えていた。

 自分が五歳で、フィーネの家のお手伝いをしていた時、時間にしても夕食の準備をしていた頃の話だ。

 我が子のように扱ってくれるパピルスとマーマレイドに感謝しつつ、兄妹のように接してくれるフィーネと仲良く手伝いをしていた。

 でも、事件はその裏で起きていた。

 彼にはそう見えた。

 

「お前こそ何を言ってるんだ。レイが、お前がユーノに触らなかったら、ユーノはヨコシマガミなんかに、邪神になんてならなかったんだ‼」


 勇者はそう言って、切っ先を魔人に向けた。

 その魔人は戸惑った。


「アル、お前何を言っているんだ…?こんなの決められたこと。ユーノは邪神の受け皿、そういう設定だったんだよ。ちゃんとウェブサイトにも」

「なにとぼけてんだよ。ユーノも言ってたんだ。自分は何故か邪神になってしまったって。彼女は本当は光神になる筈だったんだ。勇者と光女神はセットだ。だから、ユーノは僕の為の女神様になる予定だったんだ。だけどお前のせいで。お前は穢れた存在で、穢れたお前がっ…」

「アル‼言い過ぎだよ。今は魔物になっちゃったけど、あの時のレイは」


 幼馴染のフィーネが慌てて、魔人の方を庇った。

 レイにとっても「そんな事言われても」な訴求だった。


『アルフレドの幼馴染が元々光の女神の化身で、邪神と戦って絶対世界を作る』


 ただの幼馴染と思っていたのに、彼女には凄い力があった。

 ベタだけど、悪くないがそうじゃない。

 ユーノルートの売りは、ハッピーバッドエンドで、ヒロインが今のままでは助からないことだ。

 DLC前だってヒロインが勇者を助ける為に力を発揮するんだから、攫われる展開はないが大して変わらない。 


「レイは穢れてる。光のメビウス様へのご祈祷もサボり続けてた。それにお前は今、悪魔だ。今こうして僕たちと対峙してる。それが何よりの証拠じゃないか」


 とは言え、そんなゲームの都合はアルフレドに関係ない話だ。

 

「確かにあれは悪魔です。現状は倒さねばならない敵です。我らが主、光女神メビウス様に仇為す存在です」

「不思議な薬で記憶を失ったってのも怪しいわね。適当なこと言って、本当は全部知ってたんじゃない?」

「そういえば、エクナベルの魔法遺物を扱えましたし。元々、穢れていたとか在り得るかも」

「っだから‼設定だって」


 レイは内容では言い返せない。メタで逃げるしかない。

 だって、神・設定資料集を読んでしまったから。

 何故、銀色の髪で生まれたのかを知っている。

 王家の血統と知っているから、あのムービーの少年も喜ぶに違いない。


「まぁね。母さんを捨てた碌でもない男だよ。あれの子供なら穢れていてもおかしくないよねぇ」

「アタシらロータスの民を縛っていた、傀儡ヘルガヌスの後ろ盾、デズモア公…。その息子だもんね」

「あれだろ?俺にデスモンドに行かせたのだって、アズモデは知ってたからだろ?」

「うーん。可能性があったから…としか言えないね。僕はあの時逃げ出した男を殺せたらそれで良かったんだけど」

「なんだよ、それ。ま、でも正解だったわけだな。研究に深くかかわっていたデズモア公の息子だからこそ、記憶を失ってないんだしな」


 以前にも話したが、四天王たちはある程度を知っている。

 そんな彼らからしても、穢れさせたのはレイとしか見えないムービーだった。


「待ってよ‼アーモンド様もココア様もとっても良い人だったのよ」

「フィーネは頭がいいのに、どうしてそんなこと言うの?あ、そか。村の大人たちが全員で、村長の息子レイの咎を揉み消したんだ。その中にパピルスさんもマーマレイドさんも含まれるのか」

「そんなことないない‼お父さんとお母さんはレイには気をつけろって言ってたし…」

「アル様もフィーネも落ち着いて。ちょっと触れただけだし。お清めみたいなのもしてたみたいだよ?」

「さっきの世界の意志だと、まだ間に合うって感じの儀式だったよね。記憶を失わせる薬を使ったのだって、これ以上は穢さないようにしてたから…と、思うよ?」


 女神様が穢れさてしまったと考えていたなら処刑、村長の息子という情状酌量でも追放処分という刑罰が下ってもおかしくない。

 彼らは、「まだ間に合う」と考えた。


「あ、そか。キラリの言うことももっともだ。ゴメン、フィーネ。パピルスさんたちは全然悪くないよ。殺された村長夫妻とチョウロ様しか知らなかったんだ。…だから、殺されたんだから」

「アル…。どうしちゃったの?」


 勇者はフィーネが心配になるほど、感情を昂らせていた。

 それはエミリやキラリの話も、フィーネの話も都合が良かったからだ。


「どうもこうもないよ。スタト村が悪かったのか、悪くなかったなんてどうでもいいんだ」

「どうでもって」

「だって悪いのはレイって分かったんだ」

「それは…」

「それが重要なんだよ。だってユーノは」


 レイによる自分の過去語りは、容疑者が自分の罪を白状したとしか映らない。

 だから彼女はあぁ言ったけれど、そうじゃないと考える。

 

「ユーノ。分かったでしょ。ユーノは自分を責めてたけど、ユーノは全然悪くなかったんだ」


 勇者は振り返り、銀髪の少女の前で跪いた。

 嬉々とした表情を隠して。


 勇者が何を言おうとも、容疑者がどんな言い訳をしても、ピロー枢機卿団だが考察をしても、悪魔たちが肩を竦めようとも、有象無象の推理でしかない。


「ユーノは自分を責めなくていいんだよ」


 そして、——彼女は言った。


 女神様は仰られた。


 闇女神メビウスは優しい顔で呟いた。


 闇の波動の影響か囁く声なのに、全員が聞いた。


「村の皆を責めては駄目。スタトの人達は悪くない。アーモンドさんもココア(・・・)さんも、チョウロ様も悪くない。…わたしはただ、レイに穢されて邪神になっただけ」


 彼女の発言は特別だ。


 勇者が崇拝するだけでなく、彼女は魔物たちの女神でもある。


 ——どうやら、このDLCでも『レイ』は最低の悪役だったらしい。

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