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悪役転生。転生したら裏切り役キャラになっていたDLC  作者: 綿木絹


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53/71

ナーフされた悪役は返り咲く

 魔人レイのラストは、「ちょっと待った」と駆けつけるバトル。

 DLCレイモンドはナーフが酷すぎて、勝手にソレは無くなったと思い込んでいた。

 加えて、勇者がレイモンドを置いてきた説も存在していた。

 真偽はさて置き、今回は間違いなく人間レイは死んだ筈だ。


「アンタってそんなに強かったっけ」

「やっと気付いたか。そのヒョロガリなど捨てて」

「って、アンタじゃないわよ。っていうか、誰よ?」


 新島礼は真に人間の頃、レイモンドを置いてクリアしたからか、

 このイベントも初見だった。正確には一部初見だった。

 前のドラステムービーが入っていたが、セリフは一部変わっていたし、拝見なんて大きく様変わりしていた。

 レイの頭には大きな角が生えた。それどころか見た目も大幅なバージョンアップが付け加えられていた。


「もう忘れてんのかよ。追い出されたシルバーリザドンβ(ゼノス)だ。ん…?シルバーリザドンβ(ゼノス)って言ってんだけど。はぁ?」

「どうやらボクたちは彼の部下扱いらしいね。ボクの名前は、金道化師ゴールドピエロアズモデって、とこかな」

「嘘…でしょ。アタシも紫美魔女(アメジストウィッチ)エルザ…。変換されてるし」

「我もやってみるか。我が名は武神ドラグノフ…。成程、確かに」

「確かにじゃねぇよ‼まんまじゃねぇか。アズモデもエルザも変換されてんのは厨二・二つ名で、名前自体はちゃんと言えてんだよ‼」


 しかも対魔人レイモンド戦はレイモンド対多数という、鬱陶しいレイモンドの処刑枠なのに対し


「ねぇ…、レイ…なんだよね。アタシたち、こんなことしてる暇ないんだよ」

「後ろからってことは外から来たんだよ。運転手さんなら空がおかしいって気付いたよね」

「あぁ。空がってか、世界がヤバそうだなぁ」

「だったら、そんなガキ大将してないで大人しく下がりなさい。子供の頃じゃあるまいし」


 なんと大魔人レイは四体の魔物を引きつれて登場する豪華仕様だ。


「成程、大将か。ボクたちはレイの部下。ボクの弟も大出世だねぇ」

「アタシにとってのワットバーン。それで名前がおかしくなってるのね」

「我は家臣を持ったことがないが、そんな我が家臣か。敗戦の将故に何も言えぬな」

「てめぇは一言も変わってねぇだろ。ってか、その理屈ならレイ、お前のせいじゃねぇかっ‼俺の名前はシルバーリザドンβ(ゼノス)…って‼マジで言いにくいだろ」


 左右対処に、しかも前衛役と後衛役。

 大魔神レイのポジションはリベロと言ったところだ。

 レイが指示したわけではなく、ムービー終了後に四天王がそこに居た。


「いや。だって俺も知らないし。こういうのはムービーで説明してくれないと」

「いいかげんにしろっ‼そうやって時間を稼いでも無駄だ‼」


 そう叫んで、アルフレドは剣を構え直した。

 この状況で彼が一人立ち向かうのは、当然のこと。

 大魔人レイたちは緊張感に欠ける。

 

「皆、行くわよ」

「そうだね。どう見たって、アイツは悪者だし!」

「ちょっと待てって。俺は大魔人レイであってるよな。俺は——」


 知らないムービーを回収に来ました。

 なんてのは、勇者たちに伝わる筈もなく


「もう、僕たちの邪魔をするな。——勇者超大雷神斬(ブレイバーバーニング)‼」


 勇者が単体で放つ最大の攻撃。

 それに対して、レイはただ逃げる。

 知らないムービーと知らないパーティ戦、


「てめぇ!逃げんな!こうなったら戦うしかねぇんだよ!」


 あと、忘れてはいけない。

 あぁ、レイは忘れているかもしれないけれど、ムービーにはある特性があった筈だ。


「分かってるよ。俺たち、いや俺は」

「アル様待って!あたしも戦う!!殺されたお父さんとお母さんの為にも、平和な世界を勝ち取らなくちゃ三人、あれ?」


 魔人レイは人間を辞めた。

 記憶を保ったままの彼は、裏で何をコソコソとやっていたか。

 魔人レイとはそもそも、遺伝的に誰だったか。


「ユーリ様の期待に応えなくちゃぁなぁ!──茨の呪鞭(ヴァンパイアウィップ)

「範囲攻撃!そんなスキルまで!このまま…。いや…」


 勇者は突然床を蹴って、大きく後方に飛びずさった。

 大魔人はその名の通り巨大で、クルリとマントを翻すとザラザラと前方範囲を抉り取る。


「よくぞ見抜いたな、…偽勇者」

「選ばれなかったのはレイの方だよ。武器を絡めとろうなんて、卑怯者のすることだ」

「アル…、レイ…?」

「フィーネ、どうしたの。ぼーっとしてちゃ危ないでしょ」

「でも、アル様も凄い。アル様ってただ真っ直ぐに戦うわけじゃないんだ…」

「うーん。強いとは思うけど、アレって即興で出来るかな」

 

 ——魔族のことは大体分かったし、そろそろ問い詰めるべきだな。

 ——ユーリ王子の行動を調べてたが…

 ——アイツは人間の癖に何を考えてやがる 


 新島礼は記憶を失ったが、自分の口から出た言葉くらいは覚えている。

 自分をドラゴニア王の末裔だと信じていたレイ。

 だが残念ながら、レイはデスモンドで魔王軍の歯牙にかかる。

 魔物として蘇ったレイは、魔王軍の中で『ユーリ王子』という言葉を知った。

 彼がユーリを調べていたのは、ユーリが王子だからだ。


「あ?言われたくなかったのか?そうだなぁ、てめぇの可愛い可愛い花嫁たちはてめぇが正統な勇者と信じて。あぁ、違うな。勇者だからモテてんだもんなぁ、昔っから」


 感情を押さえようにも、クソでか感情が次々に湧いてくる。


 そうだった。俺はアルフレドに嫉妬してたんだ。…いやいや、これは知ってたけど。

 でも、人間だから当たり前か。レイモンドの行動力をナーフされたからって、レイモンドという人間が変わる訳じゃない。


「どうやら俺は車にさえ欲情する男だし…、これでも喰らえ‼」

「魔法二段掛け‼隕石の速度を上げたんだな。でも、その程度。勇者の僕のスキル・光女神の盾(メビウスシールド)で‼」


 大魔人レイは、試されるの大地ジャジメントグラビティ隕石落下(メテオストライク)を複合して、勇者を推し潰そうとした。

 だが、アルフレドは見事に落下する隕石を弾き返した。


「盾スキルか。昔っから盾だけはうまいよなぁ。でも、ネーミング間違ってんぞ。光女神のメビウスシールドはねぇわ。その眩しくもないオーラで光女神は…、あ、そうか」


 秘密の塔の時は魔人レイ。

 彼はユーリ王子の動きが気になって、とある場所に赴いた。

 相手が王子で神出鬼没なら、王を問い詰めるしかない。

 そして魔王ヘルガヌスに問い質すも返り討ちにあってしまった。


 あと一歩で殺されるまで嬲られたが、彼は魔人は死ななかった。

 死ななかったと言うより、ユーリ王子が現れたことで、魔王ヘルガヌスは魔人レイを許した。


 その時だ。

 空から金の粉雪が舞い降りたのは


 魔王さえも目を剥く、この世にはない美しさ。


 光り輝く黄金のユーリの姿は、天井のステンドグラスに描かれたまま。

 そして確信した。

 世の中の全てが間違っていた、と。

 自分は間違っていた伝承のせいで、こんな姿になってしまった、と


 そんな魔人にユーリは、女神は優しく微笑みかけて、こう仰られた。


 ——君はこの世界を愛しているのか、と


「てめぇは光女神メビウスさまの光臨を見てねぇもんなぁぁあああ……ぁぁぁぁ、あれ、それって」

「勇者様は伝承に伝えられる勇者です。貴方の方こそ、見たまま悪魔じゃないですかっ、——神聖大旋風斬ホーリースリリングアクト‼」」


 神聖だろう風と清められているのだろうガラス片の嵐


 その中で体のあちこちを切られ、抉られた。

 痛みはある。だけど、体よりも心の方が張り裂けそうだった。

 強制的に蘇るムービー中の記憶は、自分自身の行動と一致していた。

 考えていることは違うけれど、外面上は同じ。


 いや、今の自分を照らし合わせると分かる。


 あの時、魔人レイがやろうとしたことを、魔人レイの中の人は自分の意志だと勝手に考えて、行動に移していた。


「もう…、止められない…?」

「動きが止まってる‼フィーネ‼」

「分かってる。…超大火炎魔法(ウルトラパイロ)‼」

「レイ。流石に不味いよ、|魔法障壁(火・水・土・風・金)《オールマジックバリア》」


 勇者たちの攻撃は止まらない。

 大魔人レイの部下が慌てて、防御魔法で彼を守る。

 それを見て反応よく、勇者は剣を構えて飛び込んだ。


「これ以上、僕を困らせないでくれ」


 前衛を突っ切る刺突技は、今までに何度も勇者が見せたモノ。


 即ち、


雷神撃突破(ソールブレイド)‼」


 雷撃と共に聖なる大剣が大魔人を襲う。

 動きが止まっていたレイは辛くも身を捩るが、


「ぐ…。これは不味い…。そりゃそうか。ここで俺の役目は終わり…」

「そうだよ。もう、レイは関係ないんだ…」


 死を、破滅を連想させる痛みが走る。

 今まで生きていたのは、こんな大役を背負っていたからだ。

 ここで勇者に殺されるという大役を背負っている。


 殺されると分かる。

 ただ、雷撃は寧ろ有り難かったかもしれない。

 角のてっぺんまで、電流が流れて角と角の間でバチンと火花が散った。

 それはまるで電球のよう。


「秘密の塔ぶりだな」

「あぁ。あの時は僕にも迷いがあった。でも、もう迷わない」

「そうじゃねぇよ!」


 至近距離の勇者を払いのける。

 巧みに受け身を取るアルフレドにダメージは入らない。


 でも、希望の光は頭上に輝いたまま。


「秘密の塔はユーノルートじゃない。まだ、もう一つの道は残ってる。アル、聞いてくれ。俺たちは」


 あんな苦労をして、勇者を秘密の塔に導いた。

 そのイベントの魔人レイと繋がっているなら、ハーレムルートと言える。


 だから、もう一度


 ゲーム内の男レイではなく、ニイジマレイとして語り掛け…


          ▲


 仲間たちが背中を押す。

 勇者アルフレドは猛攻を仕掛けていた。

 だが、大魔人レイは易々と弾き返した。

 しかもその部下たちも只者ではなかった。


 だから悪魔は嗤う。


レイ「おぉっと残念。俺様はちょーっと強くなり過ぎたみてぇだなぁ」


(あれ…。違う。そんなことを言おうとは)


???「何を言ってんだい。今のはボクのがなかったらヤバかったろう?」


???「っていうか、アタシらの紹介がまだだし…ねぇ。アイザ」


 後は魔王を倒すだけの筈だった。

 だけど、卑劣な魔王はまだ切り札を隠し持っていた。


レイ「俺一人で十分だったのに、余計な事を」


キラリ「ほらっ‼やっぱり僕の嫌な予感はアレだったんだ」


マリア「言葉にしなきゃ分からないでしょ。っていうかアイツ、マリアの街の変質者‼そういえば忘れてた‼」


アズモデ「忘れてたって酷いねぇ。でも、あの時よりももっと強いよ。今のボクの名前は金道化師ゴールドピエロアズモデ。あぁ、ボクとは戦ったことなかったもんねぇ。勝手に強くなってごめんね」


(まだムービーがあったのかよ‼戦闘中にムービーを差し込むな‼…ま、あるっちゃあるんだけど…)


フィーネ「姿を見せずに裏で何をやってるのかと思ったら、そういうこと…」


アイザ「おねえたま‼生きてたのら‼」


エルザ「あら、アイザじゃない。まだそんな偽勇者に従ってるの?偽物なんだから捨てなさい。それから、アタシは紫美魔女(アメジストウィッチ)のエルザ。あの時とは違うわよ」


(エルザと戦っている…。アイザとセットのカットだから、何とも言えないな。っていうか…まさか…)


エミリ「あいつ…、生きてたの」


アルフレド「あの化け物が…。ううん、一度は勝ってるんだ」


ドラグノフ「確かに。我が名は武神ドラグノフ…だった者。いや拙者は敗戦の将。王の命により、地獄より戻って参った。不本意ながら、汚名返上をさせて頂く」


 ドラグノフが再び現れて、勇者たちは戦慄する。

 魔王軍はまだ力をこれほどに持っている。


ゼノス「っと、待て待て。ここにもう一つの脅威が存在するぜぇ」


 サラ曰く、魔王軍最強と呼ばれる男だ。

 もう一度倒さなければ、再び世界を脅かす。

 アイザは姉の敵対に顔を蒼褪め、フィーネはアズモデの登場に眉を顰める。


 そして勇者はやはりかつての幼馴染を睨みつける。


 全員が名乗ったところで、魔人は


ゼノス「だから、俺‼この名をちゃんと覚えておけ。ゼノスゼノスゼノス…」


エルザ「アンタ、絶対に忘れられてるわね」


 大魔人は肩を竦めた。


レイ「ここに勇者被害者の会だな。貴様らがその偽勇者を崇め奉った結果、魔王軍に出戻りした男だ」


 そしてざわめく。


「え?どこだっけ」「あれじゃない。デスモンドでいなくなった」「それは運転手さんでしょ」「わたくしは見たこともありませんわ」「私もです」「私も」「あたしもー」「じゃ、マリアもしーらない」


 恐るべき魔王軍の魔界技術に皆が目を背けたくなる。

 だが、勇者は光を宿す瞳で真っ直ぐ睨み返した。


レイ「即ち、四天王との再戦。即ち、ボスラッシュだ。なぁ、アルフレド。お前には少し豪華すぎたかも…しれねぇなぁ」


          ▲


 竜人は膝から崩れ落ちた。

 女悪魔は目を剥いた。

 武神は瞑目し、金色道化師は目を一人の男に投げかけた。


「君の傷が治っているし。今のは世界の意志(ムービー)のようだね。でも、これは流石に都合良すぎないかい?」

「都合良すぎか。そんなのゲームじゃなくてもド定番過ぎて、——今更すぎる話だ。ゼノスも立ち上がれ。世界はお前にオチ担当という大事な責務を与えた」


 これもある意味で都合が良すぎる。

 だが、新島礼はレイを仲間にしなかっただけでなく、ゼノスも仲間にしなかった。

 

 今更確かめようがないゲームだが、大魔人レイと復活四天王たちは戦う。

 勇者もヒロインたちも戦う。


 世界の意志に記憶を押し込められた、本気の戦闘が仕切り直された。

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