最終バトル前はムービー多めになりがち
少し戻る。
スタトでは、勇者たちの話し合いが行われた。
争点は勿論、このまま逃げては駄目なのか、だ。
無言という約束だが、ユーノが見ている中でのソレは皆が緊張する、熱くなれないモノだった。
「私たちはソレで構わない」
「僕もそう思う」
八人と一人のディベートにもならない繰り返しのやり取り。
理由は聞くまでもなく、ユーノの体がここまで邪神化していると知らなかったからだ。
時間切れイベントだと知らなかったし、何よりいつの間にかエクレアに居たことに度肝を抜かされた。
天変地異の始まりに、脳内はパニックに陥った。
「世界が終わっちゃう…」
「ユーノは間に合わないって言ってなかった?」
急ぎ魔王城に向かう自分達にも勿論驚いたし、彼女達にとってある意味で初耳の情報がユーノの口から語られていた。
「あっちが光の女神だった。魔王城に閉じ込められてるって」
「魔王を倒さなきゃ、世界から光が奪われてしまうのですか…」
「アル様…」
「…うん。分かってるよ」
のんびりとじっくりと考える時代は終わった。
しかも、デスキャッスルは今までよりもずっと魔物の巣窟だった。
魔王が計画通りに、モブ魔物を大量に投入していたのだ。
魔物を製造、および再生できるカギッコホネッコの修理がここに来て活きていた。
勿論、それが出来るから魔王の間での修理作業を許可したのだ。
ヒロインたちはせっかく生まれた、生まれ変わった魔物たちを簡単に仕留める。
だが、その尋常ならざる数には軽く舌を巻いていた。
「魔王も必死の様ですね。ですが、私は負けません。魔王から主を取り戻す為の戦いですから…」
「アルフレド。わたくしの兄ならば、王の子ならば理解してください。これはノブレス・オブリージュなのです」
「そんな難しい話にしなくてもいいのに」
「なんですの!」
相手は更にレベルアップした雑魚敵。
ドラグノフとまではいかないが、秘密の塔に出現した銀髪アークデーモンくらいは強い。
四天王との戦いと同レベルでも、それらはノーネーム。一応経験値をくれる敵だ。
そして、最後の時間もくれる有難い敵だった。
「分かってるんだ。魔王を倒さないといけない。そして、ユーリを助け出す。それから」
「それは無理。わたしがアルと共にあるように、ユーリは魔王と共にある」
「ね、アルフレド君。僕、思いついたんだけど。同盟を組んで二人を交換したらいいじゃない?」
「キラリ、それだよ!神様が間違って降りちゃったんだし」
「あっちからすると、なんで勇者に崇める女神様がって感じだもんね。交渉ならエクナベルのマリアに任せて」
「パパとママにお願いするだけのくせに。あ、アレだ!」
赤毛の少女が指を差したのは大部屋の一画。
溢れ出る魔物達と、あの時はなかった大きな機械が置かれていた。
「駄目だよ。魔物は放っておけない」
奇怪な機械が魔物を吐き出しているのは明白だった。
勇者がそう言ったのもあって、エミリは魔物の群れに突っ込む。
「そうだね。こんなのあったら絶対に無理っ!!こっのっ!!このこのこのっ!!」
前はドラグノフが居た場所で、ドラグノフの血を継ぐエミリは、大斧で魔物ごと機械を真っ二つに破壊した。
その時、機械は奇怪な悲鳴を上げる。
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
ファンファンファン…
グゥワングゥワングゥワン…グゥワン…ゥワン…ゥワン…ゥン…
——ガチャリ
百人が同じ場所にいたら、百人とも今ので扉の鍵が作動した。
と答えるだろう。
勿論、開いたのか閉じたのかまでは分からないから。
「あぁあ。どこかのイノシシさんのお陰で、器物破損で交渉が不利になっちゃった」
「だってアル様がぁ…」
「だからっていきなり壊すのはどうかと思います。僕なら罠を仕掛けます。僕が魔王じゃなくて、エミリさんはラッキーでしたね。あ、まだ何か点滅してます…」
「ひぃ‼」
赤毛がブワッと跳ねる。
エミリは何回転したかも分からない宙返りで、キラリの背後に回り込んだ。
「ちょっと怖い事言わないでよ」
「どうして僕を盾に…。機械というのは絡繰り仕掛けですよ。ま、さっきの音を聞く限り、扉の鍵と連動していただけのようですが」
「はぁ…。なぁんだ。扉の鍵かぁ」
「鍵ですの?今ので警戒されて封印されたら、どうしようもありませんわ」
「だとしたらエミリ爆発なんかより、余程質が悪いじゃない。光のメビウスを渡さないつもりかも」
じわじわと汗が湧く。
全員が同じ心理の汗かはさておき、
当然だが、これは魔人レイの計画だった。
「これ。キラリと同じなのら?」
「違うよ」
「キラリの職業は理系機械女子でしょ」
「伝説の自動車整備士です」
スタト村でひとしきり暴れた後の、四天王の全回復をする必要があった。
イツマゾクで飛べるが、何処に飛ぶかを精査するべきだった。
MPも消費しているから、魔法の薬も必要だったのだ。
一度、研究施設に戻って完全に回復をして、魔王城の無難な場所に飛ぶ。
彼が飛び出したら終わりだから、魔王ヘルガヌスへの挨拶も忘れてはならない。
その後から、じっくりと作戦を練る。勇者たちの動きを窺う必要もあった。
だとしても
「カギ!ホネ!緊急事態‼ロックがボーンと開錠されたまま‼DSW-003、至急接続されたし‼システムの復旧をそちら側で行ってくださイ‼カギッコホネッコパーフェクトロックをそちらで行ってくだサイ‼」
勇者たちの行動が余りにも遅すぎた。
ヒロインたちがバッと顔を上げる。
「機械が喋った‼」
「僕のお爺ちゃんも喋ってたよ。僕が改造してDSW-002がDSW-003に変わったことも知ってる。ネットワークが更新されたのかも」
「システム復旧って不味いんじゃない?」
「アル…。わたし行く!」
9人全員が勇者アルフレドの背中を押す。
同い年だが、見た目は幼女のアイザだって
「勇者たま!勇者は前に‼前に進むのら‼」
勇者に勇気を促した。
光の女神を取り戻す戦い、随分分かりやすくなったものだ。
アルフレドはくんと頷いて、扉に手をかけた。
「魔王と交渉はしない。僕たちは世界を取り戻すんだ」
▲
勇者アルフレドは仲間と共に、魔王ヘルガヌスを倒す為にデスキャッスルを進んだ。
エントランスホールで、一瞬身震いを感じて辺りを見回す。
ここに待ち構えたのは四天王の一人、武神ドラグノフだった。
アルフレド「魔王軍に…、あんな化け物がいたとは…ね」
サラ「申しました通り、ドラグノフは最強の四天王。五百年腐敗の男に勝てた方が奇跡です」
マリア「それ、先に言ってよ。ユーノが来てくれなかったら、アタシたち全滅だったよ。今更だけどありがと、ユーノ」
ユーノ「…うん」
フィーネ「本当に有難う。…ございますはつけない方がいいよね」
銀色に染まったユーノをフィーネは複雑は顔で横目で見る。
シルエットはそのままなのに、幼い頃から知っているのに、
確かに不思議な雰囲気の女の子だったけれど、神の器。しかも彼女は邪神。
エミリ「うーん。あたしもお礼を。もうひと踏ん張りだもんね…」
アイザ「後は、魔王を倒すだけ。ユーノたまと光の女神たまの感動の再会なのら」
キラリ「感動の…再会…。うーん」
ソフィア「キラリ様、どうかなさいました?半魔の件はユーノ様の計らいにより、私たち全員の問題となりました。そして」
リディア「問題ありませんわ。わたくしたちが世界を導くのです。ノブレス・オブリージュですわ。それにしては王城が酷い有様ですけど」
重々しい扉だった。
当初は固く閉ざされており、悪魔司祭カギッコホネッコを倒すことで開錠が行われた。
本当に行われたのかと疑うくらい重く、耳を劈くほどの金属の叫び声がエントランスホールに響き渡る。
ユーノ「アル。手伝おうか?」
アルフレド「大丈…夫…。これくらい僕一人で」
上級の魔物はイツマゾクという瞬間移動魔法を使う。
故に扉は無用の長物、手入れなんてされていない。
エミリ「勇者様。あたしも手伝います‼」
勇者は目を剥いた。そして少女はニヤリ。
ドラグノフの血を舐めてはいけない。
バキバキと音を立てて、サビた金属が弾け飛ぶ。
一部が崩れ落ちて、何かの欠片も何かの埃も、天文学的な数の虫とともに舞い上がる。
アルフレド「この先に…」
世界中を巡った勇者だ。
顔を背けたくなるが、先も見据える。
そして彼は、彼女達は目を剥いた。
フィーネ「今の…何…?」
埃とか、虫とか、何もない。
空気さえないと錯覚する。それほど透明な世界。
いや。ちゃんとあるのだ。向こう側には巨大な通路だって見える。
いくつもの十字路があり、そこに何かが待ち構えているかもしれない。
だが、夜空の星の如く散りばめられた小さな黄金たちが、そうではないと言っている。
ソフィア「ここに主が…降臨なされた…」
ここには直接脳内に、利用規約を押し込められる感覚がある。
尚、難しい話ではない。一つの規約を守るだけ。
——穢れている者は、ここを通ってはいけない。
リディア「当然でしょうね。偽ドラゴニア王子に光女神様が降臨された。間違えて魔王を祝福してしまったのです。これは由々しき事態ですわね」
サラ「あの伯父に子がいたか。私は聞いたことがありません…」
フィーネ「行くわよ」
背く者は左右の十字路を曲がると良い。
でも勇者たちは、真っすぐに歩く。
ただ、それぞれ歩みの速さは違っていた。
エミリ「えー⁈も、も、もしかしてキラリって」
マリア「嘘…。でも、半魔だし」
キラリ「半魔差別は止めてください。それにそっちの穢れじゃないし。ただ…」
ソフィア「大丈夫です。私たちは皆さん」
キラリ「だから、そうじゃなくて…。僕たち、何か忘れてない?」
ソフィア「何かと仰られましても」
エミリ「色んなことがありすぎたからねぇ」
マリア「ま、いいんじゃない。もうすぐ終わるんだし」
後方での会話は前の者たちも聞いていて、それはそうだ等、各々頷いて
新郎一人、新婦九人の行列が、キラキラと輝くユニコーンロードを歩いていく。
◇
そういうことだ。
俺が真の意味の超越者、メタな存在なら呆れている。
DLC前のドラステしか知らない俺なら、自分を嫌いになる。
DLCをプレイした俺は、DLC後の変更点を満喫した。
だからって、このイベントをド忘れするか?この俺がド忘れするか?
…マジで在り得ない。
俺はドラステを愛していない…のか?
◇
リディア「埃一つありませんわね。なんというか懐かしい。…でも、あの時とは雰囲気が全然違います」
アルフレド「リディア。この先にいるのは、僕と君の父親じゃないよ」
リディア「それくらい知ってます。お父様は…」
ここで全てのケリがつく。
スタトでユーノを攫い、エミリの両親を殺し、ソフィアの村を焼き、チョリソーを焼き、エクレアの人々を襲った元凶。
そして遂に、魔王の怪腕は光女神メビウスにまで届いてしまった。
魔王ヘルガヌスがいる限り、世界に光が射すことはない。
ユーノ「アル。ここまででいい。後はわたしが…」
アルフレド「…駄目だよ。僕は」
アルフレドは闇女神の化身となったユーノの腕を強引に取り、
花嫁候補八名より先に、ユニコーンロードを走りだす。
その時だった。
???「ちょぉぉぉぉぉっと待ったぁぁああああああ‼」
背後から途轍もない魔力を伴う轟音。
先の粉塵、埃、虫の死骸が空間を越えて飛び散る。
それよりもユニコーンロードを穢す大きな悪声だ。
——とは言え、
勇者はその男の行動を知り尽くしていた。
アルフレドはユーノを背中側に回し、絨毯をギュッと捩じるように踏む。
その弾力さえも聖なる彼を助け、背後に迫る魔物を、歪で巨大な怪爪を、神属性の大剣で、しっかと斬りつけた。
そしてバキッとユニコーンロードの上で弾ける。
晴天の空のような青い瞳と、曇天の雷雲のような鈍色の瞳がぶつかる。
アルフレド「レイ、絶対に来ると思ってたよ」
???「ちぃぃ。気に入らねぇなぁ、アルフレドぉ」
アルフレド「レイ。…もう終わりなんだ。僕は、…お前を絶対に滅ぼす」
青い空に太陽が昇っているように、勇者の瞳にも炎が萌す
怪爪を持つ大悪魔の鈍色の瞳はそのままで、
ただ不愉快そうに折れた爪を自らの胸に突き刺した。
???「だからよぉ。俺は人間を、レイを辞めたっつたろぉぉ。俺様はなぁ」
アルフレド「何を言ってるんだよ。だってお前は」
それはギラギラとしたジャケットとスラックス。
刺々しい巨大な肩パットと紙やすりのようにザラザラしたマント。
ならびに、禍々しい長い爪、青く輝く大きな犬歯。
あと同じ色に輝く、雄牛のような巨大な角。
悪魔の名は——
大魔人レイ「大魔神レイ様だぁぁぁあああああああああああああ‼」
▲
「って‼いきなり誤字ってんじゃん‼でっかい角生えとるしっ‼」




