表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役転生。転生したら裏切り役キャラになっていたDLC  作者: 綿木絹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/71

バグのありそうなところ

 神・設定資料集での答えが出ている。


「黄龍黒龍の伝説?竜人族にそれを聞くか。ふむ、良い判断だ」

「ロータスの伝承ね。黄色く光る龍と黒く光る龍が人間を作ったっていう」

「ぬぅ‼なぜ、直ぐにばらす…」

「減るのもじゃないし別にいいでしょ。隠す方が無理あるわよ」


 アーマグ大陸とエステリア大陸の人間に


「ドラゴニアに伝わる逸話?光の女神が人間をお作りになられたって話かしら?」

「メビウス様は黄金とプラチナを使って、世界を作られたでしょう?」

「えぇ、そうだっけ」

「光の女神は黄金を、闇女神メビウスはプラチナを。ソレが君たちの研究の土台になっていた筈だよ?」

「どうしてアズモデの方が詳しいのよ!」

「記憶を失ってからの勉強の差だよ。君たちは若さを楽しんで三日交代で遊んでたろう?」


 大きな違いはないと判明している。

 そして重要かって聞かれたら、正直どうでもいい。

 ファンタジーもサイエンスフィクションも、重箱の隅を見れば矛盾の塊。

 書き手と読み手、双方の合意の元に成り立つ超理論。

 だが、中の住民にとっては大きな問題であり、大いなる課題である。


「何が言いたいかっていうと、ゼノスは魔族じゃない」

「当然だ。俺は竜人族だからな」

「でも、魔族と認定されているだろ」

「そういえば、ロータスの民の長命さが研究対象にされていた…?」


 だったら人間も魔物も変わらない。でも、これは今更だ。

 この話を持ち出しているのは、魔王を説得する為。


「結局人間の範疇を出ないってことを考えてもらって、大事なのは過剰摂取の話。即ち、アルフレドとリディアの母親ディアの話とアズモデ。お前の母親フェルレ…」


 ドンッ‼

 その名を発した瞬間、レイの視界がズレた。

 アズモデの過剰反応、これも超理論が齎すバグの一つかもしれない。


「貴様…。どうしてそれを」

「アズモデ、いやルキフェ。フェルレはお前を愛していた。だからこそ、彼女の死を無駄にしちゃいけない」

「貴様に何が分かる…。母さんはボクのせいで」

「お前のせいじゃない。それは身をもって経験してる筈だ」


 魔族となり、それでも勉強を続けた彼だからこそ、手が震える。膝から崩れ落ちる。

 DLC前とは異なって、決定事項なんだから、元ルキフェだって辿り着いていた。


「レイ、それはデズモア公から聞いていたの?」


 いや、神・設定資料集に載ってた。

 プレイヤーだから知っていた。

 メタ存在だから——


 でもレイの眉は大きく跳ね上がった。


 さっきの話は隠していない。

 それで皆も納得する筈だが、良い考えだとか思ってしまった。


 言われてみれば、そんな気がしてきたし…

 あったような…気がする?


「そ、それだ‼クソ親父とお袋に子供の頃から叩き込まれた。アレは人間じゃないから。お前は絶対になるなよ、て。でも…、こうなっちまったわけだけど」

「そんな賢そうだったっけ」

「なんか怪しいわね。マロンが言ったからそう思っただけっぽいし」

幼児期健忘(ようじきけんぼう)ってやつじゃない?」


 物心がつく頃より前の記憶は、脳の未発達や言語化能力の不足で「作られた記憶」と感じやすい。

 後から聞いた話で再構成される、そういうのが幼児期健忘と言われる。

 新島礼で神・設定資料集を読んでるんだから、条件は当てはまる。


「デスモンドで見たお前は、何も印象に残らぬ、右も左も分からぬ、車に欲情する男だったぞ」


 とは言え、この竜人の言葉だけは断固反対のレイである。


「違うから‼それはムービーだから‼そもそも、この体は光粒子と闇粒子の結合で成り立つ器。器の上に励起状態の素粒子がカギッコホネッコの分析でどうにか積み上がっているのが今。作られた記憶かもしれないけど‼」

「…悔しいけど、その通りだね。ボクにとってもクソ親父には変わりない。後妻を娶るなんて、母さんへの裏切りだ」

「ルキフェたちの家庭環境は置いといて、確かに私たちもベースは若い頃の自分だものね」


 ここまでは神・設定資料集の通り。

 既に決定した事項である。そしてここからが考察。

 レイの無茶と言えば、例の想像と創造。

 それを思い出したわけではないが、漸く話が進む。


「器があるからどれだけ積み上げても、神のような何かにしかなれない。でも、天女の透水晶クリスタルオブフローレスは違う。特性Lvゼロ。ユーリとユーノにはその器がないんだ」

「器がない?それって体がないってことよ。そんなの」

「あ、もしかして測定不能だったのって…」

「不能になるに決まってるしぃ。器を0として計算するって事象の地平面を計算するようなものだよぉ」

「ボクたちには計算不能。でも、実在は確認されている。そんなことが出来るのは一人…、いや二人。人と呼ぶのも烏滸がましいけれど」


 カランと王笏が落ちる。

 巨大な椅子から落としたが、その程度で壊れる代物ではない。


「そうじゃ!そうなのじゃ!ユーリはこう言っておった。神になる為に力を貸して欲しい、と。なんじゃ、儂と同じことを。やはり儂の子、血は争えんの」


 これはこれで健忘っぽい。

 だけど、久しぶりにヘルガヌスは良い顔をしていた。


「アタシに軍を引かせたのはそういうことだったのね。勇者の芽を摘み取る計画だったのに、ユーノを見つけたから」

「いや。流石はユーリ。そこにおることを知っておったわい」


 そう言えば、伝え忘れていた。

 神・設定資料集ではなく、新島礼の体験。

 ゲームプレイはユーノルートで終わったことは話した通り。

 ユーノルートのラスボスがユーリというのもそのまま。

 伝え忘れていたのは場所だ。ヘルガヌスを倒した場所から行けると言ったが、入り口は存在しない。

 もうネタバレしても良いだろう。

 ユーリは神だ。ラスボスは神とかいう、よくある設定だ。


「凄い凄い。だからさ、ユーリを呼んでくれませんか、ヘルガヌス陛下。殿下ともう一度話させて下さい」


 バトルの背景は宇宙で、恐らく事象の地平面。

 同じ存在であるユーノがいなければ、主人公もプレイヤーも到達不可能。


「不敬者に会わせられるか」

「神になる前のあの時がラストチャンスだったんで、この通りです」


 魔王が言えば、もしかしたらと説得している。

 光の女神メビウス様にご降臨をお願いする。

 王笏を拾って、両手でお渡しする。


 一番、設定がガバガバなヤツを狙うが、ぷいと愛らしく顎髭が横に逸れる。


「コノヤロぉ」

「なんじゃと?」

「いえ、何も申しておりません」


 勇者たちはドラグノフを倒した。

 彼らが扉を開けたら魔王の間だ。

 そして魔王ヘルガヌスを倒せばムービー行き。

 勇者はユーノを追って、ユーノが作り出した事象の地平面を潜り抜ける。それもムービー内でだ。


「そもそも良いことではないか。我ら魔族にとっての神がご降臨なされたのじゃ」

「でも、ボクのイメージと違うんだよね。あの金色の髪って光の女神の方だったような。闇の邪神様はもっと…」

「アズモデまでどうした。この際、どっちでもええじゃろう」

「うわっ。サブいぼが立った。あのオッサン、マジで適当なのよ」

「同感。そういうとこ、鬱陶しかったわよね。でも…」


 魔人の顔がひくっと引き攣った。

 神・設定資料集に記載がある。

 彼女たちは人間の頃の記憶をこんなに持っていない。

 これはバグか。確かにバグりそうではあるが、このままでは


「私たちが崇拝するのが真の神なら、歓迎すべきではあるわよね。闇の邪神様わユーノ様も歓迎をしましょう」

「歓迎してどうすんだよ!不味い。悪い方にバグってる」

「君のせいだよ。ボクたちはこう見えて信仰心が厚いんだ」


 信仰が厚い、これも設定通りだ。

 DLC前のアズモデはその邪神を名乗っていたし

 ユーノの存在さえも受け入れる。魔王と戦わずしてムービー入りするまである。

 どうやらここに運命を好転させるバグはないらし………………………………………………………………


「信仰心かよ。確かにそうだな。ユーリとユーノが一つになって、もーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


 ……………ん?


 あれ、俺の「も」やけに長くない?


「もーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぼーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


 って、声汚くなっ‼

 これフリーズの中でもヤバいヤツだ。

 無理やり電源を切るのって、基盤にダメージが入るって言われてるし


 ——昨年末、五十倍での転売が確認されております。


 ひゃっくまんえーーーーーーーーーーん‼で売れなくなるじゃん‼


 …じゃなくて、世界がバグった?

 みんなも止まってる。あれ、やっぱゲーム世界?

 ん、なんか四角くモザイクがかかって。なんだっけ、これ。

 ブロックノイズってやつ…


 あれ。少しずつ直ってきた。

 進行不可バグの噂とかもあるんだぞ。マジで勘弁してくれ。

 あー、戻ってきた。俺も戻ってきた。

 アズモデの顔もくっきり…


 今の危なかったよな。

 ギリギリ、処理落ちを乗り切ったって感じ…


「君のせいだよ。ボクたちはこう見えて信仰心が厚いんだ」


 そしてこれも設定通り…

 DLC前のアズモデはその邪神を名乗っていたし

 ユーノの存在さえも受け入れる。魔王と戦わずしてムービー入りするまである。

 どうやらここに運命を好転させるバグはないらしい


「信仰心かよ。確かにそうだな。ユーリとユーノが」

「ね、ちょっと待ってよ」


 それは突然だった。

 魔王軍幹部、そして王が同時に息を止めた。

 本当にいつの間にか、だった。

 皆、そこを見ていた筈なのに誰も見ていない。

 いつの間にか金色の——


「…って、お前こそ待てよ。何がいつの間にか、だよ」

「おや。やっぱりバレた?でも、これは君のせい。その話はぼくがする予定」

「はぁ?別にいいだろ。皆、神様を崇めてるぅぅぅぅぅぅぅ…、って‼」


 神がそこに居た。

 設定通り、ゲームの中の神様、光の女神メビウスの化身ユーリだ。


 神故に時間さえも操れるのだろう。

 部分的にスローモーション、全体的にコマ送りで世界が描かれる。


「君には前科がある。…さっきのムービー、酷いもんだったよ。君が天女の透水晶って話してたせいで、世界が壊れるところだったんだよ」


 三白眼というより琥珀色のジト目。

 その度に時が止まる。止まるのは世界だけだから、魂がその度にズレる。


「わ、悪かった。分かったから普通の速度に戻してくれ」

「ふぅん…。なら、遠慮なく——」


 ユーリは神である。

 超越者で、メタである。

 プレイヤーも同じく超越者だが、プレイアブルエリアは限られる。


 矛盾が起きるとバグる…、それはそうかも

 だったら矛盾を発生させまくったらいいのか

 ユーリめ。墓穴を掘ったな


 なんて、プレイヤーが考えることは自由だ。


 だが、ニイジマは直後に耳を疑った。


「——父上、それから魔王軍の皆さま‼ぼく、ユーリは光の女神メビウスの器、化身と呼ばれる存在だったんです。闇のメビウスじゃなかったんです。…どうしたらいいか」


 魔王の間が、一人を除いてどよめいた。

 その一人だって、外側はどよめいているのかもしれない。


 そしてユーリは慈愛に満ちた笑顔で…、全てを打ち明けた。


「で、ぼくは考えたんです。ぼくとあの子、ユーリとユーノが一つになれば、器の中身を無に帰すことが出来るんじゃないかって。そしたら…、みんな。人間に戻れます。…残念なことに、ぼくとユーノは消えちゃうけど」

「え…?人間に戻るって」

「ちょっと待って。ユーノって子は兎も角、殿下がお隠れになられるのは」

「おぉ、ユーリ。いえ、我らが主、母よ。なんと慈悲深い…」


 ユーリとユーノ、二人がやろうとしていることが遂に明かされる。

 光と闇、世界を司る神の化身だから出来ること、それは——


「大丈夫。それがぼくたちの願い。ぼくたちが生まれた意味。——神なき世界の創造だから」


 二人で共に亜空へ消える。

 女神二人が消える。そうすれば、器の中身が変わる。

 人間と魔物の区別はなくなり、争いも消える。


 ユーノが言った、争う理由がなくなるとは、

 アルフレドは追いかける必要がなかったとは、

 二人の自己犠牲で、全てが丸く収まることが決まっていたからだった。


「神のいない…世界」

「ボクたちが人間に、ルキフェに戻れる」

「アイザと同じに、人間に戻れる」

「マジかよ。俺も人間に戻って…」


 ここに居るのは、神に近い何かでしかない。

 それぞれ思う所はあれど、届かない。

 届かない存在に、近い何かは傅くことしか出来ない。


「アルフレドとフィーネと一緒に帰れるのか。故郷…、スターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


 カリカリカリカリカリ…


「えっと、何?随分長いスターね」


 バリバリバリバリ…


 ザリザリザリザリ…

 

「星に願いごとでもしてるんじゃないか…、って熱っ‼」

「誰か、そいつをつまみ出せ。大体、不敬であるぞ。儂へではない。神の御前でそのように立ち上がるのみならず、手を広げおって。馬鹿にしておるのか」


 慈愛に満ちた顔、黄金色の睫毛が跳ね上がり、太陽を思わせる光を帯びた瞳が大きく剥かれる。

 瞳の太陽が照らすのは、奇妙な姿勢のピンと伸びた男。

 特徴的なTの字ポーズで、立ちっぱなしの魔人だった。


「え?何それ…」

「何って、断固反対だって言ってんだよ‼ドラステのせっかくのファンタジー要素を失くす、だと?こちとら人間辞めてんだヨ‼てか、話しにくいだろ。どうにかしろって‼」


 クスッ…


 神はやんわりと肩を竦め、静かに笑った。

 太陽のような瞳は爛々さを暈して、透き通る琥珀に落ち着いた。

 空気の色が変わり、部屋の温度まで下がる。

 すると、Tの字男以外の魔物も膝から崩れ落ちた。


「…あれ、私」

「これが神…か」


 先の傅きとは違うが、畏れを抱くこととなった。

 ただ、笑いを堪える今の顔は、女神にしてはとても愛らしい。

 数十秒、どうにか呑み込んだユーリはコテリと首を傾げた。


「この先出番がないとはいえ、厚かましすぎました。本当はただ…、レイに助言をしたかっただけです」


 軽く目を閉じ、薄ら瞼から漏れ出る光

 笑っているのか、挑発しているのか。

 少年然としていた今までとは違った顔つきで、金の女神はこう告げた。


「デッドラインは勇者が玉座に辿り着くまで。それは即ち、世界崩壊」


 それは紛れもなく、女神からのアドバイスだった。

 戦いが始まったら終わりと知ってはいたが、バグが関与しているとなると話が違う。

 だが女神が言うからには、アンタッチャブルな場所ではない。


「…分かった。ユーリ、お前は」


 畏敬の念に囲まれた神、少女ユーリはスカートの裾をちょんと摘まんでお辞儀をした。


「ぼくのことは気にしないで。あっちで見られるから」


 先に発生したブロックノイズが現れて、少女ユーリは消えた。


 その後どよめくが、魔人は顔を顰めた。


「…あれ。助言は有難いけど。今出てきたのって、自分の口でネタバレしたかったから…じゃね?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ