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悪役転生。転生したら裏切り役キャラになっていたDLC  作者: 綿木絹


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38/66

勇者パーティはまたもや蹂躙される

 勇者の移動は必ずドラステワゴンも同行する。

 その黒光りする車体に輝かしいパーティが映し出される。

 速度上昇、物理防御上昇、魔法防御上昇、物理攻撃力上昇、魔法攻撃力上昇。

 全身にバフオーラを纏い、魔法の鎧も魔法の剣も手にして、虹色に輝く体。


 それを見て、ドラステワゴンは何を思ったかさて置き、

 神々しい姿の勇者たちは大扉の前に立っていた。


「ここがデスキャッスル。魔王が居る城。それから…」

「その前にさっきの話は本当なの?そのわたくしと」

「キラリのそのスコープって正確なんだよね?」

「うん。レベルが上がって精度も良くなったから、ステータスも分かるし。あの銀髪さんの個体名も表示されたし。レイ・デズモアって人間の頃の名前も出たし」


 勿論、キラリは知らない。

 とは言え、人物名は彼女にとってはとても重要だった。


「デズモア公は王の弟です。そして伯父の友人…。カカオ様のお子様があんなに大きく」

「あのレイが子供の頃から言ってたのは正しかったってこと。勇者アルフレドとお姫様が兄妹というのは多分、…じゃなくて確実になったのよね」

「レイって運転してた人だっけ。エクナベル家に伝わる古代装置を動かせたのも王族だったから…か」


 半魔サラとの戦いでレベルが上がり、全員の賢さポイントが上がった。

 ただし、神・設定資料集に載っている話が、中の出演者によって語られるのは、賢さによってのみではない。


「レイも王族だった。お父さんとお母さんの教育の賜物って言ってたけど、それって僕が成長して、魔王を倒す為の準備だったのか」


 ——決定したのだ


 勇者アルフレドが『魔人レイ』と認識した。

 主人公目線でストーリーが進む。

 プレイヤーが見ているのは主人公だから、認識されたら形が作られる。

 あやふやだったものが定まって、過去の発言も蘇る。


「だったら…、ユーノは?」


 因みにユーノルートは変わらない。

 そう進めさせたのは、レイでもアルフレドでもなく、ユーリだ。

 アレが何を考えているのか、残念ながら神・設定資料集では語られない。


 だからこそ、賢者たちは頭を抱えていた。


「…アル。もしも、ユーノの救出が間に合わなかったら」

「例えば、ユーノを助ける為には世界を捧げないといけないとかだったら」


 アーマグからこっちまでに現れたデーモンの言葉は、やはり定かではない。

 とは言え、少なくともサラ戦のシルバーアークデーモンの言葉は、レイの言葉だ。

 嘘と断じることが出来るだろうか。


 あの悪魔は戦いの中でこう言った。


 ——ユーノを助けるために、お前を愛している仲間たちが犠牲になってもか?


 旅の途中で人知を超えた叡知にも触れた。

 魔物や遺物は、神が生み出したのではなく、人間たちが作ったモノだった。

 その全てにドラゴニア王家が絡んでいたことは、リディアとサラが加わったことで揺るがない事実となった。


「だ、大丈夫だよ。ユーリが居なくなって、数日。まだ…、まだ間に合う」


 金髪勇者はそう言う。

 だが、勇者の本当の気持ちは誰にも分からない。

 そも、今までのことだって好感度がそうさせているだけ。

 彼の為に行動しろ、と心が強いている。


「アルはユーノのことが好きなんだよ…ね」


 するとヒロインの誰かが言った。

 勇者は俯いて


「…うん」


 小さく頷く。


 そして銀髪悪魔の言葉が蘇る。

 女たちは堪らず、溜め息を吐いた。


「その…。アル様は王子様ってことになるから…」

「そういうこと…になるのかな。リディアがお姫様ならそういうことになるんだろうけど」

「り、リディア姫…、じゃなくて殿下。この国の法律はど、ど、ど…、どのようになって」

「わたくしに聞かれても分かりません。国はなくなったのですよね、サラ」

「アーノルド王はアズモデに殺されました。王位継承権があるとすれば弟殿下のデズモア様ですが」


 半魔は恭しく、儚げに俯いた。

 そう、サラが加わることで情報は加速していく。

 桃色の髪の少女の記憶も、色鮮やかに戻っていく。


「…そか。パパとママが偉い人って言ってたのって。レイのお父さんとお母さんが王様の弟って知ってたから」


 勿論、水色の髪の少女の記憶も。

 朱色の少女も


「村長の過去は語りたがらなかったけど、あり得るわね」

「ってか、レイ・デズモアが本名ならそれしかないじゃん。そういえばスタトの村長さんって」

「…魔王軍に殺された。今思えば、狙って殺したとしか思えない。今にして思えば、レイが魔物にされたのだって」

「王位継承にはメビウス教の聖典が必要です。魔物になったレイ・デズモアには継承権がありませんし」

「レイは生き残りのドラゴニア王家だった…。だからアルフレド君はスルーされた…とか?」


 ここぞとばかりに緑の髪の修道女も、白衣の少女も加わるが、流石に薄紫の着物の幼女は首を傾げるしかなかった。

 とはいえ、今一番気になることは彼女にも関係する。


「王国はなくなってないのでち(・・)よね?わらわのロータスと違って…。今から勇者たまが、王たまになれば全部解決するのら?」

「そうですわね。アルフレドとわたくしが居るのです。いちから王国を作る必要な度ありません。ですが、法律くらいは。勿論、妹とも結婚OKな法律にしますわ」

「姫。その…」

「分かっておりますわ。悪魔は駄目だけど、半魔も問題無し。第一妃はわたくしで決まりですけど」

「あー!リディア、自分で勝手に決めようとしてるー!」

「新しい国を作るんだったら、なんでもありってことだよねぇ?」

「うーん、アルフレド君のハーレムになっちゃうね」


 八人も集まったら、誰が何を話しているか分からない。

 城に入った緊張感なんて関係無い、というより


 ——心配事を掻き消すように、全員がハーレムルートのエンドを妄想していた。


 それは紛れもなく、用意されたハーレムな終わり方だ。

 ユーノを選び、世界を滅ぼすストーリーは誰も望んでいない。


「その…、ユーノちゃんも同じ場所にいたら…。ね、アル」

「アタシ…たち。上手くやるから」


 レイという悪魔はそう言ったが、結局イメージが湧かない。

 だから何をしてよいか分からない。

 それは仕方のないことで、冒頭でゲームをしていた新島礼だって、操れなかったのだ。

 プレイヤーの気持ちを置き去りに、勇者はユーノを助ける為にひた走る。


 ん?だったら——、なんてのは今は割愛する。


「そ、そうだよ。あんな悪魔の言った通りにはならない。分かるんだ。ユーノはまだ…」


 ここから先は、やっと待ちに待った彼が登場するのだし


 そこで、ガキン‼という金属音が響いた。


 ぐはっ…と吹き飛ばされたのは心ここにあらずの勇者だった。


 ソフィアが即座に駆け寄り、全員が同じ方向に身構える。


 相手は誰か、なんてのは愚問だろう。

 だってここは巨大な結婚式場で言うとエントランスホール。


「ふ、この状況でよそ見。しかも女たちは今後の心配か。聞いたことはないか?来年の話をすると、…ドラグノフが笑う…と」


 自らの努力のみで神のような存在に、高みの辿り着いた男、最強武人ドラグノフを忘れてはならない。

 髪の毛は全て捨てた。

 そして彼は最強となった。


 そんなドラグノフだが、この世界線での初登場は、実はここではない。


「あ‼あいつ、知ってるかも」

「知っている?…どうしてよ。あんな殺気…、一度会ったら忘れる訳ないでしょ」


 こことは違う世界で、勇者たちは体を解体された。

 だが、彼女だってソレは忘れている、なんて野暮な話。

 ドラグノフは、このユーノイベントにもちゃんと登場していた。

 赤毛の彼女の言葉の中で


「だって…、フィーネたちは見てないもん。あたし言ったよね。ギリー農場で見た…って」

「ちょっと待ってよ。あの時見たのはユーノって」

「ううん。あたしの農園に現れたのはユーリの方だった…、って後からレイが言ってた気がする」


 銀髪があれはユーノではなくユーリと言った。

 そういう結論を出したのは、ゲーム内のイベントではないからだった。

 というのも、エミリの両親はどのシナリオを通っても死んでしまう。

 二人は偶然助けられただけ。

 もしもそこにユーノが絡んでいるのなら、ゲーム内で必ず描かれる。

 という、ただのメタ読みで、真相はレイも知らなかった。

 あの場に現れたのはドラグノフではないか、くらいは一応察していたのだが。


「ここは井戸端ではないぞ、女ども」


 不愉快だと大男が叫ぶ。

 ドラグノフの腕は設定通り四本で、それぞれに白、黒、赤、金の剣が握られている。

 黒剣は全体攻撃属性で、ソレを振ると剣のオーラが全員に注がれる。


 がはっ…


 と全員が怯んでしまうのも無理はない。

 この攻撃はなんと威力200前後。

 しっかりとレベルを上げた勇者アルフレドの三分の一を削る攻撃だ。

 更に白の剣が追い打ちをかける。

 大盾を構えるエミリが立ち向かうが、


「痛っ‼」


 盾の奥に剣の形の衝撃波が走って、前衛の一人が膝をついた。

 今までのドラグノフの攻撃は以下の通りだ。

 白は通常攻撃、黒は全体攻撃、赤はHP吸収攻撃、そして金色は5%の確率で痛恨のダメージを与える。

 そして二回に一回、その四つの攻撃が同時に来る。


 ——これは普通に考えて、ぶっ壊れである。


「ミナケイル‼」

「ミナケイルラ‼」


 勿論、ここはゲーム世界だ。腕が切り落とされたくらいでは倒れない。

 だからフィーネとソフィアとマリア、それからリディアも加わって、全体回復を行う。

 でも、間に合わない。


勇者とはその程度(・・・・・・・・)かっ‼」

「ケイミルテ‼」


 ドラグノフの全体攻撃は余りにも厄介で

 アルフレドも慌てて、回復合戦に参加をする。

 特にあのHP吸収の赤い剣が厄介であり、肉弾戦を思わせながら、ケロッと回復を挟んでくる。


「かはっ…。勇者…様…」


 そして、なんと言っても突然やってくる痛恨ダメージが厄介だ。

 回復ばかりしていると、埒が明かない。

 たかが5%が驚異となってくる。


「ソフィア‼…マリア、蘇生魔法‼」

「分かってるって‼」


 一定のリズムで戦いたいのに、完全回復魔法もしくは蘇生級の魔法が必要となる。

 ヒーラーはそれに備えて、常に回復魔法を唱える形となる。

 そんな中で後衛が狙われたら堪らない。


「ぬるい…。この程度の人間に四天王たちがやられたのか」


 ドラグノフとしても首を傾げる。

 余りにも弱いと眉間に皺を刻む。

 こんな厄介なダンジョンボスのドラグノフと、いつかのレイは一対一で戦った。


「つ…、強すぎる。どうにか…しないと…」


 勿論、それは非公式だし、ドラグノフはDLCでステータスが盛られたのもある。

 とは言え、これほどの人数差はどうか。

 だって勇者を含めて九人もいるのだ。


「光の女神メビウスの恩寵とはその程度だったと…。その程度で…、神に等しい我らに逆らおうとは…」


 それでも敵わない。

 軍神ドラグノフの前で勇者たちは追い詰められていく。


 必死の抵抗で剣を振るうも、

 ここぞとばかりに殺人蹴りを狙おうとも、


 上下左右前後に視覚を持つという恐るべき性質を持つ鬼には効かない。

 少し先にある筈の、ハーレム王の生活を想像していたヒロインたちは面食らった。

 それでも勇者は必死に戦う。

 彼は戦うしかなかった。


「その先に…、くそ。ユーノが居るのに」


 毎回来る全体への波状攻撃。

 防御を貫通する単一攻撃。

 何より、一定確率でここにいる誰かの意識が飛ぶ、即死攻撃。


「こんなの…」


 今までで、戦い自体に不安を感じることはなかった。

 アルフレドの背を追って、ヒロイン同士で話し合い、レベルを上げ、装備を考え、編成を考えてきた。

 互いをライバル視し、反発することはあったけれど、本当にうまくやってきたのだ。


 それが、その信用が、その自身が呆気なく崩れていった。

 盾が弾かれたと思ったらそこに腕がついていたり、装備を剥がされたと思ったら、身がごっそりついていたり


 そしてあることに気付く。

 もしかすると、と全身を強張らせる。


「こいつが…魔王…」


 とすると、今までと違って当たり前だ。

 だって今、魔王城の中にいる。

 魔王城と呼ばれるのだから、魔王が居ると考えるべきだった。

 そしてこれが最後の戦いで、

 あの悪魔が魔人レイが話していたことで


 あの発言は、これのことだったかもしれない。


「アル…。私たちは」


 ヒロインたちがそう考えるのだから、当然勇者もそこに至る。


 その背中を勇敢と呼ぶべきか、無鉄砲と叫ぶべきか


 傷だらけで死にかけの勇者は、同じく傷だらけで死にかけの女たちを置いて、四本腕の大男に飛び掛かる。


「お前が魔王なんだろっ‼僕のユーノを返せ‼」


 勇者が一番得意な攻撃だ。

 雷神撃突破(ソールブレイド)という名のまま

 雷属性でかつ、稲妻のような速さで空を一瞬で突き刺すスキル


 確かに勇者は言った。

 ユーノを助けるし、全員も助けると。

 先に魔王を倒せば、死にかけとは言えまだ間に合う。


 だが


「痴れ者めが、我は魔王にあらず‼」


 勇者を孕んだ筈の稲妻は弾かれて、その言葉と共にアルフレドは真後ろに吹き飛んだ。


「う…そ…」


 そして何度も壁を跳ね返って、ソレは動かなくなった。

 稲妻にうたれたかのように体中が焼け焦げていた。


 キィィィ……ィィィン


「みん…な…」


 それは偶然か、それとも必然か。


 フィーネは重たい足取りで、重たい瞼で勇者の安否の確かめる。

 目の前に広がる絶望的な光景に目が霞み、同時に耐えがたい恐怖に襲われた。


「死ん…じゃった…」


 いつかの世界線と同様に、背筋も凍りつく残虐な破壊行為が

 魔城のエントランスを汚した赤色が


 ——フィーネの血に染まった唇に紡がせる。


「バッド…エンド…。私たちは…失敗…し…」


 祈るような姿勢で崩れ落ちた少女フィーネ。


 彼女の祈りを受け止めるのは、光女神メビウスのような金色の


 5%の確率で痛恨のダメージを与える金の剣が、一滴も血に染まっていない美しい剣が、空色の髪ごと彼女のHP(いのち)を刈り取った。



 



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