表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役転生。転生したら裏切り役キャラになっていたDLC  作者: 綿木絹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/66

勇者の前にモブ・デーモン

 アルフレドは最後のアークデーモンに刃を向けていた。

 デーモンの上位存在は少なくとも三体出現した。

 でも、もっと多くいたんじゃないかと錯覚するほど、チョリソーの東側を体液の海に変えている。

 ゲームでは血を連想する色ではないし、直ぐに消えるから、ノーカットの貴重なシーンと言えるかもしれない。


「ユーノさんについては何も知らないよ。ここから先は」

「…分かってる。あの紫の髪の女悪魔。アイツは何に守られてるんだよ」


 ここにいるアークデーモンはムービー生まれのムービー育ち。

 とは言え、無知という訳では無い。

 ちゃんと知っているし、ちゃんと人間が分かる言葉を話せる。


 でも


「エルザ様のことを話すわけがない。ぐ…ぅぅぅ」

「キラリ。コイツらの体力は?」

「HP500くらいかな」

「HP1ずつ削って、五百回。」


 主人について話すほど、エルザ部隊の部下は甘くない。

 魔王軍全体がそうではなく、ゼノスの部下ならペラペラと話す。


「ぐぁ…」

「今の、どれくらい減った?」

「10くらい」


 スコープを覗く女が答える。

 もう一人の女は逃げないように見張っている。

 若しくは、人に見られないように目を配っている。


「これだと直ぐに死んじゃう。魔物は簡単に死なないと思ってたんだけど」

「アル。町の方は大分片付いたみたいだけど」

「早く吐いたほうが身のためだよ。僕だってこんなことはしたくない」

「エルザ様。エルザ様…。うぐ…」

「アル!コイツ、自ら」

「させない!ユーノはもっと辛い目に…」


 ある意味で佳境に入った頃だった。

 黒髪少女、キラリのスコープが別影を捉える。


「アルフレド君!」

「え?そんな攻撃!!僕に当たるわけないだろ」


 ここに留まるにはハイレベルの勇者たち。

 彼たちに気付かれない筈もない。


「ギャギャギャギャ!!ギャウギャヴィン!!」


 すると低能デーモンの鳴き声。

 ソレが同時に投げた石も当たり前に弾き返される。

 更にデーモンは親指を突き立てて、「俺を見ろ!」のポーズを決めた。


「ギャウ!ギャヴィンギャドヴェイギャ!!」


     ◇


 レイは最悪の気分になった。

 勇者アルフレドの姿は完全にZ指定だ。

 アレラには絵の具にでも見えているかもしれないが、レイの目には血にしか見えない。

 モブ化で言葉は話せなくなるし、それにギリギリまで気づかなかったし。


「ただ話せないって意味じゃない。プレイヤーだから人間の言葉が分かるだけ。文字だってキャラが理解してないから書けないし」


 唯一かもしれないトレードマークの一張羅も失くなった。

 その状況でどうやって認識してもらえるか。

 戦っても勝てる気どころか、瞬殺される気しかしない。

 だってアイツらは、エルザ軍を二回も全滅させた。


「完全にユーノルート。ってか、なんでヒロイン達まで」


 賢い五人だったのに、勇者と協力しているように見える。

 魔物たちは怯えて、どっちが正義がも分からないくらい。

 勿論、ゲームである以上、ネームド以外に同情することは少ない。


 レベルを上げまくる勇者たちが間違っているとは言えない。

 だけど、真っしぐら。


「俺はレイだ!なんで分からない!この犬歯を手で隠して。それから」


 遂に近づき始めたアルフレド達に向かって、両手で左右の犬歯を持って、隠そうとしてみる。


「マリア達が討ち漏らしたのね」

「あのタイプは人語を理解してないよ」

「だったら早く始末しよう。少しでもレベルをあげておかないと」


 血も涙もないこと言って、魔物を退治する。

 プレイヤーだから許されるセリフを吐く。


 だが、ここでレイは勇気の決断をする。


「アアアアアアアア‼ジュジュジュジュジュジュ‼ボボボッボボボ‼ドウェドウェドウェドウェ‼」


 と言ってみたところで、


「威嚇しても無駄だよ」

「ただのデーモン。レベルは20から23。二発か三発で倒せるよ」

「ありがと、キラリ」

「アアアアア‼ジュュジュジュ‼ボボボボ‼ウェドドウェ‼」

「煩いわね。いい加減倒しましょ。チョリソーの解放もしなきゃ」


 耳コピ。レベル20から23くらいの魔物だと、これくらいしか思いつかなかった。 

 

「アア‼ジュジュ‼ボボボ‼ウェウェ‼」


 ひ弱なデーモンは、頑張ってアズモデに聞こえるように叫んでいる。

 あの会議で分かったのは、エルザはユーノの件に絡んでいないこと。

 そしてアズモデならば、絶対に知っているし、もしかしたら絡んでいるかもしれないこと。


「アルフレド君。僕に任せて。魔物破壊兵器2号で——」


 これにはさすがのレイも目を剥く。

 照準があったが最後、他の魔物と同様に爆散する。

 その後、世界がどうなるか分からない。

 アルフレドとしてクリアしたから、今があるのだろうし。


 ドンッ‼と地面を蹴って、バサァと翼を適当に羽ばたかせて、


「怖っ‼ちょっと‼照準があわないよぉ‼」

「アア‼ジュジュ‼ボボボ‼ウェウェ‼ウェバ‼」


 アズモデだってば、という言葉も添えて。

 そして、こんな死の恐怖に立ち向かう勇者には祝福を。


 それに相応しい光景。


「ごふ…、げふ…」


 まだ息があった。

 面接官かどうかは分からないが、アークデーモンは生きていた。

 生きていたなら話が変わって来る。

 不器用に薄い羽根をバタつかせて、低空を滑空して、どうにかすり抜ける。


 そして見事にアークデーモンの元へ


「おい‼大丈夫か‼生きてるか⁈」


 当然だがアークデーモンは、流暢ではないが人語を話せる。

 勿論、魔物の言葉も話せる。即ち


「あいつらに俺の言葉を届けてくれ。エルザを倒しに行く必要はない。そのまま北。エクレアに。それからアズモデに」


 捲し立てるように話した。

 伝えてほしいことはいくらでもある。

 だけど、所詮はモブ・デーモンの動き。

 アークデーモンも死にかけだし、致命傷と呼ぶしかない傷を負っている。


「助けに…?」

「それか何かするつもりかも」

「大丈夫。ちゃんと私も用意してた。まとめて焼いてあげる。——|大爆炎戦塵斬‼」


 そしてアークデーモンと雑魚デーモンは地獄のような業火で包まれた。


     ◇


 最強魔法の一歩手前。

 DLC追加で増えたからそれで、かつての炎系最終魔法。

 威力は凄まじく、全身があっという間に炭化する程。

 だからか、痛みはなかった。それが救いだった。


 ──ん?


「いや、痛いだろ!有毒ガス吸って即死ならまだ分かるけど。そもそも火山帯で暮らしてる俺らが死ぬとは思えないし」

「へぇ、それだけ話す余裕があるのね」


 モブは目を剥く。

 ちょっとどころではなく感動した。


「エルザっ!!お前を待っていたんだっ!」

「アル、駄目。まだ聞き出せていない」

「今もダメージ受けてないように見えるねぇ」


 見えない壁が。

 いや、今はそこには目を瞑ろう。

 エルザの得意は炎魔法なのだ。この程度、造作もない。


「エルザ様。どうして」

「コッチが聞きたいね。でも、その前に」

「勇者様‼」

「こっちは終わった…って‼やばいじゃん」

「あの女悪魔。また現れたの?」


 チョリソーの魔物は一匹残らずやられたらしく、三人のヒロインも駆けつけた。

 エルザが引き攣れてきた魔物を一掃し、そこに消えたエルザが現れた。


 そして勇者たちはボス戦を迎える。これはとても綺麗な流れだ。


「あとはお前だけだ。さぁ。ユーノの居場所を吐け。さもないと」

「さもないとどうする」

「お前をお前の部下と同じ目に遭わせる」

「元々、スタトを襲った敵なんだしね」

「ほう。あたしをまだ倒せる気でいるのかい?」


 エルザの目線でも、それは同じ。

 現れた理由はさて置き、現れた以上は戦うに決まっている。

 こういうシナリオだったかのごとく、全員がそのつもりで戦いの準備を進める。

 いや、もしかしたらこういうシナリオかもしれない。


「不味い。不味い。不味い。こんな流れは知らないけど、在り得てしまう…」


 アルフレド、フィーネ、エミリ、マリア、ソフィア、キラリそしてエルザ。


 現在の世界の中心、主要キャラが勢ぞろい。

 しかも雑魚デーモンだったとしても、プレイヤー。

 基本的に、ムービー中はキャラクターの操作は出来ない。


「俺は雑魚のモブ。話す言葉も人外…ってことは、現在進行形でムービーの可能性もあるってこと?みんな、それっぽいことしか言わないし」


 打ち消した炎に囲まれてる。

 そこでプリレンダムービーを見ている…


「倒すさ。倒してユーノを助けるんだ」

「先ずはユーノを助ける。そしてアンタたち魔王軍を壊滅させるのよ」

「天女のクリスタル…か。成程」

「勇者様。準備が整いました」

「ユーノちゃんの居場所を吐くまで逃さないんだから!」


 そしてレイは漸く気が付いた。


「コイツら、言ってることが全然違う。ピロー会議とやらは何処行ったんだよ」


 神託という体で、今後の展開は教えている。

 考えるヒロインたちがいるから、最悪の事態は避けられるなんて、無理な話。

 ヒロインたちは悪くない。

 根本原因は、今後の展開を教えた側にあるのだ。


「放っておいてもハーレムルートには行かないのか。エルザ様!!」

「なんだ。お前はさがっていろ。コヤツらは強い…。あたしでも負けるかもしれない」

「負けちゃダメだ。アイザはどうする!!」


 ユーノルートしか知らないオジサンが、ハーレムルートに導けるわけがない。

 そしてエルザがやられたら、アイザは登場しない。

 今回の『全員連れて行かなくていい』システムだと、見えない壁も貫通するかもしれない。


 何より、ハーレムルートにアイザが必要。

 ハーレムルートは、ユーノ以外の全てのヒロインと結ばれるルート。

 ヒントはそれだけ。


「何、話し合ってるの?」

「知らなーい。フィーネ。あの火って消せる?」

「勿論。そのまま攻撃になるけど、死なないわよね」

「僕の全部吸引砲でも特殊効果は消せるよ」


 あのレイモンドムービー死は大幅カット。

 あの勇者の頭はユーノでいっぱいいっぱい。

 この道中だって目立たなかったオジサンは、ただの車好きオジサンとしてモブデーモンにされた。

 このモブは人語も使えないから、大事なことを何も伝えられない。

 どうにか耳コピを言語化しようとしたが…


「アイザが居なきゃ意味がない。アズモデに聞けって伝えたところで、レイと認識されない時点で終わっていた…」


 フィーネが魔法の剣を構える。

 キラリが物騒なグレネードランチャーを肩に背負う。

 他四人もバフで全身からオーラを滾らせている。


「何も出来ずに…、終わる。だってこんなの初見じゃ」


 攻略もなしで、狙ったマルチエンドは難しすぎる。

 初見の時もユーノルートに呑み込まれた。

 だから、この先で何が起きるか分からない。


「──あれ?だとしても」


 そう。だとしても、だ。


「行け。全部吸引砲‼」

「私も…。全力・水氷大翼斬撃‼」


 空間が歪み始めた瞬間に始まる、勇者サイドの一斉攻撃。


「あたしに掴まりな。あたしはその為に戻ったんだ。──|魔王軍幹部専用転移魔法イツマゾク


 ここに彼女がいる理由はない。

 最愛の妹と過ごしている筈のエルザはモブを助ける為に戻って来た。


 これが、ゲームでは在り得ない世界線の始まりだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ