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悪役転生。転生したら裏切り役キャラになっていたDLC  作者: 綿木絹


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モブ。チョリソーで奮闘す

          ▲


 町中にモンスターが溢れていた。

 その数は100体以上もいる。

 勇者達は宿屋に泊まっていたところ、明け方になって町の人が駆け込んできた。

 ここに来る途中も、何十匹とモンスターを倒してきた。

 十軒以上の半壊した家の瓦礫も越えてきた。


エミリ「もう!倒しても倒しても、どんどん来るしぃ‼」


マリア「アーマグに来たんだもん。敵の本拠地って感じ?」


 そんな絶望的な状況の中、アルフレド達はモンスターが攻めてきたという、町の東側を目指していた。


フィーネ「アル、あれ!」


アルフレド「うん、あいつだ!」


 視界の向こうに女が一人立っていた。

 しかもモンスターが跋扈するこの町にだ。

 その妖艶な美しさが、逆に不気味さを際立たせている。

 アルフレドは彼女の様子を窺うように、ゆっくりと近づく。

 すると、その紫の髪の妖艶な女性の頭には羊のツノが生えていた。

 それだけで答えは十分だった。

 アルフレドは彼女を知っているのだから。


エルザ「ふふふ。待ち侘びたわ。ようこそアーマグ大陸へ、ようこそヘルガヌス様が君臨する大陸へ。我らの憎き敵、メビウスが遣わした異質の人間、光の勇者アルフレド。久しぶりだねぇ。ミッドバレーの修道院以来かしら。」


フィーネ「私たちを待っていたというの?そのために…、ここを。スタトの時もそうだったわね。なんで無関係な人間を巻き込むのよ!」


アルフレド「そうだよ。ユーノはどこだよ。お前がユーノを攫ったんだろ‼」


エルザ「巻き込む? いいじゃないの。光の勇者様の命が奪われる瞬間に立ち会えるんだ」


 その瞬間、かまいたちのような風の疾風がエルザを襲った。


ソフィア「あの時の恨み、忘れていませんよ。修道女が恨みなど語って良いとは思いません。でも、あの村は勇者様が来てくださらなければ滅んでいました!私は悪魔に向ける慈悲は持ち合わせていません‼」


 ソフィアは果敢にも、魔族の幹部エルザに魔法攻撃を仕掛けていた。

 ただ、彼女の魔法はキンッとガラスに弾かれたように、どこかへ消えてしまった。


エルザ「おやおや、誰かと思ったらあの時の…。んー、忘れた。でも、団扇であおいでくれたのだろう? ほら、もっと撃ってきたらどうだい?」


 彼女の神聖風魔法はエルザに全く効いていなかった。

 それを見てソフィアだけでなく、アルフレドもフィーネも驚愕の顔をした。


キラリ「じゃあ、僕のはどうかなぁ。モンスターだったら爆散する筈なんだけど……。えい!魔物破壊兵器1号!」


 キラリが持つロケットランチャーは、装填する物によって威力も効果も変わる。

 そして今撃ったのは中型モンスターまでなら一発で倒せる代物だ。

 その魔物破壊兵器は見事にエルザに命中した…かに思えた。


エルザ「次は煙幕かい? できれば順番を考えて欲しいものだね。煙くてありゃしないよ。」


フィーネ「くそっ!爆炎戦塵斬!…なんで? 剣も弾かれるの?」


 フィーネの剣も何かの壁に弾かれてしまい、彼女はその衝撃で弾き飛ばされた。


エルザ「全く懲りないねぇ。まぁ、仕方ないわよね。今まで雑魚ばかり倒してきた弱い物いじめ勇者だものね?」


 エルザには何の攻撃も通らない。

 それを悟り、アルフレドは倒れたフィーネの元に駆け寄った。


アルフレド「フィーネ、大丈夫?今、フィーネの攻撃が弾かれてた…。…でも」


エルザ「でも?何だい、その顔」


アルフレド「今ので死なれちゃ困る。だってお前にはユーノの居場所を吐いてもらわないといけないんだ」


エルザ「ユーノ?あぁ、天女の…。それがどうしたというの?」


アルフレド「僕のユーノを返せ。返さないとお前を徹底的に痛めつけてやるぞ‼」


マリア「勇者様。駄目っ!」


アルフレド「く…。これでも‼この‼この‼」


ソフィア「嘘…。勇者様の攻撃も効かない…。あれが魔王軍幹部の実力…」


キラリ「みんな、騙されないで。きっとからくりがある。距離をとった方がいいかも。ちゃんと分析をしないと」


 勇者は何度も剣を振るが、やはり通らない。

 攻撃が見えない何かに阻止されて通らないと知り、一旦距離を置いた。

 その視界の端に、突如アークデーモンが現れる。

 そしてそのアークデーモンはエルザに耳打ちをした。

 すると女悪魔の顔が一瞬だが柔らかいものへと変わった。


エルザ「やれやれ。あたしの可愛い妹が呼んでいるらしい。仕方ない子だねぇ。というわけだ、光の勇者とその愛人共。あたしは用ができた。次の機会に遊んであげる。それまでにもっと剣を磨いておくんだねぇ」


 そして、エルザは背中から羽を生やして、飛び去る。


アルフレド「待て! 逃げるな、卑怯者!ユーノを返せ‼ユーノは僕の‼」


エルザ「逃げる?どうして?それにユーノ、ユーノとしつこい‼アレの価値も分からない人間が…。でもそうね。そんなに戦いたいのなら、こいつらと遊びな!」


 女悪魔がウィンクをすると地面から黒いスーツを着たアークデーモンが二体登場した。


フィーネ「また敵‼」


アル「教えろ‼ユーノは」


 その間に、エルザは東空に消えた。


エミリ「アル様‼今は街を」


 また四天王と戦えず、アルフレドは町の人間を守るためにアークデーモンに立ち向かう。


          ▲


「アル。魔物が突然現れた。今のって」

「う…ん…」


 アルフレド達は咄嗟に我に帰って顔を見合わせていた。

 勿論、彼らも不可思議な現象を知っている。

 ヒロインたちは、何かあると記憶の整理をするように心掛けていた。

 だから現状の確認から入るのだが……


「おかしなとこはないかなぁ」

「ミッドバレーが焼かれたのは事実ですし」

「ムービーかは分からないけど、直前の記憶が曖昧ね。私たちって魔法を撃ってなかったかしら」

「でも確か、魔物が攻めてきて」


 全員、全身がびっしょりと汗で塗れていた。

 ムービーイベントといっても、その時の彼らの意思はそのまま引き継がれている。

 ムービーが魔物との戦いから始まるのなら、村に魔物が襲来したときから、異変を感じた時からの記憶がある。


 そして勇者はこう結論を下した。

 

「考えても意味はないよ。大事なのはこっち。エルザって女悪魔に僕たちの攻撃が効かなかった

「うん。一旦分析すべきだよ。って、僕はさっき言ったと思うけど」

「えー。でもあたしはさっきのムービーだった気がするんだけど」

「マリアもぉ。ムービーだから攻撃が効かなかったとかじゃないの?」


 エミリには二重の記憶があるが、緊迫した場面故に違和感で終わる。

 マリアのはただの勘。とは言え、正解。攻撃が効かなかった理由なんて大正解。


「ねえ、勇者様。どうするの? マリア達はあの悪魔を追った方がいいのかな?」

「東に向かった。魔物が巣食う砦の方向だった。ユーノのことも知ってるみたいだったし、今すぐ…」

「待ちなさい。チョリソーが襲われてるのよ」

「でも、こうしている間にもユーノは」

「僕の話聞いてない…し。ユーノさんを何かに利用しようとしてるんだから、殺されることはないんじゃないかな」

「あの子の価値がどうとか話してたしね。でも、どっちみち!女悪魔の秘密を聞きださないと‼」


 エミリの言葉に全員が、勇者も渋々だが頷いた。

 勇者はそのむしゃくしゃを晴らすため、一度剣を地面に突き立てた。

 そして黒スーツのアークデーモンを睨みつける。


「ということだ、アークデーモン。僕は機嫌が悪い。悪いが押し通らせてもらう!」

「手分けした方がいいんじゃない?」

「じゃあ、チョリソーはみんなに任せた。ここは僕一人でいい」

「いいわけないでしょ。ユーノを知ってる私と魔物に詳しいキラリも残る。それでいいわね」


 フィーネの案に勇者は雑に頷いて、アークデーモンと対峙する。


「フィーネ、キラリ。勇者様をお願いします」

「一人で飛び出させないでよ」

「目を離さないように」


 なんて言いながら、残りは町に残る魔物狩りへと向かう。

 目の前のアークデーモンより、町を襲う魔物より、勇者の暴走が一番怖い。

 だからその場に二人を残し、三人も基本は東側を意識しながら散らばる。


「先ずは倒せるか見てみましょう?…()爆炎戦塵斬‼」


 先ずフィーネは火炎魔法の大火花(パイロワーク)とスキル・爆炎戦塵斬の併せ技を繰り出して、アークデーモンに攻撃を仕掛けた。


「大丈夫ね。こいつらには効果があるみたい」

「次は僕の魔物破壊兵器2号で」


 ギャ‼という悲鳴。

 先に動いたのは勇者アルフレドだった。


「お前、人間の言葉が分かるよな。ユーノは何処だ。何処に連れて行った…」


 フィーネが焼いた部分に剣をねじ入れる。

 魔物も痛覚を持っているらしく、アークデーモンの顔が歪む。


「し…しら…ない。ぐぁぁ」

「そうか。知らないか…」


 レベルは勿論、余裕。しかも数値以上のダメージが出る。

 例えば、彼のように首を落とされたら、人型魔物は基本的に痛恨の一撃となる。


「アル、ちょっと。質問が違うわよ。ユーノはあの女悪魔に聞くんでしょ」

「大丈夫。まだアークデーモンはいるし。死の恐怖を与えた方が、口が軽くなるだろうし」


 そしてアルフレドは二体目の首に剣の切っ先を当てた。


「はぁ。僕の出番は?一定以上の魔物じゃないと死への恐怖はないんだけど…」

「でも、拷問は違うでしょ。ねぇ、アークデーモンさん。さっきの女悪魔ってどうやったら倒せるの?」


     ◇


 ギリギリか、それとも余裕だったのかは分からない。

 タイミング、場所、必要キャラを満たし、ムービーはキャンセルせずに無事終わった。


「マジでドット欠けがなかった。たった2ドット、されど2ドット!レイモンドの生きた証が消された」


 モブ・デーモンは吐き捨てる。

 その青く光らない犬歯の遥か先に、金色に輝く剣士がいる。

 ただ、他の魔物が大きすぎてよく見えない。


「まだモブか。でも、一応昇格?」


 ムービーで紹介された100体の魔物の中に選ばれたらしい。

 唯一の生き残りだから、流石に選ばれないとおかしい。


「な、なんだ。こりゃ!聞いてねぇぞ!ブヒ…」


 そしてムービーで死に戻りしたサーベルタイガマンは驚き惑っている。

 そのタイガマンは、レイが見ている前で四つん這いになった。

「私は卑しい豚です。ぶひぶひ」、そして下卑た笑みを浮かべた。


「タイガマンはトラだろ…。ってこれ、サディスティックな懺悔室か。近くにソフィアがいる。どうする、俺!これはチャンス…。夢女子ならぬ夢男子の憧れのサディスティックな懺悔室…。ってバカ‼」


 タイガマンに振り下ろされた鞭は、命を刈り取るカタチをしていた。

 死ぬならアレが良いと考えながらも、レイが取った行動は逃げだった。

 何匹ものタイガマンが、ブヒブヒと鳴きながら死んでいく。

 それを見たモンスターの阿鼻叫喚が広がっていく。


「魔物は死を恐れないんじゃないのか?覚悟の問題ってやつ?」


 モブは大量生産されるから、記憶を引き継がない。

 神・設定資料集に書かれていたが、ムービー死に戻りの場合はどうか。

 一遍死んでみるわけにもいかず、ひたすら逃げる。


「ソフィアとはあんま絡んでないから、気付いてもらえる自信がない」


 逃げながらも考える。

 ここで逃げたら何のためにMKBに入ったのか分からない。

 2ドットが消えているムービーは、レイがいないムービー。

 記憶から完全に消えているなんてことが、本当にあるのか。


「アル様。大丈夫かなぁ」


 レイの動きが止まる。即座に隠れる。

 キングベッドスラドンの残骸が転がり、その半透明の向こう側に赤毛が揺らめく。


「大丈夫でしょ。あんなのに勇者様は負けないし」

「そうじゃなくて。ちょっと怖い…っていうか」


 エミリとマリアだ。

 ソフィアよりは絡みがある二人。

 改めて言うが、レイは死後魔物側になることは伝えている。

 ただし、魔人レイモンドとしての説明。

 当然、青く光る牙の話が中心。ってか、犬歯を青く光るデーモンはレイモンドしかいない。


「キングベッドスラドンって青色…」


 遠くではあるが、背後に下卑た豚と化した魔物が群れる。

 一体ずつ仕留めるのに飽きたのか、神聖旋風斬(ホーリースリリング)で豚たちが一気に天に召される。


「気持ち悪いとか言ってられない…。犬歯に」


 エルザと出会うためのイベントはアイザ加入に必須。

 それ以上に、今のままだと不味すぎる。

 だからって、どうすれば良かったのか。


 分からないまま、モブデーモンは飛び出した。


「がうあ!がうわう!ばろばろばー!!」

「え?」


 え…?


「ばうああうがっ!ぼぼべぶっば!」

「はぁ?」


 はぁ?


「気持ち悪…」

「魔物の言葉でなんか言ってんでしょ?エミリのことが好きだって」

「ばうわ!」

「えー。マリアのこと見てるよー」

「バビバボ!!」


 デーモンは目を剥く。

 死んだ魚の瞳が不気味に輝いた…ように見えたかもしれない。


「脳天かち割り…」

「バッべ!!」


 それを攻撃の合図と受け取ったとて、無理は無い。

 天まで掲げられた高鉄の斧が、大地を抉る。


「え?!避けた?」


 直後、モブ・デーモンの視界に一瞬だけピンク色の何かが映りこむ。


桃色大槍腿脚蹴りふらいんぐにーるきっく!」


 ニールキックというより、大砲の着弾のような衝撃が走る。

 デーモンは咄嗟に飛び込み、その攻撃をどうにか躱した。


「アタシも躱された⁈なんで?」


 ピンクの長い髪を靡かせた、チョリソーで手に入る最高の武道着を纏った少女。

 命を刈り取ろうとしての一撃で、やはり大地が悲鳴を上げる。


「ぎょっばぎゃっぎゃ‼ぼでをどどすぎが‼」


 二番目のヒロイン、エミリ。

 三番目のヒロイン、マリア・エクナベル。

 勇者を除いて、いやもしかすると勇者を越える武闘派の二人。


「ブーメラン…さっぽ…。って‼でっかいスラドン、邪魔だって‼」

「小さな町に溢れてるもん。一気にやっちゃいましょ」


 サーベルタイガマン、おおねずみ子爵十三世、でっかいスラドンが吹き飛ぶ。

 正拳突きに回し蹴り、からのムーンサルトキック。

 魔物が弾けて、モブたちから悲鳴を上げる。


「アイツ。まだ動いてる‼」

「っていうか、おかしくない?」


 マリアの全力右ハイキックが空を切り裂く。

 流石は足技が基本の格闘モンクだ。

 エミリの鉄斧が大地を揺らす。


「だったら、エミル…斬りぃぃいいい‼」


 魔物たちの阿鼻叫喚。

 アーマグの魔物は一味も二味も違う筈なのに、それでも推定レベル38の少女たちには余りに雑魚すぎた。

 それでも──


「また避けられた!」

「げぇむ的、ぼばえばのごーべぎば、わんぱたぁんぎゃうぎゃぎゃ‼」


 戸惑う魔物たちがいなければ、直ぐに分かっただろう。

 そも、戸惑う魔物たちの声が聞こえていたら、あんな躊躇のない攻撃が出来たかはさておき。


 能力が劣っているが、避けている。


「マリアたちの動きを知ってる?」

「でも、だったら‼」


 かつては、「マリアも怖かった‼死ぬかとも思った‼」と言った少女はいつの間にか強者に回っていた。

 そして全力の蹴り技を連続で放つ。

 エミリも同様。両親が襲われ、何もできなかった少女は直に四天王にさえ届く。


「こんなとこで時間はとれないのよ‼」

「勇者様が大変なんだから‼」


 パァァァァァァン‼


 遂に全ての魔物が限界を悟り、全てが弾けとんだ。

 同時に雑魚・デーモンの体も引き裂かれる。

 ザクッ、いやジャグゥゥと鈍い音を立てて、エミル斬りが炸裂する。


「やった‼」

「マリアが援護したの、当然でしょ」


 漸く討ち取ったと娘二人が確認に動く。

 その時、モブデーモンは二人の背後で囁いた。

 

『大変だからこそ、こっちも怖い思いをしてるんだろうが…。てか、流石はレイモンド…だな』


 そして引き裂かれた筈のデーモンは、シャカシャカとゴキブリのように町の影へと消えた。


「うーん。どの肉片がアレなのか、全然分からないね」

「あれってモブのデーモンよね。そういえば同じ姿なんだっけ。その辺に転がってるどれかでしょ」

「確かに。なーんで熱くなっちゃったんだろ。…あれ?」

「どしたの、エミリ」


 彼の体の身代わりは、エルザ群を示す紫の薄いマントと、えんじ色のジャリジャリしたジャケット。

 その二つが奇麗に引き裂かれていた。


「この生地ってどっかで見おぼえない?」

「何、ソレ。悪趣味にジャラジャラと偽物の宝石が埋め込まれて…。確かに。どっかで見た気がする…」

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