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悪役転生。転生したら裏切り役キャラになっていたDLC  作者: 綿木絹


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17/71

仲良しこよしの車旅

 ミッドバレーの勇者歓迎及び感謝祭は夕暮れ時に終わった。


「では場所を変えまして」

「ユーノ!ユーノ!あれ」

「はぁ…。途中で寝ちまったよ。俺も途中からマジでヤバかった」

「…だね。村長さん、院長先生。もう大丈夫です」

「いや、ですが」

「人が多いの苦手だもんね」

「それでは人を少なく」

「そうじゃなくて、これ以上アル様に媚び売っても駄目ってこと!」


 エミールが絶対に余計なことを吹き込んだ少女が立ちはだかる。

 でもオオムギーだけでなく、人望の厚いマーサたちも引き下がれない。

 時刻は普通に夜。魔物が強くなる夜中に行ってらっしゃいは常識的にあり得ない。


「でも、ユーノは寝ちゃってるわけだし」

「ふふん。ここはエクナベル財団の力が必要ね。レイ、アレを用意なさい」


 そこで登場するは、神の翼。

 アルフレドはユーノを背負い、ステーションワゴンに戻ることにした。

 運転手がドライブシートに座ってスイッチオン。

 エクナベル家の技術も半分入った、極上のアウトドアキャンプセットが展開される。

 ふわふわベッド付き寝室も、摩訶不思議な力でギュインと立ち上がる。


「レイモンドが入るとただのステーションワゴンに戻るくせに。お前はホント、都合の良い奴だな。でも…、ユーノの寝顔を見る為なら。って俺も都合が良すぎか」


 また穢れを洗い流された。

 感情の昂りもなんだか不味い。

 DLC部分に触れると、体が反応する。

 以前もあったのだけれど、ユーノが重なると吊り橋でもないのに、鼓動が早くなる。


「雑念が…欲しい。そうだ、こんな時は」


 運転席はドアを開けない限り完全防音。

 ドアを開けていても、後部座席の音は聞こえない。

 バックミラーとは後ろの危険を察知する為の鏡だが、ちょっと待って欲しい。

 世界で一台しかないから追突される心配はない。

 バックするとき使うかもしれないが、実はそれ用のバックモニターが設置されている。

 即ちこれは、勇者ハーレムを映す魔法の鏡。 


「俺の推し。推しの瞳が他の男にハートを作っている。そんな状況、新島礼の俺が耐えられる筈…」


 DSW-002。それは勇者をデスモンドに運ぶ乗り物。

 でもその本質は、レイモンド狂わせマシーンだ。

 これに乗っていれば、両親の仇に寝返ることも厭わない感情が芽吹く。


 だからミラー越しではなく、後ろのタクシーで言う透明なアクリル的であり、向こうからは見えないマジックミラー的なやつ越しに寝室を覗く。

 予想通り。アルフレドとユーノは殆ど密着して寝ている。

 そして、四人になったヒロインたちも勇者に頭を寄せて寝ていた。


 12時の方向にフィーネ、3時の方向にエミリ、6時の方向にマリア、9時の方向にソフィア。

 綺麗な放射線状に——


「そうはならんだろっ‼ってか何かの儀式かよ‼」


 勇者には惹かれるが、ヒロイン同士はくっつかない。

 そんなキャラクター関係を可視化した姿だ。

 しかも寝ているにもかかわらず、


「フィーネの位置が1時に移動した。同時にエミリが4時。…ヒロインが揃って回転している?ハーレムで回転なのに、1mmもエロくない…だと」


 それはただのローテーション。

 確かに数日前、前衛はローテーションしたらいいと言ったけれども。


 ——不気味過ぎて全然、羨ましくない。


     ◇


 翌日の朝。

 予想通りのトラブルが起きていた。


「ユーノ。お願いだから言う事を聞いて」

「フィーネのお願い…だけど、無理」

「魔物は怖いのよ。ユーノちゃんなんてあっという間に食べられちゃうよぉ」

「大丈夫。今度こそ、ちゃんとやるから」

「勇者の真似事は無理だよ。分かった!お父様にお願いしてあげる!エクナベルなら安全だから」

「…ちゃんと守るから」

「ユーノ様はレイ同様、メビウス様に選ばれておりません。気を悪くさせるかもしれませんが、足を引っ張ることになるかも…」


 ユーノを無事確保した。

 そして彼女は予言に語られない。

 勇者アルフレドの冒険の最初の目的は果たせた。


「一旦、僕たちの村に戻ろうよ。そこから色々整理して考える…とか」


 それが自然な流れである。

 勿論、ユーノは首を縦には振らない。


「スタト、ネクタ、ミッドバレー。人が襲われる。どうにかしないといけない」

「それはそう…だけど。ねぇ、レイからも言ってよ。ユーノは戦える子じゃないんだよ」

「分かってるよ。俺も昨日、説得を試みたからな」

「そうだったんだ…。何か話してるとは思ったけど。ねぇ、ユーノ。レイも言った通り──」


 それでも横に振り続ける、振り子のような透き通る髪。

 誰よりも世界を知るレイでも説得不可能だったのは、何も難しい理由からではない。


「アル。俺の話を先ず聞け。お前もユーノに似た存在を見ただろう?」

「…見た。アイツは、あの魔物は」

「名をユーリと言う。人間だが、魔王軍幹部たちはアレを王子と呼ぶ」

「人間なのに魔王軍…?ユーリに凄く似てて」

「ユーリに教えてもらった。ユーリに魔族のことを色々教えてもらった」

「悪魔の話を聞いちゃ駄目だよ。例え、人間だって」


 アルフレドが必死に説得する。

 だが、大前提として勇者と魔王の戦いがある。

 ミッドバレーで、古代から伝わる伝承とやらを聞いたタイミングだ。


「勇者様。…魔王は放って置けません」

「分かってる…。だからユーリを安全な場所に行って、それから」 

「魔王軍幹部専用転移魔法、イツマゾク。何処にでも現れる魔法を魔王軍は使える。私は何処に居ても捕まるって、ユーリが言ってた」

「それってアル様のファストトラベルみたいな感じかな」

「ううん。好きな場所にいつでも飛べるって」


 それは必然的に皆、心当たりのあることで


「スタトがいきなり襲われたのはそういうこと…?」

「お父さんが襲われたのも?農場に現れたユーリも?でも、ユーリって人間なんだっけ。隣の嫌な感じが魔王軍幹部…」

「噴水広場に突然、アイツが現れたのも」

「ミッドバレーがいきなり襲われたも、もしかしたら」


 記憶を失ったレイはデジャヴも伴って納得した。

 その結果、導き出せたのは。いや、そもそも。

 九番目のヒロインが?ここで離脱?そんなわけもなく。

 加えて、今はステータスさえ存在しない。

 

「例えば、アルのファストトラベルで護衛のローテーションをしたらどうかとも考えた。でも、それが出来るのは」

「僕たちが強くないと、守れない…」

「あぁ。アルたちはもっと強くなる。強くなって、幹部クラスを倒せるようになれば、安全地帯を作れるだろうな」

「じゃあ、今のところ安全な場所って」

「世界で最も安全な場所は勇者のそば」


 即ち、戦闘に参加しないただの同行者。

 ユーノがその魔法(イツマゾク)を知らなければ、説得できたかもしれないが、ユーノがユーリと出会ったのは恐らく最初の場面。

 あそこでユーリを確保できなかった時点で終わっていた。


「僕の近く…」

「あぁ。今のところ、ユーノを守れるのはお前だけ。加えて、今以上に強くならないと、だ」


 これはゲームシナリオ的にも正しい。

 イツマゾクが便利過ぎるのと、ユーノの役割が歪すぎるのとで、自分が勇者であっても同じ道を辿った。

 容易に想像できてしまう。


 だから彼も


「レイ。僕はもっと強くなりたい。だから…。痛っ!いきなり叩かないでよ」

「守りながらってのを忘れるな。やることは変わらないが、今まで以上に慎重に行く必要があるだろう?」


 ユーノが戻ったからこそ、必死になって経験値を稼ごうとする。


     ◇


「ユーノ、行ってくるね。レイ、何かあったらよろしく」


 ミッドバレーから東、何の問題もなく強くなる旅が始まる。

 今までと変わらないスタイル。

 今までと同じメンバーとプラスワン


「そ、ソフィアさん。た、戦い方はその…」

「成程。そのように戦われるのですね」

「はい。お得意の…む、鞭と神聖系魔法で…」

「組み合わせが大切なのですね」

「ソフィアさんでしたら、きっと直ぐにマスターされますので」


 新規メンバーにも戦い方を教え、保護者ヅラで後方腕組みをする。

 ソフィアさんは今日もキラキラしている。

 修道女の服ってやっぱり良いな、なんて保護者は考える。


「レイ、今の態度。変」

「へ?」


 そして、ゲーム内転生したばかりの頃の驚きの跳躍を見せる。


「い、いつもこんな、だけど…」

「フィーネの時と違う。他の二人とも違う。おかしい」

「う…、忘れてた。めちゃめちゃ恥ずかしいヤツ…。ってか、なんで車外にいるんだよ」

「車内にいたら追い出された」

「そうだった…。ドラステワゴンは勇者と俺に紐づけされる。二人が今は外だ」

「で。変だった理由」

「隠す必要もないか。ソフィアのファンは多いし」

「ファン?好きってこと?」

「そうだな。勇者様に一目惚れしちゃったけど」


 勇者のレベルが高いから今頃、「神聖旋風斬(ホーリースリリング)!」とか言って、活躍しているだろう。

 レベル管理と戦い方の改善により、殆どの敵は無傷で倒せる。

 DLC前だったら、順調そのもの。

 問題は他のヒロインの好意を勇者が受け入れるか。


「確かに皆、可愛い。わたしは…駄目」

「駄目じゃない。賛否は分かれるけど」

「わたしは賛否…両論?」

「いや、ユーノ自身のことじゃない。そもそも俺は結構好きだし」


 ユーノエンドがハピバでなければ、最高のシナリオだ。

 全てを捧げなければ、助けられないとか


「え…と」

「ふぇ?あ、いや。そういう意味とかじゃなくて」

「そ…か」

「いや、可愛い。ユーノが可愛いは当たり前だって」


 それにしても


「あれ…」

「わたし、可愛くない」

「いや。可愛い」


 余りにも口が軽い。

 知らずに囀り上手の蜜か何かを舐めたかもしれない。

 でもそもそも、これがユーノ。

 天女の透水晶クリスタルオブフローレスと呼ばれる特異点の力だ。


「頭で分かっていても、どうしようもないんだな」

「う。やはり気付くか。ちょっと喋り過ぎた」

「昔からそうだったし、流石にな。そしてその力を魔王軍が狙っている」

「そう。だから止められるのも、わたし…だけ」

「…他の道を選ばせる」

「そう…。んと…、喋りすぎた。あっちで座ってる」


 アルフレドがあぁなってしまうのも無理はない。

 それにユーノの想いはメタとして存在するから、プレイヤーがアルフレドになってしまったら、どうしようもない。


「デスモンド攻略が余裕でいけるのがレベル25。もう少し積んでおくか。デスモンド以降、俺がこっちに気を回さないで済むよう」


 今回のレイはいつも食事に参加している。

 食事は焚き火を囲む、やっぱりRPGでよくあるやつだ。

 レイは毎回、厨二キャラがちょっと遠くで木か石にもたれかかってるやつで乗り切っている。


 だって椅子が用意されない。

 とは言え、戦わざる者食うべからず。

 食べさせてもらってるだけ、有り難い。

 そもそも、誰も気にも留めていないのだし。

 いやいや、全員ではない。

 たった一人は違っていたが、いつも断っていた。


「レイ。明日はデスモンドで車が変わるんでしょ。だったら今日くらいは。幼馴染、みんなで一緒に食べたいんだ」

「そう…だな。椅子は」

「ちゃんと用意した。ほら、見た目も似てるでしょ」


 緩和されたレイモンドに勇者はいつも手を差し伸べていた。

 いつも存在意義が揺らいでいた。

 こんな調子でどうやったら裏切る流れになるのか。


 考えていた時、裏切り者は遂に気がついた。


「あ…。裏切るって話を伝えてない…」



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