瓜二つの二組とイベントと
ミッドバレー村は南側。
ミッドバレー街は中央で、メビウス修道院が北側の山全体を指す。
村の入り口にたった一台分の駐車場がある。
「後ろのハーレムはさて置き、ミッドバレーに到着だ。ここでようやくこのゲームの半分手前。のんびりプレイでおそらくは三時間程度。そろそろ次の展開が知りたいよな…」
身長差もあって、お父さんが車から降りたから子供たちが降り始めたように見える。
降りた子供たちは皆若い。一男三女の大家族で子供たちは父の元に集まる。
「ミッドバレー。伝承では人間が生まれた場所」
「エステリア大陸の大体真ん中だっけ」
「ここを通り抜けないと東に行けないんだっけ。勇者様、ここで情報収集を」
「アル。それから皆も。入る時は——」
昔の家庭用ゲーム機のキャラが動くイベントはプリレンダリングのムービーが主流の時代だった。
とは言え、ムービーを使わないイベントだって存在する。
「ユーノ‼」
勇者は走り出した。
「アル‼」
「ユーノだ‼ユーノがいたんだ‼」
アルフレドの視線の向こうに、長い髪の女の後姿。
薄手のワンピースが薄透明の髪で見え隠れする。
「ユーノ?ちょっとアル‼」
「あたしたちも追いかけましょ」
「勇者様‼マリアたちも一緒に追いかけます」
ミッドバレー入り口からソレは始まる。
ユーノらしき後姿を見つけたアルフレドが走り出す。
「やっぱり同時並行で進んでる」
「レイ、遅れないで!アルを」
「分かってる」
ソレは亡霊のようにすーっと移動を繰り返す。
まるで追ってこいと言っているようだった。
アルフレドを先頭に皆でミッドバレーになだれ込む。
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ミッドバレーは魔物が現れる前は、人の通りが多い村だった。
だから今はミッドバレー町と呼ばれることもある。
人が集まる理由は険しい山道を登ったところに建造された、有名な修道院にである。
そこに奇跡の少女と言われる、品行方正、そして優しさと綺麗さを併せ持った少女が見習いとして働いていた。
彼女がたまに慈悲をくれるので、噂が噂を呼んで貧しい人々も集まるようになった。
修道女の女「ソフィア、勝手に怪我をしてる人とか、体調が悪い人とかに魔法を使ってはいけませんよ。この修道院の格が落ちるというものです。あと、そもそも貴女は水門係でしょ。ちゃんと水門の鍵は身につけてる?」
ソフィア「す、すみません!マーサ様。はい。私の祖父が水門係でしたから、肌身離さず身につけています。」
マーサ「そう、もういいわ。今日も麓から相談したいって人がたくさん来ているから、今日は私がお手本を見せるわね。どうやったら適当にあしらえるか、ちゃんと見ていなさいよ。うちは由緒正しい修道院なのを忘れないように!」
少女は権力とか、お金とか、役職とか、そんなことには無頓着な性格だった。
けれど、だからこそ彼女は修道院の人間からは少し避けられていた。
それを見かねてマーサは彼女にお手本を見せることにした。
だから大人しく、少女はマーサの後に続いていく。
でも、その少女ソフィアは、自分が周りからどう見られているかは意識しない。
だって救いを求められたら、助けたくなってしまうから。
でも、そんな彼女も最近は頭を抱えていた。
そしてその頭を抱える理由とは、村の住民の諍いが頻発するようになったことだ。
こんなことは歴史書を紐解いても初めてのことだった。
マーサ「えっと、それじゃ、貴女は夫が自分の両親を殺した現場を見たのよね?」
村の女「間違いありません!」
マーサ「じゃあ、一応書き込んでおきますね? あとでご主人からも聞いてみます。」
最近では修道院とは名ばかりで村の相談所兼村の戸籍や、納税記録、それどころか治安維持までも一括で行っている。
だから修道院はこの街と呼べるほどに大きくなったミッドバレー村の中枢機関である。
そして最近は、頭を抱える事件が頻発している。
しかも大抵容疑者が二人いる。
そんな状況にソフィアは頭を悩ませていた。
何かがおかしい。
何かが狂い始めている。
そしてマーサが次の住民の話を聞いている時、村では大きな問題が発生していた。
人々が疑心暗鬼になり、挙げ句の果てに村に火を放ったのだという。
ただでさえ、火事は一大事だ。
それが一箇所ではないというのだから、村の存亡に関わる大問題である。
そんな時、修道服を纏った美しい緑色の髪の女性が、祭壇の奥からやってきた。
その女性は偶然にもソフィアと同じ髪の色をしていた。
更には容姿も同じ。
緑の髪の女「あらあら、人間ってのは醜い生き物ねぇ」
マーサ「ん?ソフィアが二人いる?もうどっちだっていいわ。村に行って彼女の夫から話を聞いてきなさい。」
緑の髪の女「あら、そこのおばさん。何を言っているの?喧嘩両成敗って言葉を知らないのかしら。どっちの家も燃やしちゃえば、世界は平和になるのよ?」
そう言って、ソフィアと瓜二つの修道女は、鋭い爪を構える。そこで
???「ねぇ、邪魔なんだけど」
もう一つの瓜二つの存在に固まった。
緑の髪の女「こ、こんな所に何故…」
???「君には関係ない。ボクのユーノに見せてあげたくて」
緑の髪の女「そこの君。修道士長さまがそう言ってたって村のみんなに伝えてきてちょうだい。ちゃんと家を燃やすよう伝えなさい…。王子、大変失礼いたしました」
そして女は跪いた。
エミリ「ねぇ、なんか村中焦げ臭くない?」
フィーネ「あれ、見て!あれは火事よ。」
マリア「火事⁉大変じゃないですか! 消防隊員はいないのかしら!」
レイ「おいおいおーい!勇者殿よぉ。自慢の正義感でパパッと解決しろよ。俺は運転で疲れちまってんだ。疲れてなけりゃちょちょいのちょいだってのによぉ」
フィーネ「ちょちょいでアンタを片付けてやろうかしら。それで、アルフレド、どうする?」
村の女性「はぁ、はぁ……、どこ行っても火事なの。誰か修道院に駆け上がって、そこの水門を開いてくれないと、消化活動も碌にできないって……。誰か、体力自慢で山上まで駆け上がれる人、いないかしら……」
マリア「レイ、車で行ってきてー」
レイ「はぁ? この村に車が通れる道があるわけねぇだろ。自慢のドリフトかましたいだけど、キャッツアイもあるっつーし」
マリア「へー、そうなんだー。キャッツアイなんだー。じゃあ、勇者様! 世界の平和を守るためですもの!大好きな大好きなマリアの勇者様。ここはマリアがいっちゃうね!」
フィーネ「そういうの、いいから。とにかく状況把握。全員で向かうわよ。レイ、アンタも。アンタとエミリの力で水門を無理やりこじ開けて」
レイ「仕方ないなぁ、エミリ。俺と門出を、一緒に新しい門をあけようぜ」
エミリ「きもい、顎しゃくれてるし…。下品なこというときは絶対顎しゃくれてるよねー。運転手さんって」
レイ「違うだろうがぁ。俺様が勇者かもしねぇだろぉ。ドラゴニアの血統が疼くぜ」
エミリ「まーた、なんか言ってる」
アルフレド「レイ、分かった、分かった。レイも勇者の一人だし。でも、今はそれどころじゃない。ユーノが向かったかもしれない。修道院の水門に全員で向かうよ!」
そして勇者たちは駆け上がった。
流石に体力に優れているのか、10分もかからなかった。
本当に全力疾走だったので、皆、はぁはぁと息を整えている。
そして勇者は門の前に立っていた女に話しかけた。
アルフレド「水門はどっちですか?」
修道女「水門……。あぁ、水門娘ね。緑の髪の子が中にいるわ。その子に聞いてちょうだい」
勇者一行は鍵を持つ緑の髪の子を探し、修道院に入ってみた。
ただ、そこで五人は見てしまった。
五人の顔がアップに切り替わる。
最後にちょこっとだけレイが一瞬映ったが、悪意のある演出で彼の顔は一瞬、しかも見切れている。
そして場面転換され、奇妙な光景が映し出される。
アルフレド「ユーノ?ユーノ!」
???「また君?ボクはユーノじゃなくてユーリだよ。ユーノ、ここに光の女神様降臨されたんだって」
ユーノ「ここ?ううん、たぶん違う。もっと奥」
ユーリ「行ってみようか。さ、ボクに掴まって」
ユーノ「…うん」
アルフレド「ユーノ‼そいつから離れろ‼」
祭壇の奥でユーノとユーノらしき二人を見つけた勇者は叫ぶが
ユーノ「ユーリ…」
ユーリ「うん。一緒にいこっか」
アルフレド「ユー…ノ…?」
ユーノはユーリに寄り添って、ユーリはユーノを軽く抱きしめ、奥へ向かう。
その前に立ちふさがるのは緑の髪の女だった。
フィーネ「アル、駄目」
アルフレド「でも‼」
メタファーか何かか、奥の二人と同じく、瓜二つの女たち。
だが、何かを察したフィーネは、追いかけようとする勇者を止めた。
フィーネ「ユーノはちゃんと生きていた。先にこっちよ。あの女もそうだし、水門でしょ」
アルフレド「う…、うん」
エミリ「アンタたち、双子の修道女か何か?今、村で火事が大発生しているんだよ?」
マリア「分かってるでしょ。水門の鍵を寄越しなさい」
ソフィア1「え、ええええ、あなた……誰? たす……助けて!水門の鍵は私が持ってます。あの…、マーサ様を…、マーサ様を助けて!」
ソフィア2「ゆ、勇者様ですか? 村でも何か起きているんですか? 私…、…どうしたら……」
レイ「なんだ、そのおばさん。倒れてるみたいだが」
ソフィア1「あの人に襲われたんです。あの人が突然…」
勇者アルフレドは混乱していた。
勿論、仲間たちも困惑していた。
下は大火事、上は殺戮現場。
そして同じ顔をした少女が二人。
そこで、アルフレドは違う人物の声を聞いた。
アズモデ「おや、またまた趣味が悪いねぇ。エルザは村を焼くことしか興味がないのかい?」
マリア「あ、あいつは…。勇者様、あの魔族、あいつですよ!」
アルフレド「またお前か。ユーノを攫ったアズモデ、また、お前の仕業か!」
勇者パーティはあの悪魔を知っている。
けれど悪魔は勇者など、まるで眼中がないように緑の髪の少女と話し続ける。
アズモデ「王子は?」
エルザ「最奥に向かわれたわ。一体どういうこと?」
アズモデ「さぁね。あの方のお考えは僕にもさっぱり。さて、光の勇者アルフレド。僕はこういうのは趣味じゃないんだ。だから今回も僕はやっていない。それにしてもエルザ。僕は君の本来の姿の方が好きなんだよねぇ。エルザは美人だからねぇ…。だから僕は本当の君に戻って欲しいんだ。変化魔法!うーん、僕っててんさーい!」
すると、年老いた修道女を抱きかかえる少女の姿が濃い紫色の髪、褐色の肌、紫の唇、そして羊のツノを持つ魔族の姿へと変わる。
そして背中からズバッと音を立てながらコウモリの羽が生えた。
エルザ「美人はその通りだけどね。まぁ、いいわ。どうせ殺すし……、その美人で美しい羊のツノの少女も…って、違うし‼あたいそっちじゃないから!あたい舐めてると、あんただって」
アズモデ「え……、そっちだったのぉ?うーん、やるじゃないかぁ。なんていうか化けるの上手いね。んじゃ、勇者くん、健闘を祈ってるよ。エルザ、まだまだこの勇者は青い。これでは魔王様さえ楽しませることができなんじゃないかなぁ。……君の役目は君の為だけじゃない。それだけは忘れないように。んじゃねー!」
エルザ「分かってるわよ、そんなこと。偉そうに……。あたしは軽く遊んであげるだけ」
アズモデは前のように姿を消した。
そしてソフィアの皮を被ったエルザは恭しく、勇者に一礼した。
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