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異世界歌姫は今日も自由!  作者: ザナトス


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第6話 初めての依頼

冒険者証を受け取った後も。

カナタはしばらくそれを眺めていた。

金属製の小さなプレート。表面には自分の名前。

そして冒険者ギルドの紋章。特別高価なものには見えない。

けれど。カナタにとっては宝物みたいなものだった。

「冒険者だぁ……」

もう一度呟く。嬉しい。かなり嬉しい。前世では普通の高校生だった。学校へ行き。授業を受け。友達と話し。

放課後は神社で歌う。そんな毎日だった。

それはそれで楽しかった。

でも。冒険者ではなかった。

当然だ。日本に冒険者ギルドは存在しない。

だから今。自分が本当に異世界へ来たのだと実感していた。

「カナタさん?」

受付嬢の声で我に返る。

「あ、ごめん!」

慌てて冒険者証をしまう。受付嬢は少し笑った。その様子があまりにも嬉しそうだったからだ。

「初めての登録でしたか?」

「うん!」

「そんな気がしました」

ですよね。とカナタは思った。かなり分かりやすかった自覚がある。

「ちなみに」

受付嬢が続ける。

「依頼を受ける前に少し説明を聞きますか?」

「聞く!」

即答だった。異世界初心者である。知らないことだらけだ。聞けることは聞いておきたい。受付嬢は頷く。

「まず冒険者にはランクがあります」

「おおー」

異世界っぽい。カナタの目が輝く。

「登録直後は見習いです」

「見習い!」

「そこから実績を積み、昇格試験を受けてランクアップしていきます」

なるほど。ゲームみたいだ。少しワクワクする。

「強い人は?」

「上級冒険者ですね」

「ドラゴン倒せる?」

「倒せます」

「すごい!」

カナタが感動する。受付嬢は苦笑した。普通はそこで感動するのだろうか。

「ちなみに王都アウレリアには上級冒険者も何人かいますよ」

「へぇー」

カナタは素直に感心した。まだ会ったことはない。

でもいつか会うかもしれない。そんなことを考えるだけで楽しかった。

説明は続く。依頼の受け方。報酬の受け取り方。危険な依頼について。思っていたよりしっかりしていた。

そして。カナタはある事実に気付く。

「冒険者って大変なんだね」

「大変ですよ」

受付嬢は即答した。命懸けなのだから当然である。

カナタは少しだけ背筋を伸ばした。楽しそう。

だけど。遊びではない。それは理解できた。説明が終わる。

受付嬢は掲示板を指差した。

「それでは依頼を選んでみてください」

「はい!」

元気よく返事をして向かう。大きな掲示板だった。依頼書がびっしり貼られている。想像以上だった。

「うわぁ……」

圧倒される。片っ端から読んでいく。

【薬草採取】

【荷物運搬】

【街道整備】

【迷子猫捜索】

「猫!」

思わず反応した。可愛い。ちょっとやりたい。

さらに見る。

【ゴブリン討伐】

【森狼討伐】

【護衛依頼】

【採掘補助】

色々ある。本当に色々ある。見ているだけで楽しい。まるで宝探しだった。

「これ全部できるのかな」

そう呟く。その時だった。

後ろから声が聞こえた。

「新人か?」

振り返る。大柄な男だった。筋肉が凄い。斧も大きい。どう見ても強そうだった。

「うん!」

「見てりゃ分かる」

男は笑った。悪い人ではなさそうだ。

「初依頼なら薬草採取にしとけ」

「これ?」

カナタは依頼書を指差す。男は頷いた。

「森に入るだけだ」

「簡単そう!」

「まぁな」

ただし。と男は続ける。

「魔物には気を付けろ」

「魔物かぁ」

草原で会った狼を思い出す。吹っ飛んでいった狼を。

男は知らない。もし知っていたらそんな心配はしなかっただろう。

「ありがとう!」

「おう」

男は手を振る。新人を見るのは嫌いじゃない。

特に。こんな明るい新人は珍しかった。

カナタは薬草採取の依頼書を持って受付へ戻る。

「これ!」

受付嬢が確認する。そして少し安心したような顔になった。

「良い選択ですね」

「そうなの?」

「見習い向けですから」

なるほど。やっぱり初心者用らしい。

「場所は街の南にある森です」

地図を見せてもらう。思ったより近い。歩いて行けそうだ。

「薬草はこの葉の形です」

見本も見せてもらう。ちゃんと覚える。仕事なのだから適当は良くない。

「採取したらこちらへ持ってきてください」

「うん!」

準備完了。依頼書を受け取る。初依頼である。なんだか胸が高鳴る。

異世界初日。王都アウレリア。冒険者登録。そして初依頼。

朝から考えると凄い一日だった。

「よーし!」

ギルドを出る。

太陽はまだ高い。時間は十分ある。まずはお金を稼ごう。

それから美味しいご飯だ。カナタは満面の笑みを浮かべた。

その背中を見送りながら。

受付嬢は小さく笑う。

「無事に帰ってくると良いですね」

しかし。近くで聞いていた大柄な冒険者は首を傾げた。

なぜだろう。あの少女が危険な目に遭う姿が。

まったく想像できなかった。

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