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異世界歌姫は今日も自由!  作者: ザナトス


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第47話 頑固な鍛冶師

翌日。

カナタは朝から上機嫌だった。

「工房街だー!」

宿を飛び出しそうな勢いである。ルークは苦笑しながら荷物を持つ。エマも少し笑っていた。

そして。

待ち合わせ場所にはフィオナの姿もあった。今日は王女ではない。いつものフィオだった。

「おはようございます!」

「おはよー!」

カナタが元気よく手を振る。その隣にはミリアもいた。

「私も行きます!」

なぜか気合十分だった。

「なんで?」

「カナタさんが変な武器を選ばないようにです!」

「失礼だなぁ」

だが。ルーク達は全員同じことを考えていた。たぶん必要だと。そんなこんなで。一行は工房街へ向かう。

王都アウレリアの南区画。そこは職人達の街だった。近付いただけで空気が変わる。

鉄を打つ音。木を削る音。職人達の怒鳴り声。

熱気。活気。市場とはまた違う賑わいだった。

「すごーい……」

カナタは辺りを見回す。目が輝いていた。

武器屋。防具屋。装飾品店。革細工。魔道具。

何でもある。

見ているだけで楽しい。

「迷子になるなよ」

「ならないよ!」

言った直後。違う店へ向かいそうになる。ルークが首根っこを掴んだ。

「なるじゃねぇか」

「えへへ」

全然反省していなかった。

やがて。工房街の中心部へ到着する。そこにはひときわ大きな建物があった。

黒い煙突。巨大な工房。入口の看板には力強い文字が刻まれている。

《ガルド鍛冶工房》

フィオナが説明する。

「王都で一番有名な工房です」

「へぇー!」

「王家の装備も作っています」

カナタの目がさらに輝いた。なんだか凄そうだ。中へ入る。

熱気が押し寄せてきた。炉の炎。金属の匂い。

職人達が忙しそうに働いている。

その中央。大きな金床の前に。一人のドワーフが立っていた。

背は低い。

だが。肩幅は広い。腕は丸太のように太い。立派な赤茶色の髭。職人そのものだった。

ガンッ!!

ハンマーが振り下ろされる。

火花が散る。

ガンッ!!

再び振り下ろされる。誰も話しかけない。工房全体がその作業を見守っていた。

そして。

最後の一撃。

ガキィン!!

甲高い音が響く。ドワーフは満足そうに頷いた。

「よし」

ようやく顔を上げる。その目がカナタ達を捉えた。

鋭い目だった。少し怖い。

「客か」

低い声。迫力がある。フィオナが一歩前へ出た。

「ガルドさん」

「王家の紹介状を――」

「見えてる」

即答だった。フィオナが少し困った顔になる。どうやらいつもこんな調子らしい。ガルドは視線を動かす。

ルーク。エマ。ミリア。

そして。

最後にカナタを見る。

数秒。沈黙。

そして。

「子供じゃねぇか」

第一声がそれだった。カナタが固まる。

「子供じゃないもん!」

「見た目は子供だ」

「むぅ……」

言い返せなかった。ガルドは腕を組む。

「紹介状の件は聞いてる」

「グリフォン討伐の褒美だろ」

「うん!」

「だがな」

そこで鼻を鳴らした。

「歌のお姉ちゃんに作る武器なんざねぇぞ」

静寂。フィオナが固まる。ミリアが固まる。エマが目を細める。

そして。

カナタが膨れた。

「むー!」

頬を膨らませる。完全に怒っていた。

「私だって戦ったもん!」

「ほう」

ガルドは全く信じていない。

「グリフォン倒したもん!」

「またまた」

信じていない。

「本当だもん!」

「歌でか?」

「違う!」

工房の職人達が笑いを堪えていた。完全に子供扱いである。カナタは悔しそうだった。そんな様子を見ていたルークがため息を吐く。

そして。

一言だけ言った。

「ガルド」

「あ?」

「グリフォンに決定打入れたのは本当にこいつだ」

ガルドが止まる。ミリアも頷く。フィオナも頷く。

エマも頷く。全員本気だった。笑っていない。

「……本当か?」

ガルドの声が少し変わる。ルークが頷いた。

「空飛んでな」

「グリフォンぶった斬った」

静寂。ガルドが固まる。工房も静かになる。数秒後。

ドワーフはカナタを見た。頭の先から足先まで。じっくりと。

そして。

初めて少しだけ笑った。

「面白ぇ」

職人の目だった。興味を持った目。

「詳しく聞かせろ」

その瞬間。カナタの顔がぱっと明るくなった。

どうやら。頑固な鍛冶師との付き合いが始まるらしい――。

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