↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界歌姫は今日も自由!  作者: ザナトス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/49

第37話 出発前夜

グリフォンは二体。その事実は王都へ大きな衝撃を与えた。

翌日。

冒険者ギルドは朝から騒がしかった。いつも以上に人が多い。依頼掲示板の前には人だかり。

酒場スペースでは冒険者達が真剣な表情で話している。普段の賑やかな空気とは違う。緊張感があった。

「すごい人だね」

カナタが辺りを見回す。

「当然だ」

ルークが答える。

「グリフォン二体だからな」

エマも頷いた。王都近郊。しかも番の可能性が高い。放置出来る相手ではない。

◇◇◇

ギルド中央。そこには大きな依頼書が貼られていた。

【緊急討伐依頼】

【風翼グリフォン討伐及び森の異常調査】

参加条件あり。

一定以上の実力を持つ冒険者。

またはギルド推薦者。

報酬も高額だった。周囲からざわめきが起こる。

「受けるのか?」

「当然だろ」

「俺達も参加する」

そんな会話が飛び交う。カナタも依頼書を見上げる。

グリフォン。まだ見たことはない。

だが。何となく気になっていた。

「森の異常調査もあるんだね」

ぽつりと呟く。

ルークが頷いた。

「ああ」

「普通じゃないらしい」

エマも続ける。

「魔物の動きがおかしい」

それは昨日も聞いた話だった。

ゴブリン。フォレストウルフ。ホーンボア。森全体が落ち着かない。まるで何かから逃げるように。

「……」

カナタは少し考え込む。風も騒がしい。森も騒がしい。何かが引っ掛かる。

だが。まだ答えは見えなかった。

◇◇◇

「カナタ!」

聞き慣れた声。振り返る。そこには金髪の少女がいた。

「フィオ!」

カナタが笑顔になる。フィオナだった。今日もお忍びらしい。シンプルな服装。だが隠しきれない気品がある。ルークとエマも軽く会釈した。

「こんにちは」

「こんにちは」

フィオナも微笑む。

そして。

すぐに依頼書へ目を向けた。表情が少し曇る。

「受けるんですか?」

その声は少し小さかった。心配している。そんな声だった。カナタはあっさり答える。

「たぶん!」

「たぶん……」

フィオナが困った顔をする。

「危険ですよね?」

「危険だな」

ルークが答えた。

「グリフォンだからな」

「……」

フィオナは少し黙る。

そして。カナタを見る。心配だった。友達だから。危険な場所へ行く。それが嫌だった。

だが。

カナタは笑う。いつも通り。

「大丈夫だよ!」

根拠は無い。全く無い。

だが。不思議と安心する笑顔だった。

「無理はしないでくださいね」

「うん!」

その返事が一番信用出来なかった。フィオナはため息を吐く。ルークとエマも同じ表情だった。

◇◇◇

昼過ぎ。

討伐隊の選抜が始まる。参加希望者は多い。

だが。全員が参加出来るわけではない。

実力。経験。連携。様々な条件が必要だった。カナタ達も呼ばれる。

「ルーク」

「はい」

「エマ」

「はい」

二人は問題なく通過。

そして。最後。

「カナタ」

名前が呼ばれる。ギルド職員達が少し顔を見合わせる。判断に迷っているようだった。実績はある。

だが。冒険者ランクはまだ高くない。

しかし。

ギルドマスターが口を開いた。

「参加許可だ」

周囲がざわめく。カナタ本人は首を傾げた。

「いいの?」

「推薦だ」

「誰の?」

ギルドマスターは少し考え。そして言った。

「ミリアだ」

カナタが振り向く。受付の奥。ミリアが微笑んでいた。

「頑張ってください」

「うん!」

元気な返事だった。

◇◇◇

夕方。解散。出発は明日の朝。王都北門集合。その知らせが伝えられる。カナタ達も宿へ戻ることになった。

帰り道。空が赤く染まっている。綺麗な夕焼けだった。

「緊張してるか?」

ルークが聞く。

「してない!」

即答だった。

「だろうな」

ルークは苦笑する。エマも小さく笑った。カナタらしい。

だが。その時。

一陣の風が吹く。夕焼けの空。北の森の方角。どこか寂しそうな風だった。

「……」

カナタが立ち止まる。風を見上げる。何かを伝えたいような。助けを求めているような。そんな不思議な感覚。

「どうした?」

「ううん」

カナタは首を振る。上手く言葉に出来ない。

ただ。胸の奥が少しだけ痛んだ。

◇◇◇

その頃。

王都から遠く離れた森の奥。巨大な翼が夜空を切り裂く。

風翼グリフォン。その片方だった。傷付いている。疲れている。

そして。

何かを守るように森の奥を見つめていた。黄金の瞳には敵意はない。あるのは焦り。そして不安。

まるで。

大切なものを失うことを恐れるような――。

翌朝。

カナタ達はまだ知らない。

この討伐が。ただの魔物討伐では終わらないことを。

そして。王都の未来を変える最初の一歩になることを――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。