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異世界歌姫は今日も自由!  作者: ザナトス


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第21話 初めての仲間

森を抜ける頃には。空は少しずつ夕暮れ色へ変わり始めていた。

薬草採取。そしてウルフとの戦闘。初めての共同依頼は予想以上に濃い一日になった。

「やっと見えてきたな」

ルークが前を指差す。遠くに王都アウレリアの城壁が見えていた。

高く大きな城壁。異世界へ来た日。初めて見た時は圧倒された。

だが今は違う。不思議と安心する。帰ってきた。

そんな気持ちになった。

「王都だー!」

カナタが嬉しそうに声を上げる。

ルークが笑う。

「まだ数日なのにな」

「でも帰ってきた感じする!」

「分かるかも」

エマも小さく頷いた。新人冒険者達にとって。王都は今の居場所だ。まだ知らないことばかり。

それでも。少しずつ馴染み始めている。三人は門を通る。

夕方の王都は賑やかだった。市場では片付けが始まっている。

屋台からは美味しそうな匂いが漂う。仕事帰りの人々。笑い声。馬車の音。街全体に活気があった。

「お腹空いたなぁ」

カナタが呟く。

「分かる」

ルークが即答する。

「すごく分かる」

エマまで同意した。戦闘もあった。森も歩いた。お腹が空かない方がおかしい。

「報告終わったら何か食べる?」

ルークが提案する。

「賛成!」

「私も」

すぐに決まった。そのまま三人は冒険者ギルドへ向かう。

扉を開く。いつもの光景。だが今日は少し違う。

三人とも達成感があった。共同依頼をやり遂げた。それだけで足取りが軽い。受付にはミリアがいた。

「お帰りなさい」

柔らかな笑顔。それだけで少し安心する。

「ただいま!」

カナタが元気よく答える。

「依頼終わったぞ!」

ルークも報告する。エマは採取した薬草を提出した。

ミリアは一つ一つ確認していく。

薬草の数。状態。依頼内容。問題は無い。

だが。途中で視線が止まった。

「戦闘がありましたか?」

三人が顔を見合わせる。

「分かるの?」

カナタが驚く。ミリアは苦笑した。

「服が少し汚れていますから」

確かにその通りだった。

ルークの袖。エマの靴。カナタの外套。

森での戦闘の跡が残っている。

「ウルフ三匹だった」

ルークが説明する。

「三匹ですか」

ミリアの顔が少し真面目になる。新人には決して楽な相手ではない。

「大丈夫だったんですか?」

「なんとかなった!」

カナタが胸を張る。その様子にミリアは少し安心した。

そして。

ルークとエマも笑っている。怪我も無い。無事に帰ってきた。それが一番だ。報酬が支払われる。

カナタは受け取った硬貨を見て目を輝かせた。

「増えた!」

「子供か」

ルークが笑う。

「だって増えた!」

「まあ分かるけどな」

ルークも初報酬の時は同じだった。エマも少しだけ笑っている。そんな三人を見て。ミリアは思った。

良い仲間になりそうだと。昨日までは知らない者同士。だが今日の依頼で距離が縮まった。冒険者には大切なことだった。

依頼を終えた三人はギルドを出る。そして近くの食堂へ向かった。木造の小さな店だった。冒険者達にも人気らしい。

「いただきます!」

料理が運ばれてくる。肉料理。スープ。焼きたてのパン。カナタの目が輝く。

「美味しそう!」

「食べる前から幸せそうだな」

ルークが呆れる。

だが。実際に食べると。もっと凄かった。

「おいしいー!」

幸せそうだった。本当に幸せそうだった。

ルークとエマは思わず笑う。見ているだけでこちらも楽しくなる。不思議な子だった。

食事をしながら色々な話をする。好きな食べ物。冒険者になった理由。将来の夢。他愛もない話ばかり。それなのに楽しい。

カナタはふと思う。異世界へ来た日。自分は一人だった。

知らない世界。知らない街。知らない人達。少しだけ不安だった。

でも今は違う。

ミリアがいる。ルークがいる。エマもいる。知っている人が増えた。

笑い合える相手がいる。それが嬉しかった。

気付けば外は暗くなっていた。食堂を出る。夜風が心地良い。

「今日は楽しかったな」

ルークが言う。

「うん!」

カナタは即答した。エマも静かに頷く。

今日一日で。ただの共同依頼の仲間だった三人は。少しだけ友達に近付いていた。

別れ際。

「また依頼行こうな」

ルークが言う。

「行く!」

「私も」

約束は簡単だった。けれど。

その言葉はどこか嬉しい。三人は手を振って別れる。カナタも宿へ向かった。

木漏れ日の亭。部屋へ戻る。ベッドへ腰掛ける。

今日も色々あった。

森。戦闘。報酬。友達。異世界へ来てから。毎日が新しいことだらけだった。

そして。そんな一日を思い返していた時だった。

ふわり。

歌紡ぎのポシェットが淡く光る。星の装飾が。昨日より少しだけ輝いて見えた。ほんの僅かな変化。カナタは気付かない。

だが。確かに変わっていた。歌を届ける少女。その在り方が。

少しずつ形になり始めていた。王都アウレリアの夜。少女の物語は。まだ始まったばかりだった。

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