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異世界歌姫は今日も自由!  作者: ザナトス


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第19話 初めての仲間たち

「今日はこれかな!」

カナタが指差したのは共同依頼だった。王都近郊の森で行う薬草採取。難易度は低い。

だが新人同士で協力する訓練も兼ねている。

「共同依頼ですか?」

受付のミリアが依頼書を見る。

「うん!」

「珍しいですね」

「やってみたい!」

即答だった。ミリアは少し考える。危険は少ない。新人向けだ。問題は無いだろう。

「分かりました」

許可を出す。

すると。

近くにいた二人の新人冒険者が反応した。

「あれ?」

「もしかして昨日の……」

カナタは嫌な予感がした。今日はこの流れが多い。案の定だった。

「広場で歌ってた子!」

「あ、本人だ!」

見つかった。また見つかった。カナタは思わず顔を覆う。

恥ずかしい。とても恥ずかしい。

「そんな有名じゃないから!」

「有名だよ!」

即答だった。

ミリアが少し笑う。もう広場の歌の子で定着し始めている。

カナタだけが気付いていない。二人の新人冒険者はカナタへ近付いた。

一人は茶色の短髪の少年。年齢は十八歳くらい。元気そうな顔をしている。

もう一人は赤髪の少女。こちらは十七歳くらいだろうか。勝気そうな目をしていた。

「俺はルーク!」

少年が胸を張る。

「新人冒険者だ!」

元気だった。カナタに少し似ている。

「私はエマ」

赤髪の少女も名乗る。こちらは落ち着いている。だが面倒見は良さそうだった。

「カナタ!」

カナタも笑顔で返す。するとルークが笑った。

「知ってる!」

「なんで!?」

「昨日聞いたから!」

「うぅ……」

またそれだ。エマまで頷く。

「確かに上手かった」

「エマまで!?」

逃げ場が無かった。ミリアは笑いを堪えている。完全に面白がっていた。

そんな様子を見ながら。共同依頼の手続きは進んでいく。

やがて三人は王都を出発した。

青空が広がっている。天気は最高だった。街道を歩く。王都の外へ出る。

そして近郊の森へ向かう。

「そういえばさ!」

ルークが歩きながら話し始めた。

「カナタって冒険者になってどれくらい?」

「数日!」

「えっ」

ルークが固まる。エマも固まる。

「数日?」

「うん!」

「広場で歌ってたのに?」

「歌は関係なくない?」

それもそうだった。三人とも笑う。少しずつ空気が和らいでいく。森へ到着する頃には。すっかり打ち解けていた。

薬草採取は順調だった。むしろ順調過ぎた。

「これかな?」

カナタが薬草を見付ける。

「あってる」

エマが確認する。

また見付ける。また正解。

また見付ける。また正解。

ルークが呆れ始めた。

「見付けるの早くない?」

「そう?」

カナタは首を傾げる。本人に自覚は無い。

だが。神様から与えられた力。感覚は普通の人より優れている。だから自然と見付けてしまう。

昼頃には依頼分の薬草が集まっていた。

「終わったー!」

カナタが両手を上げる。ルークも笑う。

エマも少しだけ笑顔になっていた。

休憩することになった。森の木陰。三人で座る。

風が気持ち良い。静かな時間だった。

その時。

ルークが言った。

「なあ」

「ん?」

「歌ってくれない?」

カナタが固まる。エマも少し興味ありそうな顔をしている。

「なんで!?」

「聞きたいから!」

「今ここで!?」

「今ここで!」

即答だった。カナタは困る。

だが。

二人の期待した目を見る。

少しだけ考える。

森は静かだ。人もいない。

広場みたいに大勢集まることもない。

たぶん。

きっと。大丈夫だろう。

「少しだけね」

観念したように言う。ルークが喜ぶ。エマも少し嬉しそうだった。

そして。

カナタは小さく歌い始めた。広場の時ほど大きくはない。本当に小さな歌。

けれど。森の風に乗るその歌声は。やはり優しかった。ルークは自然と笑顔になる。エマも静かに聞いている。

ほんの数分。短い歌だった。

だが。歌が終わった時。二人とも不思議と心が軽くなっていた。

「……やっぱすごいな」

ルークが呟く。

「うん」

エマも頷く。カナタは首を傾げる。

何がだろう。よく分からない。

だが。二人が笑っている。それだけで嬉しかった。

その時。

肩に掛けた歌紡ぎのポシェットの星が。ほんの僅かに輝いた。

誰も気付かない。けれど確かに。歌はまた一つ。誰かの心へ届いていた。

そしてカナタ自身も気付かぬまま。歌を届ける少女は。

少しずつ前へ進み始めていた。

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