表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静かに暮らしたいのに国家ができた件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/51

第49話「帰る理由」

 最初に止まったのは、“足”だった。


---


 アルカディア外縁。


---


 撤退命令は、出ている。


---


 確かに。


---


 はっきりと。


---


「各部隊、順次撤退――」


---


 声が響く。


---


 だが。


---


 動かない。


---


 誰も。


---


 一歩も。


---


「……なんで動かない」


 指揮官が低く言う。


---


 兵は、立っている。


---


 武器も持っている。


---


 命令も聞いている。


---


 だが。


---


 足が、出ない。


---


「聞こえなかったか?」


---


「聞こえてます」


---


「なら動け」


---


 一拍。


---


「……動きたくない」


---


 静かな返答。


---


 だが。


---


 重い。


---


 別の場所でも。


---


「撤退だ、戻るぞ」


---


「……ここ、いいんですよ」


---


「何がだ」


---


「全部」


---


 さらに別の場所。


---


「補給線を整えて――」


---


「ここでいいんじゃないか?」


---


 崩れている。


---


 軍の論理が。


---


 完全に。


---


 アルカディア内側。


---


 主人公は、その様子を見ていた。


---


「……帰れ」


---


 誰も動かない。


---


「帰れって」


---


 聞いている。


---


 だが。


---


 聞かない。


---


 ガルドが笑う。


---


「無理だな」


---


「帰らせろ」


---


「帰る理由がねえ」


---


「あるだろ」


---


「どこに」


---


 一拍。


---


「ここよりいい場所か?」


---


 言葉が、止まる。


---


 ミアが小さく言う。


---


「……戻ったら、また争い」


---


「戻れ」


---


「戻りたくない」


---


 ルルナは静かに言う。


---


「満たされています」


---


「やめてくれ」


---


 エルドは周囲を見る。


---


「……士気が違います」


---


「上げるな」


---


「戦う方向ではありません」


---


「やめてくれ」


---


 レイナが記録する。


---


「外部勢力、滞在傾向」


---


「やめてくれ」


---


「定住化の兆候あり」


---


「やめてくれって!!」


---


 その時。


---


 外の指揮官が、頭を抱える。


---


「……なんでだ」


---


 答えは、単純だった。


---


 ここは。


---


 苦しくない。


---


 足りている。


---


 争わなくていい。


---


 壊さなくていい。


---


 奪わなくていい。


---


 それだけで。


---


 帰る理由が、消える。


---


 主人公は、もう一度言った。


---


「帰れ」


---


 静かに。


---


 強く。


---


 だが。


---


 誰も動かない。


---


 むしろ。


---


 一人が座る。


---


 さらに一人。


---


 武器を置く。


---


 空を見る。


---


 風を感じる。


---


 完全に。


---


 “居る”選択をしている。


---


「……なんでこうなる」


---


 誰も答えない。


---


 答えは、分かりきっている。


---


 ここが。


---


 “いい場所”だから。


---


 それだけだ。


---


 ガルドが、肩をすくめる。


---


「終わったな」


---


「終わってない」


---


「いや、終わりだ」


---


 ミアが苦笑する。


---


「……勝ちすぎ」


---


「勝ってない」


---


 ルルナは静かに言う。


---


「導かれています」


---


「やめてくれ」


---


 エルドは短く言う。


---


「守ります」


---


「守るな」


---


 レイナがまとめる。


---


「外部勢力、撤退失敗」


---


「言うな」


---


 一拍。


---


「定住開始」


---


「言うなって!!」


---


 主人公は、ゆっくりと座り込む。


---


「……帰れよ」


---


 その言葉は。


---


 もう。


---


 誰にも届かない。


---


 その日。


---


 アルカディアから――


---


 “帰る理由”が消えた。


---


 残ったのは。


---


 ここに居たいという、単純な欲求だけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ