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静かに暮らしたいのに国家ができた件  作者: 南蛇井


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第45話「戦争の気配」

 最初に変わったのは、“空気”だった。


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 重い。


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 アルカディア外縁。


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 風は吹いている。


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 だが。


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 流れない。


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 淀んでいる。


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「……来るな、これ」


 主人公は、ぼそりと呟いた。


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 見えない。


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 だが。


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 感じる。


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 いつもの人の気配ではない。


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 もっと。


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 固い。


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 まとまっている。


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 意思がある。


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 エルドが低く言う。


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「軍です」


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「やめてくれ」


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「複数」


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「やめてくれって」


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 遠く。


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 地平の向こう。


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 動いている。


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 整列。


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 統制。


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 数。


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 そして。


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 止まる。


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 距離を取って。


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 観測する。


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 踏み込まない。


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 だが。


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 引かない。


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「……なんで止まってる」


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「判断しています」


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「何を」


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「損かどうかを」


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「やめてくれ」


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 ガルドが小さく笑う。


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「賢いな」


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「よくない」


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「突っ込んできた方が楽だ」


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「やめてくれ」


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 その時。


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 ミアが走ってきた。


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 息が荒い。


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 顔色が悪い。


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「……来てる」


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「見えてる」


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「違う」


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 首を振る。


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「中身」


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 一拍。


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「連合」


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 空気が、さらに重くなる。


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「どことどこだ」


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「王国と――」


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 言い淀む。


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「他国」


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「やめてくれ」


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「対抗勢力も動いてる」


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「やめてくれって」


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 つまり。


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 片方ではない。


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 複数。


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 そして。


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 互いに牽制しながら。


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 ここを見ている。


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「……なんでまとまる」


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 ガルドが答える。


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「価値がでかすぎる」


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「やめてくれ」


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「単独じゃ取れねえ」


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「取るな」


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 ミアが続ける。


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「貴族同士でも話が進んでる」


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「やめてくれ」


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「共通認識がある」


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「何だ」


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 一拍。


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「放置できない」


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 沈黙。


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 それが、すべてだった。


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 レイナが静かに言う。


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「軍事圧力、増加」


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「やめてくれ」


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「交渉から威圧へ移行」


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「やめてくれって」


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 エルドが前を見据える。


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 目が変わる。


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「……来ます」


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「来るな」


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「時間の問題です」


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「やめてくれ」


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 外では。


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 旗が立つ。


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 数が増える。


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 陣が組まれる。


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 完全に。


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 “準備”だ。


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 まだ始まっていない。


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 だが。


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 もう、止まらない。


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 主人公は、ゆっくりと座り込む。


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「……なんでこうなる」


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 誰も答えない。


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 答えは、もう見えている。


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 価値。


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 それだけで、戦争は起きる。


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 ミアが小さく言う。


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「……止めないと」


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「止めろ」


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 エルドが言う。


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「守ります」


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「守るな」


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 ガルドが笑う。


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「始まるな」


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「やめてくれ」


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 レイナが静かに告げる。


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「開戦確率、上昇」


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「やめてくれ」


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 その日。


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 アルカディアは――


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 戦争の直前に立った。


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 まだ始まっていない。


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 だが。


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 誰もが理解している。


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 次は。


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 衝突だ。


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