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静かに暮らしたいのに国家ができた件  作者: 南蛇井


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第44話「拡張の限界突破」

 最初に足りなくなったのは、“場所”だった。


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 アルカディア外縁。


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 壁のように、建物が並んでいる。


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 その外に。


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 さらに人がいる。


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 入りきらない。


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 収まらない。


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 押し出されるように。


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 外に溢れている。


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「……はみ出てる」


 主人公は、現実を見て言った。


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 中は、もう詰まっている。


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 区画は限界。


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 動線も限界。


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 余白は、どこにもない。


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 それでも。


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 人は来る。


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 止まらない。


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「やめてくれ」


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 エルドが静かに言う。


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「収容限界を超えています」


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「減らせ」


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「無理です」


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 即答。


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 ガルドが肩をすくめる。


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「外に作るしかねえな」


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「やめてくれ」


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「中に入らねえなら、外だ」


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「やめてくれ」


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 ミアが周囲を見る。


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「……すでに出来てる」


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 外側。


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 簡易の建物。


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 仮設の市場。


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 小さな拠点。


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 勝手に、できている。


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 広がっている。


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「やめてくれ」


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 レイナが、静かに図面を広げる。


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 だが。


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 今度は違う。


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 広い。


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 大きい。


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 中心だけではない。


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 周囲まで、描かれている。


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「都市圏構想を提案します」


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「やめてくれ」


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「中心部の負荷を分散」


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「やめてくれ」


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「周辺領域を機能別に再配置」


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「やめてくれ」


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「生産区、居住区、防衛区の外延化」


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「やめてくれって!!」


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 だが。


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 止まらない。


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 理由は単純だ。


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 もう。


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 内側だけでは、足りない。


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 外を使うしかない。


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 線が引かれる。


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 境界が決まる。


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 外が。


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 “内側”になる。


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 バルドが笑う。


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「やっと広く使えるな」


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「使うな」


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「詰まりすぎだ」


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「詰まれ」


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 エルドが言う。


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「防衛ラインも拡張されます」


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「広げるな」


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 ミアが小さく呟く。


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「……これ、もう一つの町じゃない」


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「やめてくれ」


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 ルルナは、静かに言う。


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「広がるのではなく、繋がっています」


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「やめてくれ」


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 ガルドが笑う。


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「いいな」


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「よくない」


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「点じゃねえ」


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 一拍。


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「面になる」


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「やめてくれ」


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 その通りだった。


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 点ではない。


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 一つの場所ではない。


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 広がる。


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 繋がる。


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 機能する。


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 全体として。


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 主人公は、ゆっくりと外を見た。


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 人がいる。


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 建物がある。


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 道が伸びる。


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 さらにその先にも。


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 また人がいる。


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 止まらない。


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「……広げるな」


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 誰も止めない。


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 止められない。


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 すでに始まっているから。


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 レイナが静かに言う。


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「拡張、開始」


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「やめてくれ」


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 その言葉で。


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 決まる。


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 アルカディアは。


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 もう。


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 一つの都市ではない。


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 周囲を取り込み。


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 外を内に変え。


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 広がり続ける。


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 その日。


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 アルカディアは――


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 “国”に近づいた。


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 静かに。


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 確実に。


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 戻れない形で。


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