第33話「拡張圧力」
最初に溢れたのは、“人”だった。
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森の入口。
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列ができている。
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静かに。
だが、確実に。
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「……何これ」
主人公は、完全に嫌そうな顔で言った。
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並んでいるのは。
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商人。
職人。
巡礼者。
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そして、よく分からない人たち。
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「やめてくれ」
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エルドが横で言う。
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「増えています」
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「止めろ」
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「止まりません」
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レイナが即答する。
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「やめてくれって」
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「流入圧力が臨界に達しています」
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「言うな」
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その時。
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「おい」
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バルドが現れる。
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顔は不機嫌。
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「足りねえ」
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「何が」
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「全部だ」
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「やめてくれ」
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バルドは指を折る。
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「家」
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「作るな」
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「工具」
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「増やすな」
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「人手」
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「入れるな」
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「土地」
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「広げるな」
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「無理だ」
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即答だった。
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「無理じゃない」
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「無理だ」
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バルドは地面を指す。
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「もう詰まってる」
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見れば分かる。
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家が増えている。
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畑が広がっている。
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道ができている。
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そして――
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人が多い。
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明らかに。
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レイナが補足する。
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「人口増加率、加速中」
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「やめてくれ」
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「供給と需要が拡張を要求しています」
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「やめてくれって!」
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その時。
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別の声が上がる。
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「水を分けてください!」
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「仕事ありますか!」
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「ここに住みたい!」
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声が重なる。
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止まらない。
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主人公は頭を抱える。
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「……なんでこうなる」
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ガルドが笑う。
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「簡単だ」
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「聞きたくない」
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「価値があるからだ」
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「やめてくれ」
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「人も、物も、金も」
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一拍。
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「全部集まる」
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「やめてくれって!!」
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ルルナの周りには、人がいる。
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祈る者。
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話を聞く者。
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涙を流す者。
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信仰も、増えている。
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エルドは外を見る。
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「防衛ラインが押されています」
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「押すな」
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ミアは、少し不安そうに言う。
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「……このままだと」
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「だと?」
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「外と中の境界が曖昧に」
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「やめてくれ」
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すべてが、膨張している。
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人。
物。
信仰。
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止まらない。
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バルドが、再び言う。
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「だから、広げる」
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「やめろ」
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「区画増やす」
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「やめろって」
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「設備作る」
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「やめろ」
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「受け入れる」
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「やめろって!!」
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だが、現実は変わらない。
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すでに足りていない。
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止めれば、詰まる。
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詰まれば、崩れる。
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レイナが静かに結論を出す。
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「拡張は不可避です」
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「やめてくれ」
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主人公は、ゆっくりと座り込む。
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「……ただ暮らしたいだけなんだが」
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その願いは、今日も同じ。
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だが。
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この場所は、もう違う。
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止まれない。
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広がるしかない。
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外から押され。
内から求められ。
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膨らみ続ける。
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その日。
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アルカディアは――
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“拡張する存在”になった。
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意思とは無関係に。




