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静かに暮らしたいのに国家ができた件  作者: 南蛇井


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第32話「中立という戦略」

 その結論は、あまりにも単純だった。


---


「決定しました」


---


 レイナが言った。


---


 アルカディア中央。


---


 即席の“場”。


---


 王国。


 商会。


 宗教。


---


 全てが揃っている。


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 誰もが、答えを求めていた。


---


 その中で。


---


 レイナは、淡々と続ける。


---


「本圏は――」


---


 一拍。


---


「完全中立を宣言します」


---


 沈黙。


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 理解が、遅れる。


---


「……は?」


---


 最初に声を出したのは、王国側だった。


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「中立?」


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 商人が眉をひそめる。


---


「何言ってやがる」


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 宗教側も、困惑する。


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「どこにも属さない、ということですか」


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「はい」


---


 即答。


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 そして、続ける。


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「どの勢力にも属しません」


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「……」


---


「同時に、全ての勢力と関係を維持します」


---


「……は?」


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 意味が通らない。


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 いや。


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 通っているが――


---


 受け入れられない。


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 主人公がぼそりと呟く。


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「それでいいじゃん」


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 全員が振り向いた。


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「よくない」


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 王国が即座に否定する。


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「統治外の存在は認められない」


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「帰れ」


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 商人が口を挟む。


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「中立だと?独占しないってことか?」


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「しない」


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「ふざけるな」


---


 宗教側も続く。


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「聖域として確立すべきです」


---


「しません」


---


 即答。


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 すべてを拒否する。


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 すべてと関わる。


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 矛盾しているようで――


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 成立している。


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 レイナは、淡々と説明する。


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「交流は行います」


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「やめてくれ」


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「物資交換、情報交換」


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「やめてくれって」


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「ただし、支配は受けません」


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「やめてくれ」


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「干渉も制限します」


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「やめてくれって!!」


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 完全に線を引いていた。


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 だが――


---


 その線は。


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 全員にとって、都合が悪い。


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 王国が低く言う。


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「それでは管理できない」


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「管理されません」


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 商人が舌打ちする。


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「利益が安定しねえ」


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「制限されます」


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 宗教が首を振る。


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「信仰の拡大が妨げられる」


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「制御します」


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 全員が、不満を持つ。


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 だが。


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 否定しきれない。


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 理由は、一つ。


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 ここが――


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 強いからだ。


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 軍事。


 経済。


 信仰。


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 すべてが揃っている。


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 そして――


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 誰も、奪えない。


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 だから。


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 認めるしかない。


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 だが。


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 納得は、できない。


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 主人公は、ぼそりと呟く。


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「それでいいじゃん……」


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 レイナが答える。


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「最適解です」


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「やめてくれ」


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 ガルドは笑う。


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「面倒だな」


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「やめてくれ」


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「でも、面白い」


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「やめてくれって」


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 エルドは静かに立つ。


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「守るべき形です」


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「守るな」


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 ミアは小さく言う。


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「……どこにも属さない場所」


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 その言葉には。


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 少しだけ、安堵があった。


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 ルルナは、祈る。


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「境界なき場……」


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「やめてくれ」


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 すべてが、決まった。


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 だが。


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 何も解決していない。


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 むしろ。


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 全員が、不満を抱えたまま。


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 残る。


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 主人公は、最後に言う。


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「帰れ」


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 誰も帰らない。


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 その日。


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 アルカディアは――


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 “中立”になった。


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 だが、それは。


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 平和ではない。


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 すべての勢力が。


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 納得していない状態。


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 つまり――


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 均衡した緊張。


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 壊れない。


---


 だが。


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 いつでも、壊れる。


---


 そんな状態だった。


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