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静かに暮らしたいのに国家ができた件  作者: 南蛇井


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第27話「商人戦争」

 最初に壊れたのは、“信用”だった。


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「……これ、本物か?」


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 市場の片隅。


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 並ぶ野菜。


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 見た目は似ている。


 むしろ、よくできている。


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 だが――


---


「味が違う」


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 誰かが呟く。


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「効果も、弱い」


---


 ざわめきが広がる。


---


「アルカディア産って聞いたぞ」


---


「いや、違うだろこれ」


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 疑い。


 不信。


---


 それが、じわじわと広がる。


---


 ――――――――――


---


「来たな」


---


 ガルドは、静かに言った。


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 その目は、笑っていない。


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「何がだよ」


 主人公は嫌そうに聞く。


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「商人戦争だ」


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「やめてくれ」


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 ガルドは机に紙を広げる。


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「偽物が出回ってる」


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「やめてくれ」


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「意図的だ」


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「やめてくれって」


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 レイナが補足する。


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「品質差異を確認」


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「言うな」


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「ブランド価値の毀損が発生しています」


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「言うなって!」


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 ガルドは、低く笑う。


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「分かりやすいな」


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「何がだよ」


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「潰しに来てる」


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「やめてくれ」


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 紙を叩く。


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「他商会だ」


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「やめてくれって」


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「独占させる気はねえ」


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「させなくていい!」


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 だが、止まらない。


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「価格も動いてる」


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「やめてくれ」


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「下げてきた」


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「なんでだよ」


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「信用を壊すためだ」


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 一拍。


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「安くして、価値を落とす」


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「やめてくれ」


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 主人公は頭を抱える。


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「なんでそんなことするんだよ」


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 ガルドは即答した。


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「儲けるためだ」


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「やめてくれ」


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 外では。


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 すでに動いていた。


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 偽物が流れる。


 価格が揺れる。


 情報が歪む。


---


 誰が本物か。


 何が正しいか。


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 分からなくなる。


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 レイナが静かに言う。


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「このままでは崩壊します」


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「もうしてる」


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 ガルドは立ち上がる。


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 その顔から、笑みが消える。


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「いい」


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「よくない」


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「やるか」


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「やるな」


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 一拍。


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 そして。


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「潰す」


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 静かな宣言。


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 空気が変わる。


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「やめてくれ!!」


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 だが、もう止まらない。


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 ガルドは指示を出す。


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「流通を絞る」


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「やめろ」


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「正規ルートだけにする」


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「やめろって」


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「印を徹底する」


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「やめろ」


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「偽物は叩く」


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「やめろって!!」


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 完全に戦争だった。


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 剣ではない。


 血でもない。


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 だが――


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 確実に、人を潰す戦い。


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 商人同士の。


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 見えない戦争。


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 エルドが小さく呟く。


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「……これは、戦だな」


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「戦うな」


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 バルドが腕を組む。


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「面倒だが、止まらねえ」


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「止めろ」


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 ルルナが静かに言う。


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「争いもまた、意味を生みます」


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「生むな」


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 すべてが、加速する。


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 市場は揺れる。


 価値はぶつかる。


 情報は歪む。


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 アルカディアという名前が。


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 奪い合われる。


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 主人公は、座り込む。


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「……ただ暮らしたいだけなんだが」


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 その願いは、いつも通りだった。


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 だが。


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 外では、もう止まらない。


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 商人たちが動く。


 資金が動く。


 策略が飛び交う。


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 そして、その日。


---


 一つの結論が生まれた。


---


「アルカディアを巡る争い」


---


 それは――


---


 “戦争”だった。


---


 静かで。


 見えなくて。


---


 だが、確実に壊す戦い。


---


 経済の中で。


---


 完全に始まった。


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