表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静かに暮らしたいのに国家ができた件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/51

第25話「見えない戦争」

 戦いは、音を立てない。


---


 剣も。


 血も。


---


 ここには、ない。


---


 だが――


---


 確実に始まっていた。


---


 森の外で。


---


「……アルカディア産はどこだ」


---


 市場で、声が飛ぶ。


---


「入荷は?」


「次はいつだ!」


---


 商人たちが集まる。


---


 だが、そこにあるのは。


---


 “物”だけではない。


---


 情報だ。


---


「効能があるらしい」


「疲労が消える」


「傷が治る」


---


 噂が広がる。


---


 誇張される。


---


 増幅する。


---


 そして――


---


「王家も注目している」


---


 価値が跳ね上がる。


---


 ――――――――――


---


「始まってるな」


---


 ガルドは笑っていた。


---


 アルカディアの一角。


---


 簡易な机。


 その上には、紙が並ぶ。


---


「何がだよ」


 主人公は嫌そうに聞く。


---


「見えない戦争だ」


---


「やめてくれ」


---


 ガルドは紙を叩く。


---


「これはな、もう“物”じゃねえ」


---


「野菜だろ」


---


「違う」


---


 一拍。


---


「“価値”だ」


---


「やめてくれ」


---


 ガルドは指を立てる。


---


「名前を売る」


---


「やめろ」


---


「アルカディアってだけで売れるようにする」


---


「やめろって!!」


---


 だが、止まらない。


---


「偽物が出る」


---


「出るな」


---


「だから、本物を定義する」


---


「やめてくれ」


---


「印をつける」


---


「やめろ」


---


「流通を絞る」


---


「やめろって!!」


---


 完全に戦略だった。


---


 その時。


---


「補足します」


---


 レイナが現れる。


---


「やめてくれ」


---


「外部情報の統制を開始しました」


---


「やめてくれって!」


---


 レイナは淡々と続ける。


---


「流通経路の把握」


---


「やめろ」


---


「情報源の限定」


---


「やめろって」


---


「誤情報の修正」


---


「やめてくれ!!」


---


 主人公は頭を抱える。


---


「なんでこうなる」


---


 ガルドは笑う。


---


「奪い合いだからだ」


---


「やめてくれ」


---


「情報を制したやつが勝つ」


---


「やめてくれって!」


---


 レイナが静かに言う。


---


「制御しなければ、崩壊します」


---


「もうしてる」


---


 外では。


---


 すでに動いていた。


---


 商人は価値を作る。


 貴族は権威を乗せる。


 宗教は意味を与える。


---


 それぞれが。


 それぞれの言葉で。


---


 アルカディアを語る。


---


「奇跡の地」


「黄金の供給源」


「独立勢力」


---


 定義が増える。


---


 勝手に。


---


 自由に。


---


 止まらずに。


---


 主人公は、ぼそりと呟く。


---


「……俺、何もしてないよな?」


---


 誰も否定しない。


---


 だが、誰も止めない。


---


 ガルドが紙をめくる。


---


「いい感じだ」


---


「何がだよ」


---


「評価が固まってきた」


---


「やめてくれ」


---


 レイナがうなずく。


---


「外部認識、収束中」


---


「やめてくれって」


---


 それはつまり。


---


 決まりつつある。


---


 “何か”として。


---


 アルカディアが。


---


 主人公は空を見上げる。


---


「……ただ暮らしたいだけなんだが」


---


 その言葉は、いつも通りだった。


---


 だが。


---


 外では、もう別の言葉が使われている。


---


「アルカディア」


---


 その名前に。


---


 意味が乗る。


 価値が乗る。


 評価が乗る。


---


 そして、それは――


---


 誰のものでもなくなる。


---


 勝手に広がり。


 勝手に決まり。


---


 勝手に強くなる。


---


 その日。


---


 アルカディアは。


---


 “評価”された。


---


 本人の意思とは関係なく。


---


 世界によって。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ