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静かに暮らしたいのに国家ができた件  作者: 南蛇井


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第23話「信仰の広がり」

 最初は、一人だった。


---


 森の入口。


 立ち尽くす影。


---


 粗末な服。


 疲れた足取り。


 だが、その目だけが――


---


 真っ直ぐだった。


---


「……ここが」


---


 小さく呟く。


---


「……アルカディア」


---


 名前を、確かめるように。


---


 そして、一歩踏み出す。


---


 その動きに、迷いはなかった。


---


 ――――――――――


---


「……増えてないか?」


---


 主人公は、心底嫌そうな顔で言った。


---


 視線の先。


---


 森の入口付近に――


---


 人がいる。


---


 一人ではない。


 二人。


 三人。


---


 そして、少し離れた場所にも。


---


「……増えてるな」


 エルドが冷静に答える。


---


「止めろよ」


---


「止まりません」


 レイナが即答する。


---


「なんでだよ」


---


「原因があります」


---


 視線が、横に向く。


---


 そこには。


---


 ルルナがいた。


---


 静かに。


 いつものように。


---


 祈っている。


---


「やめてくれ」


---


 主人公は頭を抱えた。


---


「お前だろ絶対」


---


 ルルナは目を開ける。


---


「違います」


---


「違わない」


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「私は、ただ祈っているだけです」


---


「それが原因なんだよ」


---


 レイナが補足する。


---


「外部における情報拡散」


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「やめてくれ」


---


「奇跡の地という認識が広がっています」


---


「やめてくれって!」


---


 その時だった。


---


 一人の巡礼者が、こちらへ歩いてくる。


---


 ゆっくりと。


 まっすぐに。


---


 そして――


---


 主人公の前で、止まる。


---


 沈黙。


---


 見上げる。


---


 その目は――


---


 確信していた。


---


「……あなたが」


---


「違う」


 即答だった。


---


「違います」


 レイナも補足する。


---


 だが、巡礼者は構わない。


---


「奇跡をもたらした方」


---


「違うって言ってるだろ!」


---


 後ろから、別の声。


---


「本当に……空気が違う」


---


「水が……澄んでいる」


---


「体が軽い……」


---


 巡礼者たちが、ざわめく。


---


 その空気は、すでに変わっていた。


---


「……やめてくれ」


---


 主人公の願いは、届かない。


---


 一人が、膝をつく。


---


 また一人。


---


 さらに一人。


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 連鎖する。


---


 静かに。


 当然のように。


---


「……感謝を」


---


「やめろ」


---


「この地に」


---


「やめろって!」


---


 ルルナが、静かに前に出る。


---


「ここは、祝福の地です」


---


「やめてくれ」


---


「奇跡は、ここにあります」


---


「やめてくれって!!」


---


 誰も聞かない。


---


 巡礼者たちは、地面に触れる。


 空気を吸う。


 水を飲む。


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 そして――


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「……本当だ」


---


 確信する。


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 それは、もう止まらない。


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 レイナが記録する。


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「信仰形成、進行中」


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「言うな」


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「集団化の兆候あり」


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「言うなって!」


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 エルドが小さく呟く。


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「……防衛対象が増えたな」


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「増やすな」


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 バルドは腕を組む。


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「人が増えりゃ、回る」


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「回すな」


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 すべてが、勝手に進んでいく。


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 巡礼者たちは、その場に留まる。


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 帰らない。


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 簡易な寝床を作る。


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 火を起こす。


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 そして――


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 また祈る。


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 静かに。


 繰り返し。


---


 その中心には。


---


 ルルナがいる。


---


 そして。


---


 “場所”がある。


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 名前を持った場所。


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 アルカディア。


---


 主人公は、その光景を見ていた。


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「……何これ」


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 誰も答えない。


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 答えは、目の前にある。


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 集まり。


 繰り返し。


 共有された意味。


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 それはもう――


---


 “コミュニティ”だった。


---


 小さい。


 だが、確実な。


---


 信じる者たちの集まり。


---


 主人公は、ゆっくりと座り込む。


---


「……ただ暮らしたいだけなんだが」


---


 その願いは、今日も届かない。


---


 そして、その日。


---


 この場所に。


---


 “信仰の輪”が生まれた。


---


 静かに。


 確実に。


---


 広がりながら。


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