表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静かに暮らしたいのに国家ができた件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/51

第22話「値段が壊れる」

 最初は、軽い気持ちだった。


---


「ちょっと試してみるだけだ」


 ガルドはそう言った。


---


「やめろ」


 主人公は即答した。


---


「余ってんだろ?」


---


「余ってるけど」


---


「なら流す」


---


「流すな」


---


 だが、もう決まっていた。


---


 翌日。


---


 森の外。


 小さな町の市場。


---


 そこに並んだのは――


---


 野菜だった。


---


 見た目は普通。


 少し瑞々しい程度。


---


「……これが例の?」


 商人が眉をひそめる。


---


「そうだ」


 ガルドがうなずく。


---


「アルカディア産だ」


---


 その言葉だけで、空気が変わる。


---


 ざわめき。


---


「噂の……」


「本物か?」


---


 人が集まる。


---


 値札がつく。


---


 通常の――


---


「……高くないか?」


---


 十倍。


---


 誰もが一瞬ためらう価格。


---


 だが。


---


「……一つ、くれ」


---


 買う者が現れる。


---


 それを見て、次が続く。


---


 売れる。


---


 あっさりと。


---


 そして。


---


 食べる。


---


「……は?」


---


 沈黙。


---


 そして――


---


「なんだこれ」


---


 声が震える。


---


「体が……軽い」


---


「疲れが消えたぞ」


---


「味も……おかしい」


---


 評価が、一瞬で変わる。


---


 ざわめきが、熱に変わる。


---


「もっとあるか!?」


---


「全部くれ!」


---


 奪い合い。


---


 価格が上がる。


---


「倍出す!」


「いや三倍!」


---


 ガルドは、それを見て笑った。


---


「……始まったな」


---


 ――――――――――


---


「やめてくれ」


---


 その頃。


---


 森の中。


---


 主人公は頭を抱えていた。


---


「嫌な予感しかしない」


---


 レイナが淡々と言う。


---


「市場反応、良好と推測されます」


---


「やめてくれ」


---


 その時だった。


---


 走ってくる影。


---


 ガルドだった。


---


「成功だ」


---


「やめろ」


---


「売れた」


---


「やめろって」


---


「全部な」


---


「早い」


---


 ガルドは笑う。


---


「しかも――」


---


 一拍。


---


「値段が壊れた」


---


「やめてくれ」


---


 説明は、すぐに来た。


---


「最初は十倍」


---


「高すぎるだろ」


---


「すぐに上がった」


---


「やめてくれ」


---


「今は――」


---


 指を立てる。


---


「それ以上だ」


---


「やめてくれって!!」


---


 レイナが記録を開く。


---


「価格上昇率、異常」


---


「言うな」


---


「市場バランスが崩壊しています」


---


「言うなって」


---


 エルドが静かに呟く。


---


「……これは、まずいな」


---


「今さら?」


---


 ガルドは肩をすくめる。


---


「いや、いい」


---


「よくない!」


---


「価値が証明された」


---


「やめてくれ」


---


「これで通る」


---


「何が」


---


「全部だ」


---


 嫌な予感しかしない。


---


 ガルドは続ける。


---


「アルカディア産ってだけで売れる」


---


「やめろ」


---


「ブランドだ」


---


「やめろって!!」


---


 レイナが静かに言う。


---


「外部影響が発生しています」


---


「やめてくれ」


---


「価格連動、流通変化、需要集中」


---


「やめてくれって!」


---


 主人公はしゃがみ込む。


---


「……なんでこうなる」


---


 ガルドは笑う。


---


「簡単だ」


---


 一拍。


---


「強すぎる」


---


「やめてくれ」


---


 その時だった。


---


 遠くから、別の声が届く。


---


「アルカディア産を確保しろ!」


「高値でも構わん!」


---


 誰かが叫んでいる。


---


 森の外。


---


 もう動いている。


---


 商人。


 貴族。


---


 全員が。


---


 レイナが静かに言う。


---


「経済に影響が出始めています」


---


 主人公は顔を覆った。


---


「……終わった」


---


 ガルドは笑う。


---


「始まりだろ」


---


「やめてくれ」


---


 だが、止まらない。


---


 価格は上がる。


 需要は膨らむ。


 流通は広がる。


---


 アルカディアという名前が。


---


 価値そのものになる。


---


 そして、その日。


---


 世界のどこかで。


---


 こう記録された。


---


「市場異常発生」


---


 原因。


---


「アルカディア産」


---


 その一行が。


---


 すべてを変え始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ