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静かに暮らしたいのに国家ができた件  作者: 南蛇井


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第18話「区画整理

 増えていた。


---


「……増えすぎだろ」


 主人公は、心底うんざりした声で言った。


---


 人。


 人。


 人。


---


 小屋の周囲だけではない。


 森のあちこちに、簡易的な住居。


 焚き火。


 作業場。


---


 完全に“広がっている”。


---


「人口増加、継続中です」


 レイナが淡々と言う。


---


「止めろよ」


---


「止まりません」


---


「なんでだよ」


---


「価値があるためです」


---


「やめてくれ」


---


 原因は分かっている。


 分かっているが、認めたくない。


---


 食料はある。


 安全もある。


 仕事もある。


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 来ない理由がない。


---


「……森だったよな、ここ」


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 誰も答えない。


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 その時だった。


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「ちょっと来い」


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 バルドが呼ぶ。


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 嫌な予感しかしない。


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 ついていく。


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 そして――


---


「……は?」


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 言葉を失った。


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 そこにあったのは、“区画”だった。


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 まっすぐに切り分けられた土地。


 整備された道。


 配置された建物。


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 明らかに――


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「整理されている」


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 レイナが答える。


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「やめてくれ」


---


「居住区、生産区、防衛区に分離しました」


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「やめろって!!」


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 指差す。


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「ここが居住区です」


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 小屋が並んでいる。


 整然と。


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「ここが生産区」


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 バルドの設備群。


 完全に集約されている。


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「ここが防衛区」


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 エルドの立つ見張り台。


 簡易ではない。


 “拠点”だ。


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「なんでそんなことしてんだよ!!」


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 主人公の叫びが響く。


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 レイナは平然としている。


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「効率化のためです」


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「やめてくれ」


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「動線を整理し、衝突を防ぎます」


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「やめてくれって」


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「役割ごとの配置で生産性が向上します」


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「もういい!」


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 バルドが腕を組む。


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「無駄が減る」


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「増えてるんだよ、問題が!」


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「いや、減ってる」


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「そういう問題じゃねえ!」


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 エルドが静かに言う。


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「防衛もやりやすくなります」


---


「やめてくれ……」


---


 ルルナが、区画の中心で祈っている。


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「調和が取れています」


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「宗教も評価するな!」


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 完全に完成していた。


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 ただの拡張ではない。


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 設計されている。


 意図されている。


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 “形”になっている。


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 主人公は、ゆっくりと周囲を見回す。


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 人が歩く。


 物が運ばれる。


 作業が回る。


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 混乱がない。


 停滞がない。


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 すべてが――


---


「……回ってる」


---


 ぽつりと呟く。


---


 レイナがうなずく。


---


「はい」


---


「やめてくれ」


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 その一言に、すべてが詰まっていた。


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 これはもう。


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 ただの生活ではない。


---


 ただの集まりでもない。


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 主人公は、しゃがみ込む。


---


「……ただ暮らしたいだけなんだが」


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 その願いは、今日も無視された。


---


 整えられ、


 分けられ、


 機能する場所。


---


 それはもう――


---


 “村”だった。


---


 いや。


---


 それ以上だ。


---


 意思を持った構造体。


---


 名もなき統治体。


---


 静かに、確実に完成した。


---


 ――誰の許可もなく。


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