第16話「配給制度」
問題は、静かに始まった。
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「……足りない」
レイナがそう言った時。
主人公は嫌な予感しかしなかった。
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「何が」
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「管理です」
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「やめてくれ」
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即答だった。
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だが、レイナは止まらない。
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「人口増加に伴い、資源配分に偏りが発生しています」
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「やめてくれ」
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「現状は各自判断による自由摂取」
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「それでいいだろ」
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「非効率です」
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来た。
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その言葉が出た時点で終わりだ。
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主人公は頭を抱える。
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「嫌な流れだ……」
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視線の先。
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畑には山のような作物。
倉庫には積み上がる食料。
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明らかに足りている。
むしろ多い。
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「足りてるだろ」
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「配分が最適化されていません」
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「いいんだよ別に!」
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「労働量と消費量が一致していません」
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「一致させるな!」
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エルドが小さく口を開く。
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「確かに、働かない者もいます」
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「言うな」
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バルドも続く。
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「作る側からすると、無駄は気になる」
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「言うなって!」
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全方位から追い詰められている。
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レイナが一歩前に出た。
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「結論です」
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「聞きたくない」
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「食料配給制度を導入します」
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「やめろ」
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即答だった。
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だが――
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「実施します」
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止まらない。
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「やめろって言ってるだろ!」
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レイナは地面に線を引く。
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区画。
区分。
記号。
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「まず、食料は一括管理します」
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「やめろ」
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「個別保有は禁止」
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「やめろって!」
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「配給所を設置」
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「なんでだよ!」
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「各人に対し、定量配分を実施」
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「自由に食わせろよ!!」
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主人公の叫びが森に響く。
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だが、返ってくるのは――
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「非効率です」
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冷静な一言。
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終わった。
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完全に終わった。
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レイナは続ける。
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「さらに、労働に応じた分配調整を行います」
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「やめろ」
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「貢献度に応じて配給量を変動」
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「やめろって言ってるだろ!!」
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バルドが腕を組む。
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「いいじゃねえか」
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「よくねえよ!」
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「働いた分だけ食えるなら納得だ」
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「納得するな!」
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エルドも静かにうなずく。
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「秩序は必要です」
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「軍隊じゃねえんだよ!」
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ルルナが小さく手を合わせる。
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「分かち合いは尊いことです」
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「宗教も混ざるな!!」
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誰も止めない。
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止まらない。
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その日の午後。
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“配給所”ができた。
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「なんでそんな早いんだよ……」
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バルドが答える。
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「環境がいいからな」
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「もう聞いた!」
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列ができている。
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人が並ぶ。
順番に食料を受け取る。
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レイナが管理する。
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「次」
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無機質な声。
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「配給量、基準値」
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渡す。
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「次」
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流れ作業。
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完全にシステム化されている。
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主人公は遠くからそれを見ていた。
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「……何これ」
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誰も答えない。
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答えは目の前にある。
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これはもう――
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“村”だ。
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いや。
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それ以上だ。
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食料が管理され、
労働が定義され、
配分が決まる。
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完全な社会。
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完全な仕組み。
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完全な――
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「……ただ暮らしたいだけなんだが」
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ぽつりと呟く。
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その声は、誰にも届かない。
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列は続く。
配給は続く。
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生活は、制度に変わった。
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静かに。
確実に。
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そしてこの日。
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この場所は――
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完全に“村”になった。




