第14話「生産の暴走」
朝。
主人公は、違和感で目を覚ました。
「……うるさい」
耳に入ってくるのは、一定のリズム。
カン、カン、カン――
金属音。
規則的で、止まらない。
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「……あいつか」
嫌な予感しかしない。
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外に出る。
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そこには――
“何か”ができていた。
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「……は?」
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昨日までなかったはずの設備。
それどころではない。
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炉がある。
作業台がある。
木材の加工場がある。
水を引いた冷却設備まである。
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そして、その中心で。
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バルドが動いていた。
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火を扱う。
鉄を叩く。
木を削る。
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そのすべてが、無駄なく繋がっている。
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止まらない。
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「……何してんの」
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主人公が呆然と聞く。
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「見りゃ分かるだろ」
バルドは振り返りもせずに答える。
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「分からん」
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「整えた」
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「何を」
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「全部だ」
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答えになっていない。
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レイナが横から説明する。
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「加工ラインが構築されています」
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「やめろ」
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「資源採取から製品化まで、一連の流れが最適化されています」
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「やめろって」
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主人公は周囲を見る。
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木材が積まれている。
石材が整えられている。
鉄が精製されている。
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そして、それらが。
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“次々と形になっていく”。
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「……なんでこんな早いんだよ」
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バルドがようやく振り返った。
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「環境がいいからな」
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「それ昨日も聞いた」
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「昨日より良くなってる」
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「なんでだよ」
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「整えたからだ」
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「やめてくれ」
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エルドが静かに周囲を見る。
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「装備の質も上がっています」
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剣を軽く振る。
明らかに昨日より精度が高い。
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「これ、昨日作ったのか?」
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「朝だ」
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「朝!?」
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時間の感覚がおかしい。
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レイナが淡々と記録する。
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「生産効率、想定以上」
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「やめろ」
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「供給能力、急上昇」
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「なんでだよ」
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主人公の叫びは、もう様式美だった。
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だが、事態はそれだけでは終わらない。
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昼。
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食料を確認する。
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「……多くないか?」
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畑を見る。
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明らかに収穫量が増えている。
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「増えてます」
レイナが即答する。
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「なんで」
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「生産環境が改善されたためです」
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「やめてくれ」
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バルドが横から口を挟む。
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「保存も効くようにした」
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「何を」
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「全部だ」
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倉庫のようなものを指す。
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「湿度、温度、通気」
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「やめてくれ」
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「無駄がない」
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「それは分かる」
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問題はそこじゃない。
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主人公は、ゆっくりと振り返る。
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積まれた食料。
並べられた加工品。
整えられた資材。
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明らかに――
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「……使い切れないだろ、これ」
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静かに言った。
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誰も否定しない。
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レイナが一歩前に出る。
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「余剰が発生しています」
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「言うな」
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「消費量を大幅に上回っています」
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「言うなって」
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「このままでは資源が滞留します」
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「言うな!」
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バルドは腕を組む。
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「余るなら使え」
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「どうやって」
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「売れ」
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即答だった。
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主人公は固まる。
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ゆっくりと、首を振る。
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「……嫌な流れだ」
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レイナが静かに言う。
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「合理的です」
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「やめてくれ」
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エルドも口を開く。
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「外部との接点は避けられません」
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「やめてくれって!」
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だが、誰も止まらない。
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環境が整い。
生産が加速し。
余剰が生まれる。
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その先にあるものは、決まっている。
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「……売るしかないのか」
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ぽつりと呟く。
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沈黙。
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そして。
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「はい」
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レイナが答えた。
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即答だった。
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主人公は、その場にしゃがみ込む。
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「……ただ暮らしたいだけなんだが」
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その願いは。
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生産性によって、踏み潰された。
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静かな生活は、終わっていた。
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気づけばここはもう――
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“生産拠点”だった。




