〜□D57■D〜俺はオマエと飲む紅茶が一番美味しい〜
「ナロージュ様はデージョ王子様を嫌いと仰いましたか?」と不法侵入執事に訊ねられ。俺は考える。
……確かにハッキリと嫌いと言われたワケでは無いが。
『デージョ王子様…その想いは…私が創作ったものなのです』『ーこの異世界は、私が書いた小説の世界ですー』
……灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)の言った言葉が、グルグルと頭の中を紅茶の茶葉がジャンピングするように舞っている。
「…意味のわからないことを言われるくらいなら…」
……いっそ「…俺のことが嫌いだと…」……そう。
「…言えば良いのだ…」……「…その方がマシだ…」
……己で、そう答えて、シクシクシック……泣けてくる。
『……私は、貴方の想っている悪役令嬢ナロージュ・ピクセルではありません。……私は、冴えないWEB小説家志望のそれも投稿サイトからも元いた世界からも追放された(色んな意味で死んだ)恋人もいない…親との関係も上手くいっていない…孤独な…自作小説の王子様…貴方に恋をしている…ただのしがない…キモヲタです…』
……何度も何度も灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)の言った言葉が、グルグルと頭の中を紅茶の茶葉がジャンピングするように舞ってはリフレインする。……何度も何度も。
「…キモヲタ…ッて何なんだょォ…シクシクシック…」
最早、枕が涙に濡れているのか涙が枕に濡れているのか?
「…意味わかんねぇえぇょォ…」
…………本当に意味がわからなぃ。
最早、意味のわからなぃ涙を枕に濡らす俺の背中をさすりながら不法侵入執事は丁寧に無駄に良い声を無駄に響かせてまたしても問うてくる。
「お忘れですか?『俺はアイツと飲む紅茶が一番美味しい』貴方様は確かにそう仰いました。私は答えたはずですーそれだけでじゅうぶんだと思いますよーと。その御心に変わりはありませんか?」……と。
「…変わらない…俺は、アイツが、キモヲタ?だろうが、この世界が、アイツの創作した世界?だろうが、この気持ちが、創作された?ものであろうが、関係無い…俺は、俺はアイツと飲む紅茶が一番美味しい…」
もう一度、不法侵入執事は優しく微笑んで言った。
「ーそれだけでじゅうぶんだと思いますよー」と。
そして「デージョ王子様のその気持ちをそのままナロージュ様にお伝えくださいませ。ー二人で紅茶を飲みながらー」
そう俺の背中を優しくさすり押してくれたのだった。
□D■D □D■D □D■D
不法侵入執事に文字通り背中を優しくさすり押されて、俺は、そのままのありのままの気持ちを灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢?(仮)に思いのままに伝えることにしたのだった。
今日も今日とて…灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢(仮)…と俺は、此処に…この辺境の地のピクセル家の別邸に取り敢えず住み始めて…すっかり日課となった。紅茶教会やら紅茶遊園地やらが建設されて、すっかりと賑やかになった。色々と思い出があるような無いような。そんな中庭で今日も今日とて優雅なアフタヌーンティーのお茶会を優雅に過ごしていた。何処までも穏やかに何処までも優雅に、それは、もぅ平和なお茶会だ。
〜〜どッッッ、どうしよう!?
〜〜どうやって、思いを伝える!?
こんなに穏やかで貴族な平和なお茶会だと言うのに!!
〜〜かっ、かかかッかつてない緊張感だ!!
〜〜~~~■D(゜A゜;)ゴクリ!!
……固唾と共に紅茶を飲み?
……いや、紅茶と共に固唾を飲み?
……固唾と共に固唾を飲み?呑み?
……取り敢えず。落ち着け俺!!
〜〜紅茶と共に紅茶を飲み~~~■D(゜A゜;)ゴクリ!!
俺は震える手でカタカタとティーカップをカタカタ置き。
目の前で、今日も今日とて、優雅な紅茶葉袋眼帯の瞳で俺を見詰めて、美味しそうに紅茶を飲む…灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢(仮)…に、意を決して、震える声で、話しかける。
「…きょ、今日は、お日柄も良く…」
震える声で紡いだ言葉はーーーー、
いや!!結婚式や祝賀会の挨拶かょ!!
『今日は縁起が良く素晴らしい日ですね』という意味で使われる決まり文句〜〜!!何を言ってるんだ俺の口唇!!
不思議そうに自分で言うのもなんだが挙動不審な俺を今日も今日とて、優雅な紅茶葉袋眼帯の瞳で見詰めて、美味しそうに紅茶を飲む…灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢(仮)…は、花が綻ぶような柔らかな微笑みを湛えて、優しく応える。
「ー本当に♡デージョ王子様と紅茶が飲める日は、何時だって、お日柄がよろしいですわ♡ー」
〜□DOh Happy Tea Day■D〜
(訳∶なんて素晴らしい紅茶の日なんだろう!!)
なんて、トキメイて心の中で素晴らしい紅茶の日々を宣伝している場合ではないッッッ!!!!
「ぁ、ありがティー」
言葉少なに取り敢えず紅茶な御礼を言い。
「ンッ!ンンッ!!」
〜〜と無駄に喉の調子を整え仕切り直す。
「…灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢(仮)…」俺が呼びかけると「はい♡」…灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢(仮)…は、優雅な紅茶葉袋眼帯の瞳で俺を見詰めて柔和な声音で短く返事をする。
俺は、一度、深く息を吐いて、そのままのありのままの気持ちを灰汁抜き蓮根(悪役令嬢)いや、ナロージュ・ピクセル辺境伯爵令嬢?(仮)に思いのままに伝える。
「ー俺は、オマエが、キモヲタ?だろうが、この世界が、オマエの創作した世界?だろうが、この気持ちが、創作された?ものであろうが、関係無い…俺は…俺はオマエと飲む紅茶が一番美味しいー」……だから。
「ーこれからも共に紅茶が飲みたいー」
……それだけじゃ、ダメだろうか?
……ただ。オマエと美味しい紅茶が飲みたい。
……ただ。それだけの幸せを望んでいる。
「ー俺と、婚約してくれー」




