40.護衛(このえ)と国防(けいび) sideエドヴィン
私はロウ伯爵家の三男として生まれた。
しかし三男である私は伯爵家を継ぐことが出来ない。
残念ながら魔力にはあまり恵まれなかったが、剣が得意だったので、剣で身を立てられる騎士を志した。
剣技を磨き、近衛隊に取り立てられ、光栄なことに第二王子殿下の婚約者様の専属護衛に選ばれた。
近衛として、王族の専属護衛とは誉れ高いことだ。婚約者様も気立ての良い方で、この方に誠心誠意お仕えしよう、と思った。
…ところが、私がフォーリア様の護衛となって少しした頃、事件が起きた。
フォーリア様が何者かに拐かされたのだ。
私はその場に居合わせ、犯人と対峙したにも拘らず…目の前でフォーリア様を拐われてしまった。
二人を追いかけたものの見失い、セイン殿下に報告した私に、殿下は一瞬声を荒げたが、直ぐに冷静さを取り戻し、私にフォーリア様の捜索を命じられた。
***
セイン殿下が、陛下に東方警備隊の出動許可を願っている。
「…魔の森は東方警備隊でないと抜けられんだろうし、な。他の隊では、野営や対魔獣戦の経験が浅い…」
殿下の要請に答えられた陛下のお言葉は最もだ。
しかしその裏を返せば、近衛隊ではフォーリア様をお助けすることは出来ない、ということ。
…悔しさに私は拳を握りしめた。
*
「隊長、お願いがあります。私も東方警備隊と共にローアン国へ向かわせてください」
王宮の軍事区、近衛隊長の執務室で。
私は隊長にフォーリア様救出の許可を願った。
「…先程陛下が仰っていただろう?近衛隊には魔の森を抜けることが出来ない。それは、お前とて同じ。…そんなお前が東方警備隊に付いて行けるのか?」
「付いて行きます!…食らい付いてでも。…私はフォーリア様をお守り出来なかった。だからこれは、ただの自己満足かもしれません。ですが!私はフォーリア様をお助けしたい!」
「…解った。お前がそこまで言うなら、セイン殿下に一筆したためよう」
「ありがとうございます!!」
*
「私も連れて行ってください」
私はその足でセイン殿下の部屋へ赴き、同行を願った。
「…何だと?」
殿下は訝しげな顔をされたが、私が思いの丈を述べ、近衛隊長からの手紙を差し出すと一読し、同行の許可をくださった。
「遅れたら、容赦なく置いていくぞ」
「はい」
…こうして私は東方警備隊と共に、ローアン国へ出発した。
***
「第三部隊!魔獣を排除し、進路を確保!第一部隊!このまま森を突っ切るぞ!」
『はっ!』
森の中、殿下の号令が飛ぶ。
その号令に従い、直ぐ様第三部隊が先行し、魔獣の駆除に当たる。
あっという間に魔獣を斃し、殿下の進路を確保すると、死骸を燃やし他の魔獣が群がるのを阻止する。
その横を殿下とシオン殿、第一部隊が駆け抜けて行く。
…事態が事態とはいえ、とんでもない行軍速度だ。…私は付いて行くだけで必死だ。
人を相手にする近衛隊とは違う。
圧倒的な技量と速度、そして連携。
…近衛隊も王族の護衛を担い、護る立場ではあるが、警備隊が護っているのは国そのものだ。
これが東方警備隊か…。
護衛任務を否定するつもりは無い。
だが私が見ていた護衛は、とても小さかったのだな、と痛感した。




