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姫探し  作者: 温泉ことね


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フォーが食べたい


今日は、本当に色々ありすぎたな…

家に着いた途端、ドッと全身に疲れが押し寄せた。


玄関で靴を脱いで、2階の自室へ入る。

お財布を鞄から取り出し、所定の棚の中へしまう。

鞄をハンガーラックに掛け、開け放している窓を閉めてクーラーをつける。


床に、ゴロンと寝転んだ。

身体が重い。

全身がじっとしていたい、休んでいたいって駄々をこねてる。

かなり無理させたね。疲れたよね…ありがとう私の肉体…。

瞼が重たくなってくる。


道間はしばらく何もできないだろうという事で、清彦は2日間景山さんが預かる事になった。

善哉さんから翡翠の勾玉をもらい受け、一応肌身離さずつけておく様に言われた。


ポケットに入っている勾玉を確かめる。

スマホを見ると、19時半。


あぁ、お風呂入らなきゃ…

いっぱい、色んな汗を掻いて、自分の身体から雑巾みたいな臭いがする…


そう思っている内に、眠りに落ちていた。



目が覚めて、スマホを手に取って確認する。

23時半。

Nyainの通知が目に入った。


「あ」


"きぬちゃん、お仕事おつかれ様!今回は体調、大丈夫?明日は無理せずにね。楽しみにしてるね!"


ひかりーーー!!!

天使からのNyainキタ。


返信して、しばらくスマホをいじいじする。

YouTubeで見たい動画を探しながら…結局何も見ずに20分が経つ。

いかん。早く雑巾臭を消さないと…


何とか這いずり回って準備をし、シャワーを済ました。

晩ご飯を食べ、食器を洗う。歯を磨いて自室に戻った。


やっとおフトゥンに上がれる…!

サラサラのシーツにダイブ。

クーラーの効いた涼しいお部屋で毎晩寝られる。

毎日シャワーを浴びられて、清潔な身体で、ふかふかのベッドに寝転べる。

何て恵まれてるんだろう。はぁ今日もありがとうございます…。


すぐに気を失うように寝た。




何とか起きて、待ち合わせ場所にたどり着いた。


約束の時間10分前。

今回はS駅の南改札口前で待ち合わせ。

ひかりの希望で、とあるベトナム料理屋さんへランチに行く。


清彦が居ないのが久しぶりで、ワクワクする。

誰にも見られていないのって、こんなに気分が軽いのか…!!


改札口に人が押し寄せ、次々と歩き去っていく。

その中に、金髪ボブのクリクリお目目の美少女が。

手を挙げて、振った。

ひかりも気付いて手を振る。


「きぬちゃ~ん!!」


「ひかり~」


駆け寄って来て、顔いっぱいの笑顔を見せてくれた。


「きぬちゃん、この前ぶり!」


「ひかり~、久しぶり?」


「じゃ、行こっか」


そのベトナム料理屋さんは、善哉事務所から徒歩5分歩いた辺りにある。

場所は知っているので、私が案内する。


歩きながら、近況報告をする。


「きぬちゃん、転職したんだよね?」


「うん!」


「何か前より楽しそうで、良かったね!」


「そうなの。皆さん、優しくて…」


昨日の出来事がよぎった。

一瞬、恐怖が戻って来てブルッと身体が震える。

大丈夫。ポケットに入れている勾玉を確かめる。


「いいね。前と同じ事務員って言ってたけど、何の事務してるの?」


はいキタ。


「え~っとね、…何て言ったらいいんだろう…」


昨日の夜。

シャワーを浴びながらずっと考えていたけど、全然思いつかなかった。

除霊屋さんの言い換えって…なんて言ったらいいんだろう?


ひかりは大きな瞳をキラキラと輝かせ、こちらを見ている。


「えっとね~…あのぬぇ~…そうじ…そうそう、日本の掃除屋さん!」


「へぇ~。"日本の掃除屋さん"っていう会社なんだね?」


あかん。検索されたら一瞬で嘘ってバレる。

偶然その会社が存在して、偶然K市N区に支店があったら良いけど!


「ごめんごめん!違う、日本で活躍する、すごい掃除屋さん!…って意味かな?」


ひかりはキョトンとした顔で私を覗き込んだ。


「へぇ~。お掃除技術とかがすごいの?」


「そそ、何か私はただの事務だから分かんないんだけど、お掃除している人達結構凄腕みたいで」


変な汗を掻いた。


「すごいね!私も、家の水回りとか頼もうかな♪」


キッチン周辺を掃除する、作業服姿の善哉さん達がモワモワと想像できた。


「はは…そう言えば、ひかりも順調?」


「うん。服好きだし、毎日楽しーよ」


ひかりはオサレだ。

今日はコバルトブルーのロングスカートに、白Tシャツ。

白Tシャツはデコルテの辺りから二の腕がレースになっていて、中に着ている肩紐のない黒インナーがチラ見えしてて可愛い。


地下鉄の構内から地上に出た。

ひかりの金髪ボブが夏の日差しを反射し、輝きを放つ。

歩く度にスカートがヒラリと揺れ、通り過ぎる男子学生の集団がひかりを振り返る。


善哉事務所の前を通り過ぎる。

田村さん、清彦、善哉さん大丈夫かな…。


それから、すぐにベトナム料理屋さんに着いた。

11時過ぎ。


既に3グループ程並んでいた。

その後ろに立って並ぶ。


「暑いね~」


「ね。この辺はほんと、コンクリートジャングルで暑すぎ」


照り返しキツすぎ。

ひかりも私も、顔から汗が噴き出してハンカチで拭く。

熱風が吹いてきて、鼻の中が熱気で苦しくなる。


「きぬちゃんありがとうね!ここ行ってみたかったんだ」


「私も気になってたから。ここ通った時は、いつも人が並んでるよ」


2グループが中に入って行った。

もうすぐ中に入れるね、なんて話していたその時。


「わッ!!!」


って後ろから声がした。


「ぎぃぇッ!!!?」「きゃ!?」


振り返ると、目の前に類さんがいたずら小僧っ子の顔をして居た。


「アハハ!ごめんね、びっくりした?」


類さんの後ろには景山さんが少し呆れ顔で立っていた。


「やめなさい」


「お、おつかれ様です…」


まさかこんな所で出会うなんて。


「え?きぬちゃん、会社の人?」


ひかりが少し声を上ずらせて聞く。


「うん、お世話になってる…」


「初めまして!きぬちゃんをお世話してる此代類です。」


「類さんがお世話されているの間違いでは?景山です」


「は、初めまして…。前田ひかりです」


「友達?」


類さんが興味津々に聞く。


「はい。中学からの友達で…」


ひかりを見ると、ひかりもこちらを見ていた。


「ランチ?俺ら仕事終わって帰って来てさ、どこで食べようかなって景山さんと話してたんだ」


「えぇ。では、行きましょうか」


景山さんが歩き出そうとすると、


「俺らもここにしょうかな~?」


類さんが目を細めた無邪気な笑顔で言った。


え!?


「やめなさい。せっかくのご友人との時間を。邪魔になるでしょう」


景山さんが制止する。


「え…私は、大丈夫です」


ひかりが天使スマイルで返す。


いいの!?


「じゃ、相席よろです」


類さんが言うと、2人お店から出てきた。

次だな。


「は、はぁ…」


正直困る…。


「きぬちゃん、嫌そう!!」


ガハハと類さんは笑う。


「当たり前でしょう。絹代さんはお休みの日なのに」


「そんな…私も、大丈夫です」


ひかりの前で仕事の事話されると、本当は除霊屋さんだってばれちゃう…?

どうしよう?


「じゃ、一緒に並ぼうよ景山さん」


「全く…迷惑な先輩ですね。ほら行きますよ」


景山さんが類さんの首根っこを掴んだ。


「えー!!?やだやだ、きぬちゃんとひかりちゃんとフォー食べたい!!」


「みっともない…!」


「次お待ちのお客様ー!テーブル席にお願いいたします!」


お店の扉が開き、店員さんが私たちへ視線を巡らす。


「はいはーい!4名入りま〜す♪」


類さんは景山さんの掴む手を搔い潜り、ノリノリで私とひかりの間に入った。


「こら!」


景山さんは飼い犬を叱る時のように注意した。

類さん、そんなにフォーが食べたいのか。


「あはは!!此代さん、面白〜い!」


何故かひかりが喜んでいる。


「…すみません。絹代さん」


景山さんが申し訳なさそうに謝った。


「いえ、良いんです。ひかりも笑ってますし…」


ただし、仕事の事はお願いだから話さないでー!!と心から祈った。


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