動転
「…善哉、お前どうやって俺から気配を絶って…」
常に監視していた。
善哉が外せない仕事がある日を狙い、異空間から出るようにしている。
なのに、俺はここに善哉が来る気配を今この瞬間まで感じなかった。
「意外とおめでたい奴なんだな?」
奴は迷わず緋刀麻呂を抜いた。
「…お前、やる気か?」
お前の大事な大事な、女ヒーラーの前で?
善哉は答えないで俺の顔を澄まし顔で見る。
「俺は静かに暮らしたい。もうお前らや本部の人間と関わるのなんてまっぴら御免だ!!コソコソここに来たお前らが悪い!!」
「お前が先に手ぇ出したんだろうが。健吾と絹代さんに」
どいつもこいつも。
青鬼を出す。
「おっ、いいのかよ?術がバレても」
お前も出せ。
それを誘ってるんだよ。
「俺ってさぁ~、無敵なんだよね?君みたいに仲間とかいないし、本部も出て行ったからさぁ」
緋刀麻呂の切っ先を無造作に下げているが、隙はない。
「本部の人間共、あのまま俺の異空間に閉じ込めてやるよ」
「あっそ。」
眉一つ動かさない。こいつ、本当にどうでも良いと思ってるな。
「いいのかよ?お前、本部の人間助けれられなかったら…!!」
善哉のキャリアに傷が付く。
除霊師として生きていくなら、今後途方もない支障が出るぞ。
それでもいいのか?助けに行けよ!!
「は?俺は健吾と絹代さんを迎えに来ただけだ」
澄ましやがって。
簡単な術もまともに使えない様な奴が。
「いいからお前もさっさと式神出せよ!!!」
本部の奴らもまとめて異空間の中に閉じ込めて、二度と出れないようにしてやる。
青鬼に善哉を襲わせる。
その間に俺はこの女を…!!
「え」
何が起こった?
俺の両腕が…ないんだけど?
「俺の従業員に触るな」
背後から背筋が毛羽立つような低い声が聞こえた。
こいつ、式神出したな?
青鬼の方を見ると、青鬼は縦真っ二つになって倒れていた。
おい、嘘だろ?
式神、出してないじゃん。
「今度はお前の式神と同じように斬る」
久々に冷汗が出た。
一瞬で身体が芯から冷え切る。
と同時に、興奮した…
「やっぱりお前、最高だな」
術を一切使わずに俺と青鬼をサクッと斬るなんて…
人間技じゃないね。
間一髪。善哉の切っ先が俺の頭の真上に来る前に、その場から消えた。




