道間の誘い
"絹代さん。首の宝石は、結界を張ってほしいと願えば誰でも想像通りに張れる力がある。道間の攻撃にも十分耐えられるくらいのものだから、何かあったら迷わず使って"
絹代は善哉の言葉を思い出した。
"そうだ。これで…"
絹代が願った瞬間、田村の周りが白く光り、光の柱が立った。
田村に巻き付いていたトゲトゲの植物は弾け飛んだ。
「何だ、これは…!?」
道間も一瞬何が起こったのか分からなかった。
田村は結界の中に倒れ込んだ。
周囲ぐるりと、白金の結界がピンと張れた。
道間は結界の前で首をひねっている。
刹那、道間の顔がグリンッと勢いよく絹代の方を向いた。
「誰だ、貴様」
目が合った。
その瞬間、絹代のブレスレットが弾け飛び、宝石も粉々に割れた。
「…!!」
絹代の姿は道間の前に晒された。
「何だ、この女?」
「若葉さん、逃げて…」
田村が辛うじて声を出す。
でも、絹代の足は恐怖で動かない。
道間はすぐ眼前まで移動してきた。
「…お前、なんの霊力も感じないぞ。ただの人間が何でこんな所に居るんだ?」
顎に手をやり考え込む。
絹代の足は相変わらず付け根の方から小刻みに震えて動かない。
清彦が目の前に現れた。
「姫には指一本触れさせん!!」
「…誰だお前」
道間は面倒臭そうに清彦を見やった。
「不思議だな。お前みたいな霊、この空間に近付いたらすぐ分かるのに。」
そう言うと手をかざした。
その瞬間、清彦はその場に倒れた。
「き…清彦!?」
絹代はしゃがんでとっさにヒーリングをする。
道間は目を剥いた。
「そうか!君が善哉のお気に入りか!!」
道間は指をパチンと弾いて形相を明るくした。
絹代は清彦をヒーリングしながら、道間を見上げた。
「絹代さん…と言ったね」
道間はできるだけ親しみやすい微笑みをたたえて話しかけた。
絹代は混乱している。
「今日から、この道間と一緒に暮らさないか?」
"!!?"
田村は意外な言葉に驚く。
「ごめんなさい、ロン毛の人はちょっと…」
「そこ!?」
田村が突っ込む。
「…では、これでどうだ」
道間の黒髪ロン毛が一瞬で消え去り、丸坊主になっていた。
"さすが最強術師…!一瞬でロン毛から高校球児のような丸坊主に…!てか何してんのあの人!?"
「ごめんなさい!いきなりポリシー曲げられる程信念のない人はちょっと…」
"そこ!?てか、殺されるって!!そんな事言ったら!"
「…そうか。では、これで…」
「どうだ?」
道間は、善哉の顔になった。
俄かに絹代の顔は緊張をほぐし、和らいだ。
「善哉さ…!!」
"隙ができた。ふん、見た目に惑わされるなんて愚かな人間め。これだから…"
「ふごォォォォ!!!?」
道間の顔面が何者かによって殴打され、身体ごと吹っ飛ばされた。
「しつこいな」
その声に、道間は聞き覚えがありすぎる程あった。
「嫌がってんだろ、どう見ても」
絹代の前に立ちはだかっていたのは、善哉だった。
「善哉さん!」
「…悪い。来るのが遅くなった」
「W県の出張は…!?」
「ソッコーで終わらせてきた」
道間は恨めし気に善哉を睨みつける。
「善…哉…!!」




