田村と若葉
9時に絹代さんと待ち合わせだ。
仕事とは言え、あんなタイプな子と待ち合わせなんてちょっと胸が躍るぞ。
しかもヒーラーで、同じ空気を吸うだけで癒される…。
「お待たせしましたー」
おっ、来たか。
「でえええぇぇぇぇ!!???」
絹代さんは生成のローブを身にまとい、首にはチョーカー、手首にはブレスレット、耳にはイヤリングの魔道具が嵌めてあった。それぞれに大きな宝石がくっついてキラキラ、いやギラギラと照り輝いている。
ローブを含め、これらの防御用魔道具はざっと一千万円近くはするだろう。
拓海、涼しい顔してどんだけ過保護なん?
てか俺信用なさすぎない?
「あはは…あんまり、ジャラジャラつけるの慣れてなくて…」
頭をかいて遠慮がちに笑う絹代さん。
癒しオーラパネェ。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
本部の人とは9時半に合流予定だ。
道間の居るであろう空間の中間地点で待ち合わせ。
中間地点から30分歩いて、その先が俺の出番だ。
俺の術で本部の人達を送り込んだら、俺の出番はそれで終わり。
後は、絹代さんにヒーリングしてもらって帰るだけだ。
本部の人達も道間と直接対峙するために入るわけではないから、
用が済んだらすぐにこちらの世界に帰って来る予定。
初めから闘うつもりなんてない。
関西では拓海、関東では出羽さんくらいかな?
あの道間とまともに闘り合えるのは。
「あの…」
「うん?」
おずおずと聞いてくる姿が可愛いな。
顔ちっちゃ。一重の目ぇ綺麗。
清潔感ありすぎて輝いて見えるぜ。
マジでタイプすぎるわ。
「詳細がわからず、まだ私も自信がなくって不安なのですが…とりあえず私は、田村さんが術を使った後にヒーリングするだけで良いんですか?」
「そうだよ。でも絹代さんは、何かあったら俺や本部の人達を置いて一目散に逃げてね」
でないと俺が拓海に処刑される。
冗談じゃなくてあれは本気だった…。
怖い。
「…分かりました」
真面目な顔も綺麗だ。
てか目見つめてくるなぁ。
俺の事好きなのかな?
平安貴族の霊は姿を見せない。
気配もしない。
本当についてきてるのかな?
「ところで、後でNyain教えてよ。拓海はああ言ってたけど、俺と絹代さんは今後も仕事上やり取りが必要だと思うんだ」
「はぁ…?」
押せば行ける。
がんばれ、オレ。
「ね?拓海や類さんにはナイショでさ」
グフフ。
「…ごめんなさい」
ナヌッ!??
「善哉さんが教えちゃダメだって言っていたので。」
「…そ、そっか」
くそ。
拓海、あんた過保護の度が過ぎるぞ。
でも真面目な絹代さん、好き。
それから、話しながら歩いた。
絹代さんは高級魔道具をつけていたから、完全に気配を消して移動できていた。
何かあっても、道間に存在を悟られずに逃げ切れるだろう。
問題は俺。
でも、俺達が向かっているのに気付かれているとしても大丈夫。
道間は今から何をしようとしているのか知らないはず。
本部の人達が遠くに見える所まで来た。
「よし、合流するよ」
「あ…あの人達が本部の人…ですか」
5人か。
桜庭さんに、相葉さん、寺田さんに牧野さん。
俺だけじゃなく、この業界に居る人間なら皆憧れる人達ばかり。
そして…
「勅使河原さん!!」
「よう」
勅使河原さんは全術師の雲の上のような存在。
その分厚い胸板と巨木のようにそびえるガタイの良い長身。
ワイルドな無精ひげが似合う四角い顔立ち。
「よろしくお願いします」
「あぁ。」
勅使河原さんのさらさらオールバック金髪が揺れる。
声低。かっこよ。
「初めまして。若葉絹代です。よろしくお願いいたします。」
「初めまして。」
「へぇ~、君が善哉君に最近雇われたっていうヒーラーさん?」
真っ黒なサングラスとあご髭がクイッと持ち上がる。
何てダンディーな笑顔なんだ…。
ワラワラと絹代さんが囲まれる。
「すごいね、本当にオーラが水晶だ」
「あの…私まだヒーリングに自信がなくて…何で今日ここに呼ばれているのかわからないんですが」
正直だなぁ。
「善哉君が雇ってるくらいだから、ものすごい原石なんだろうね」
「そうだな。景山さんから報告を聞いてるけど、前世でかなりの力を発揮していたそうじゃないか」
「よろしくね、若葉さん」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします!」
絹代さんの顔が真っ赤。
いきなりこんな風に囲まれたら、そりゃそうなるよな。
それから、すぐに全員で歩いて道間の居る空間の入り口へと向かった。




