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姫探し  作者: 温泉ことね


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たむたむこと田村さんの来訪




「たむたむ久しぶりー!」


「類さん!お久しぶり!」


「健吾。お前、無事で良かったな」


「…お陰様で、命は助かったよ。景山さんは?」


「K区の方に行ってる」


「へぇ…。お会いしたかったなぁ」


パーテーションの向こう側の声は、基本丸聞こえだ。

清彦は、景山さんについて行っており、不在。


善哉さんは、田村さんが訪問する前に、事務所全体を囲む様に結界を張っていた。

結界を張ると、道間という術師の監視の目から、30分程度であれば逃れられるらしい。

ただ、30分以上になると結界が張られている事がバレてしまい、もうこの手は使えなくなるんだとか。


その術師に聞かれたくない様な話をするのだろうか…


ドキドキしながら、お茶の用意をしに給湯室へ立った。

冷蔵庫から出した冷たいペットボトルのお茶を、ガラスのコップに注いでお盆に並べる。

お茶出しのために隣の部屋へ入った。


田村さんはこちらを見て、立ち上がった。


「えっ?女性?」


何故か驚いている。

筋肉質で、白いTシャツには筋肉がムチムチと浮かび上がっている。


「もしかして、あなたが…ヒーラーさん?」


田村さんの髪型はセンター分けで、耳から下は少し刈り上げてある。

長めの毛先が瞳の前に少しかかり、田村さんは顔を振って髪を払った。


「初めまして。まだヒーリング初心者ですが…事務員として働かせてもらっています。若葉絹代です」


「うわぁ~…いいなぁ」


何が?


田村さんの目は大きめな釣り目。

キラキラとしている。


その目のキラキラ感が少し、清彦に似ているかな?と思った。


「俺らも絹ちゃんにヒーリングもしてもらってるんだ」


「やっぱり!癒しオーラ半端ねぇもん」


そう言うと、ムキムキの腕を動かし、右手を差し出した。


「僕、田村健吾です。よろしくお願いいたします。」


「こちらこそ、よろしくお願い致します。」


左手を差し出して、握手した。


「ふわぁ~!!もうヒーリングしてくれてるんすか!?」


田村さんは両目をキュッとつむって笑った。


「え?」


どゆこと?


「いやぁ、握手した瞬間に癒されてる気がして…」


「いえいえ、ただの握手です」


そう言って手を離そうとしたら、強く握られた。


「この業界、男が多くてハードな仕事だから…」


キリッとした表情で目を見てくる。


「そうなんですか」


手、いつ離してくれるんだろう…?


「おい健吾。絹代さん困ってるだろ?」


いつの間にか善哉さんが隣に立っていた。


「おっと、ごめんよ」


パッと手が離れ、事務所に引っ込もうと礼をして少し下がった。


「大丈夫です」


「拓海、絹代さん貸してよ」


一瞬、空気がピリついた気がした。

隣の部屋に行こうとしたけど、その場で足が固まる。


「…は?」


ヒィッ!!?善哉さんは完全にアサシンの目になりやした!!


「怒るなよ~!」


「駄目に決まってんだろ?てめぇ、絹代さんは物じゃねぇんだ。言い方気をつけねぇと〇すぞ」


ひぇ…


「怖!!分かった、分かった!!」


田村さんはフゥーっと一息ついた。


「…絹代さんの力が必要なんだ。だから、手を貸してください」


「駄目だ。」


「結局駄目なのかよ!!」


「帰れ。今すぐ。」


有無を言わさぬ善哉さん。


「…頼むよぉ~」


困り顔で善哉さんを見つめる田村さん。

が、いきなりキッとした表情になった。


「拓海ばっかりズルいんだよ!!」


「は?」


拍子抜けした様な善哉さんの声。


「類さんに景山さんに…おまけにヒーラーの若葉さんまで!!」


「うるせぇな、帰れよ」


「…道間の事で、本部から言われてるんだ」


「は?」


善哉さんは怪訝な面持ちで田村さんを見る。


「何でたむたむが、道間を…?本部から言われて、絹ちゃんを?」


類さんも首を傾げる。


「松田に確認してくるわ」


善哉さんは隣の部屋へ行き、電話を掛けた。


類さんと顔を見合わせる。


「もしかして、たむたむが結界を張ってほしいって善哉さんにお願いしたのって、そういう事なわけ?」


類さんが田村さんを見やる。


「…そうだよ。道間には聞かれたらまずいんだ」





「おい。何勝手に人の従業員を…」


"拓海は道間に監視されてるだろ?田村の術じゃないと道間を追えないんだ。ただ、その術を使うと霊体がズタズタになる事が確定している"


「やめとけよ、そんな追い方!」


"悪いが、今回は緊急だから若葉さんに頼む"


「俺も行く」


"拓海は明日の朝、W県で除霊の仕事があるだろ?依頼内容確認したけど、絶対に行ってもらわないと困るぞ。"


「勝手な事しやがって。」


"此代君と景山君は同行できないのか?後、平安貴族の霊は?"


「そこ把握してねぇのかよ。明日の朝イチでM県に出張だ。そこも絶対に外せねぇ。清彦は行ける。」


"…そうか。本部からも人員を寄越すから"


「本部の奴らが道間相手に、か?」


"拓海の基準で測るのやめてもらえるかい?本部だって一応は日本有数の精鋭部隊なんだぜ?"


「本部の人間が束になったって、あいつの術に適うかよ」



…会話が途切れた。

電話、終わったのかな?


善哉さんの話声だけ所々聞こえてたけど。

部屋に戻ってきて、皆に会話の内容を説明してくれた。


「…という事で、不本意極まりないが。絹代さんは明日健吾と一緒に行ってもらう」


「安心して!俺の術は拓海にも知られていないから。道間にも知られていないはずだよ」


田村さんはキラキラとした目を向け、親指を立てている。


「…私で、大丈夫でしょうか?」


不安しかないんだが。

類さんの方をチラ見する。


「…本部の奴ら、相変わらず無茶苦茶。たむたむも、本部から声がかかったからって浮かれて安請け合いするなよ」


冷静な態度で田村さんに忠告する類さん。


「俺だって、一応日々パワーアップしてるんだ。」


「お前、絹代さんが怪我したら〇すからな」


善哉さんが今までに見た事のない顔をして田村さんを見つめている。


「ちょっ…冗談だろ?やめてよ拓海」


蒼白い顔で額に汗をかく。

田村さん完全にびびっとる。


「当たり前だろ。勝手に本部と話を進めやがって」


「…悪いと思ってるよ」


田村さんはシュンとして上目遣いになった。


「何で事前に善哉さんに連絡してくれなかったの?」


類さんが眉をしかめて田村さんを見る。


「この話が来たのが昨日なんだ。バタバタしてる時に本部から電話があって、俺もよく考えずについ受けちゃったんだ。」


「よく考えろよ」


善哉さんは腕を組み、壁にもたれていた。

田村さんを睨め上げる目は、まだ静かな怒りに満ちている。


「もう、明日行くしかないだろ!それに、拓海は道間に術で監視されてるから、あまり色々と話せないんだ。絹代さん、Nyain教えて。」


「え?」


「ほら、これからもヒーリングでお世話になったりするかも知れないし?明日の打合せもいるし」


田村さんはスマホを出して触り始めた。


「分かりました。スマホ取ってきます」


「明日の打合せは今ここでしろ。絹代さんが嫌なら教えなくていいから」


取りに行こうとしたら、善哉さんがそう言うもんだから足を止めて振り返った。


「…絹代さん、俺にNyain教えるの嫌?」


キュルンとした顔で請う田村さん。


「嫌だろ。」


間髪入れず冷酷な一言。

善哉さんはそのまま顔だけこちらに向けた。


「だろ?絹代さん」


相変わらずクールな切れ長お目目。


「拓海ィ~!何か俺に冷たくなぁい!!?いいじゃん!連絡先くらい!」


田村さんは口を尖らせている。

…本当、仕草や反応が清彦に似てるなぁ。


「俺を通せ。絹代さんを危険な場所に連れ回すのは金輪際なしだ」


「たむたむ、今回の件で完全に俺らの信用失ったね!」


類さんが満面の笑みで田村さんの肩に手を置く。


「…」


田村さんは類さんの笑顔を見ながら凍り付いた。


「…分かったよ。とりあえず、明日は9時にA駅の西改札口集合。詳細はその時に話すね」


そう言って、田村さんは善哉事務所を後にした。




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