結界破壊
類に除霊され、綺麗になった支配人の運転でホテルまで帰った。
ホテルの部屋に着くと、結界が壊されていた。
類をベッドに寝かせ、リュックの中を確認する。
「…クソ、やられてる」
持ってきた札は全て水に濡れ、文字が掻き消えている。
まずい。
油断して、簡易的にしか結界を張らなかったから。
今回は事務所へ戻りまた後日出直すべきか。
部屋の扉を開けようとするが、開かない。
閉じ込められた。
フロントに電話しようとしても、繋がらない。
部屋の空気は不気味さで満たされていく。
この部屋だけ、外界と遮断された様だ。
時刻は夕方の5時。
夕暮れの日差しが部屋に差し込み、邪気が部屋の隅から染み出してくるのを感じた。
類はいつ目が覚めるか分からない。
依頼を受けた時に起こった胸騒ぎ。
札がオジャンになり結界も張れない状況。
これは…久々にヤバい。
ふと浮かんだ。
絹代さんは、清彦と一緒にまだ事務所に居る筈だ。
いや、いくら何でもそこまで危険な目に遭わせるわけにはいかない。
俺一人で、何とか今回は乗り切る。
全部俺の判断ミスだ。
『阿保。それでお前が死んだらどないすんねん』
銀の声が頭に響く。
「…」
『お前死んでもええんか?あかんやろ?西日本が無茶苦茶なるで』
「分かってる」
『あの子は、迷惑なんて思わへんよ。むしろ、お前がそうやって頼らない事で…』
「分かってるよ」
異界に飛ばされていても、俺のスマホから事務所へなら連絡できる。
こういう時のために、術を掛けておいて良かった。
『なら、早よう連絡しぃ!!時間ないねんで!!』
「もしもし?」
『はい。善哉さん、無事に到着されていますか?』
「あぁ。…」
『…どうされたんですか?』
「…いや、そっちは何も変わった事はない?」
『はい』
「なら…良かった。」
『…はい。そちらも、大丈夫ですか?』
「…」
『…善哉さん?』
「あぁ。問題ない。大丈夫だ」
『気をつけて、無事に帰ってきてくださいね』
「ありがとう。絹代さんも、気を付けて帰って」
『ありがとうございます』
「…じゃあ、また明後日」
『はい、ではまた明後日に』
窓の外はひたすらに暗闇が広がっている。
電話を切り、カーテンを閉めた。
『アホ!!もっかい電話せぇ!!』
銀の声が響く。
「…出来ん」
絹代さんを巻き込む事は、やはりできない。
誰に言われたって。




