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姫探し  作者: 温泉ことね
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老舗旅館の宴会場


支配人は上機嫌で鼻歌を歌っている。


「今から行く温泉は、男性には特に喜んで頂けますので…」


「?何でですか?」


男とか女とか、温泉の効能に何か違いがあるのか?


「それは…行ってからのお楽しみでございます」


支配人の背後に浮かぶ低級霊達の動きが活発になる。


おい、今から行く所、低級霊が喜ぶ場所かよ。


「…善哉さん、本当にこのまま行っても大丈夫ですかね?」


類が心配そうに耳打ちする。


「…まぁ、このまま行ってみよう」


デコピンで祓えるレベルの奴らだ。問題ないだろう。





支配人の言う様に、30分程して温泉旅館へ到着した。


「ここでございます。」


「へぇ~!旅館みたいだけど…」


類が不思議そうに大きな木造建築を見渡す。


「日帰りの入浴客も受け入れしているんですよ。地元民、知る人ぞ知る名湯です」


支配人の笑顔と裏腹に、肩に居る低級霊達が狂喜乱舞している。


低級霊がこんなに喜ぶとは…逆に気になって来た。


この人の好さそうな支配人は、一体俺らに何を案内しようとしてんだ?


「ちょっと…温泉なのに、こんなに低級霊が喜ぶなんて、何があるんでしょうね?」


類は不安そうだ。


「知らん。まぁ行って確かめてみよう」





温泉に入った後、待合室に戻ると類が駆け寄ってきた。


「待合室で待ってる間でも、5体は低級霊祓ったっす!」


「低級霊ばっかりか…」


類が水を渡してくれた。


「ありがとう」


蓋を開けて飲んだ。


「祓っても祓っても、低級霊がいるっすよ!!」


…どんな温泉だよ。温泉は浄化作用があるのに。


実際、体内に沈殿していた邪気を払えてスッキリした。


「あっ!上がられましたか~!!」


支配人が待合室の入り口で手を振っている。


「今から、とっておきのshowtimeがあるので、こちらへ」


低級霊が最高潮に歓喜に沸く。

支配人の顔も、人格が変わったかのように邪悪になる。


類と顔を見合わせ、うなづいた。


「ぜひ、見たいです」














「ええぞーー!!ネェちゃんッ!!!!!」



「トキコーーー!!!!」




おい。何だこれは?


100名程が入れるような宴会場。

前方で20人くらい、浴衣姿のオッサン達がステージ前で酒を片手にひしめき合う。

宴会場の中は煙草の臭いが染み付いていて、鼻腔にこびりつく。


ピンクやオレンジの間接照明がチカチカとステージ上をランダムに照らす。


目の前のステージでは、70代くらいの女性がヒラヒラでスケスケの服を着てゆっくりと蠢いている。


「今日はトキコさんか…」


隣の支配人はクソ真面目な顔でトキコさんのステージを凝視する。


「…善哉さん、こいつらまとめて呪〇しますか?」


類が不快感を露わにして聞いてくる。

やりすぎだ。


トキコさんは腰がクネクネとした妙な動きでヒラヒラの服を脱いで行く。


目の前のオッサン達は興奮して叫んでいる。


「うぉぉーーー!!!綺麗やで!!」


「おひねり、おひねりやぁ!!!」


落ち着けオッサン共。


「いよっ!!O県(いにしえ)の女神様!!」


隣の支配人がいきなり叫ぶ。

"古の"ってギリアウトだろ。


類が身体を震わせ、支配人を大きな両目で見つめる。

支配人に穴が空きそう。


「どうですか!!?今からが本番ですよ!!トキコさんの御開帳が!!まぁ、もうすぐ御仏壇で御開帳のご年齢ですがね…ハハッ!!!」


おい。さっきまで俺らを真面目に手厚く案内してくれた支配人はどこ行った?

類が支配人をゴミを見るような目で見つめる。


「善哉さん、〇しましょう」


類の目は本気だ。まずい。


「落ち着け」


前方で、大歓声が起こる。

トキコさんが遂に全裸になった。


「ウォォォォォッッ!!!」


「…」


類が支配人の背後に矢を放った。


「おい!」


「はぁ、はぁ…」


支配人に取りついていた低級霊は跡形もなく消えた。


「…俺我慢できないっす。こいつら、まとめて…」


そこで、目の前に誰かが立っている事に気付いた。

いつの間に。

俺にも類にも気配を悟られず近付くなんて、トキコさん何者だ。


「まぁ~、こねーに若ぇ男前が来るなぁ初めてじゃ」


そう言うとトキコさんは類に抱き着き、真っ赤な唇を押し付けた。

思いっきり、類の唇に。


また大歓声。


「ええのぅー!!若ぇの!!」


「わしにもしてくりょ~!!トキコさん!!」


類は固まっている。


口から、液体がこぼれ出る。


何だこの地獄絵図。


「ぷはぁ~、トキコ口移しビールのお味はい・か・が?」


下着姿で腰をクネクネさせて人差し指を立てる。

こいつら死ぬ気か。


類は大きく息を吸い込んだ。


「…おいッ!!てめぇら"ピーーーーーッ"!!!!!」


会場内が静寂に包まれる。


「”ピーーーーーーー!!!!”で、”ピーーピピーーーーッッッ!!!"じゃねぇか?ォォォォォオン!!!!?


「類!!」


さっきまで大興奮していたオッサン達がドン引きしている。


「おいトキコ!!!俺に"ピーーーーー"しろよ!!オオン!!!?」


「イヤアァァァァ!!?助けてェッ!!!」


「誰か、この若ぇのつまみ出せ!!」


「こねぇな下品な奴見たことねぇど!!」


「行くぞ、類!!」


類を肩に背負い、会場から運び出た。





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