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姫探し  作者: 温泉ことね
46/48

ホテルからの依頼


『件名:除霊依頼 お願いします。


初めまして。私、ホテル〇〇の岡本と申します。


ある部屋だけ怪奇現象が起き、何年も前から稼働できない状況となっております。

地元で高名な和尚様や神主様へ依頼しても一向に祓えず、従業員共々困り果てております。


確実に除霊して頂ける御方を探していた所、貴社のホームページを拝見しました。

是非依頼したく、メールを差し上げた次第です。

ご返信、お待ちしております。


ホテル〇〇 支配人 岡本 登

〒〇〇〇ー〇〇〇〇

O県O市・・・・・・






善哉事務所で勤務し始め、二か月が経った。


夏の暑さが本格化している時期に入っていて、毎日通勤で汗だくだく。

盆地特有の蒸し暑さで、セミ達はテンションアゲアゲで大合唱。



「善哉さん、7時頃にメールが来てましたが、確認されましたか?」


依頼メールは共有で、どのパソコンでも見れるようになっている。

まだ返信していないみたいだったから、一応声を掛けた。


「あぁ。O市内のホテルの件だろ?さっき電話した。」


類さんは朝から清彦と除霊依頼に行っており不在。


清彦は修行の一環で除霊依頼に付いて行く事が増えた。


「ちょっと重め案件だから、俺が直接やり取りするわ。絹代さんは他の仕事頼んだ」


「わかりました。」


パソコンに向き直り、仕事を進める。

まだ一度も会った事のない、長期出張に行っているかげ…なんとかさんの持っているカード履歴を確認する。

家賃に光熱費、水道代、その他ガソリン代や交通費。

これらは事務所の経費で計上する。


会社のクレカを持たせて使わせてあげるなんて、善哉さんさすがっす!!


会計ソフトで処理をしていると、善哉さんのスマホが鳴った。


「はい。善哉です。ご依頼ありがとうございます。いえ。…はい、では来週水曜に伺います。2名で、その部屋に宿泊で。」


2名…?


善哉さんが電話を切った。


「じゃあ、来週水曜に午前中の除霊依頼が終わったら、俺と類で行ってくる。絹代さんは次の日休みで」


「え”!!!?類さんとですか!?」


類さんと同じ部屋に泊まるって事ォ!!?


「…うん。今回は、念のため2人で行くよ」


神妙なお顔をする善哉さん。


「っと…。今まで、こういう依頼ってあったんですか?」


「あぁ。旅館や、ホテルの宿泊施設の依頼は多いよ。あとキャンプ場も」


「そっ、その度に、類さんと…?」


「?いや、今回が初めてだけど?」


善哉さんが怪訝な顔でこちらを見る。


「そうなんですね…」


善哉さんは、類さんが女性だって事を知らない。

もしバレたら…類さんはクビにされるらしい。


…大丈夫なのかな?


「…絹代さん、何かある?」


善哉さんが疑わしそうに目を細める。


「…!!いえ!!何も!!」


パソコンに向き直り、会計作業の続きに取り掛かった。


まだ善哉さんがこちらを見ているのが視界に入っていたが、

知らないふりをして"経費精算、経費精算、経費精算!!"

と呪文を唱えながらキーボードを叩いた。









「え?俺と、善哉さんで?」


外回りから帰って来た類さんは、大きな目を更に見開いて驚いていた。


「なんも予定ないよな?あったら、今すぐ電話して変更してもらうけど」


「いや、何もないっすけど…」


類さんは戸惑って下を向いた。

清彦も珍しく空気を読み、気まづそうに口を一文字にしている。


善哉さんは目ざとくその空気を読み取り、尚訝しげに私達を見渡した。


「何か引っかかる事があるなら、俺一人で行く。悪かったな」


そう言って息をついた。


「え!?嫌、なんもないっすって!!」


焦って否定する類さんを、善哉さんは鋭く見やった。


「いや、いい。無理すんな」


「嫌ですって!!重めなんですよね?善哉さんが来るなって言っても、俺絶対勝手について行きますから!!」


顔を赤くして類さんが言う。


「…まぁ、じゃあ頼むわ」


善哉さんは微笑してパソコンに向き直った。


「はい!もちろんす!!」









「どどど、どうしよう~!!!?」


善哉さんが外出した後、類さんが泣きついてきた。


「…ま、まぁ今までバレなかったんだし…」


「同じ部屋だよ!?」


類さんが頬に両手を当て、ここでないどこかを見ている。


「俺…終わったかも」


机に突っ伏して弱弱しい声を出した。


類さんは真夏でもカッターシャツの上からノースリーブの薄手セーターを着用している。

女子だとバレないように。


「男装用のインナーは着てるんだけどさぁ…」


突っ伏した腕の隙間から、類さんのクリクリした目が覗く。

かっわ。


「うん…。夏だし、寝巻を厚着ってなんか不自然ですよね…」


「だよね。風呂も、部屋についてるやつならいいけどさぁ。大浴場だったら…」


「ま、まぁ何か理由つけて、タイミングをずらせば…」


「…そうなんだけどさぁ~」


はぁっ、とため息をつき、類さんはまた腕の中に顔を埋め直した。


「清彦ぉ、お前何とかできない?」


清彦の顔を見ると、右目の上に青あざができていた。

さっきは気づかなかったけど、思わず二度見した。

朝の除霊で何があったんや?


「う~ん…」


ゴクリ。


「ないな…」


ずっこける。


「逆に、今まであの目ざとい善哉殿によくバレなかったのぅ?」


確かに。


「善哉さんは俺を小さい頃から知ってるから、その時の先入観で、今までずっと…」


そこで、類さんがハッとした顔をした。


「何か、いい方法を思いついたんですか?」


「いや、何か大丈夫な気がしてきた」


ずっこける。


類さんは、頭を掻いてニコニコと笑った。



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