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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第四章 対決!三魔像編
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第十話 無敵技は幻想なのか

 カラテ紳士、マシュマロ怪人、もとい私や後輩の影、それにレベッカ。

 彼女たちはまあまあの修行相手ではあった。

 しかし、レベッカは言うに及ばず、カラテ紳士たちも私を超える強さにはならなかった。

 私や、私より弱いレベッカの想像の産物だからだろうか。


 さっきの超獣ももしかしたら私の心が生み出したものかもしれない。

 かつては、ダンジョンでの突然死に繋がるトラウマとも言える存在であったから、あれだけの強さだったと。

 それでもゲーム終盤には十分勝てる敵になっていた記憶があるから、私にも勝てたのではないか。


 あれがスーパー超獣や原子力ザコでもきっと勝てるーー

 いや、当時は三ターン無敵のバリアを使わないと勝てなかったか。

 だとしたらあれらを召喚して戦えばもっと良い修行になりそうだ。



 試しに原子力ザコを心に強く思い描いてみた。








「し、死ぬかと思ったであります」


 十分離れていたレベッカでさえ、顔が煤け髪がチリチリになっている。


 私も脚が痺れてまだ立てない。

 当たる面積を最小にして波も……気属性ガードをしなければ体がバラバラに吹き飛んでいたかもしれない。


 原子力ザコは思ったより早く、本当に戦闘開始直後に自爆してきたのだ。

 念のため用心していたから何とかガードが間に合ったが、スーパー超獣を召喚するのはちょっと待った方が良さそうだ。


 先にすべきことがある。

 そう、全身無敵必殺技の開発である。


 未だに私は気属性を全身に纏うには至っていない。

 気属性自体は、熟練すればするほど適性の向上を感じられる。

 それでも一年しっかり使って、適性値の上昇は一パーセント未満だろう。

 リーレイの域に達するには三十年はみっちり修行しなければならないっぽい。


 その必要は無いけれど。


 必要なのは短くとも全身の無敵時間だ。

 音楽が変わり体が光っている間は無敵など、どこぞのアクションゲーム的なものは不要である。

 ーーその気になればリーレイならできそうではあるところが、また彼女のチートを感じるが。



 私は再びカラテ紳士やマシュマロ怪人こと私たちの影を相手に修行を再開した。

 相手が弱くても修行はできることに思い至ったのだ。

 鉄壁の防御、いつでも狙えるカウンター技術を磨くのには、こちらに余裕があるぐらいの敵が相応しい。


 もちろんメインは全身無敵必殺技である。

 敵の攻撃に合わせて、とにかく思いつく限りの技を使用する。

 このステージの良い所は実戦で思う存分に技を試せることだ。


 闘神像でも技を思い切り繰り出せるが、反撃が無いため無敵時間の検証はできない。


 後輩たち相手の組み手は、こちらからの反撃がどうしても抑えがちになってしまう。

 万が一にでも組み手相手の攻撃に合わせた全身無敵必殺技が成功したら、カウンターの必殺技が入ることになり、相手の生命に関わりそうだし。


 カラテ紳士たち相手だと、無敵時間が無くても私が痛い目を見るだけで済む。








 ああ、あれからかなりの時が過ぎた気がする。

 倒したカラテ紳士は数知れず。

 なのに私はまだ完全無敵時間を作れないでいる。


「くわははは! 昇り竜パーンチ! であります!」


 レベッカはかなり強くなり、以前の強さに合わせて作った自分の影を一蹴して調子に乗っている。

 しかしこの調子の乗り方……性格に後輩の影響が見て取れるな。

 飼い主に似るのはあり得ることだけど、よりによって後輩とは。

 憐れなりレベッカ。


 それにしても彼女のさっきの技、あれは完全無敵必殺技の代表格ではないか。

 ただ、あれでは全然無敵時間が無い、形だけのジャンピングアッパーだけれども。


 格ゲーをプレイできない今では、画面上でキャラクターの動きを見ることはできない。

 だがこうして他人が行う動作は見られる。

 そう、自身の身体感覚だけでは不足していたイメージが、他人を見ることによって補完されるのだ。


 私はレベッカの動きに、必殺技コマンドを当てはめる。


 →↓↘︎+P


 その時私は根源的な疑問に行き当たった。

 ふむ、そう言えばこのコマンドにはどのような意味があるのだろうか、と。


 →前進

 ↓しゃがむ

 ↘︎ええと、前傾かなそれともスライディングかな?


 Pはいいんだよ。

 パンチ一択でしょ。


 ちょっとこのコマンドを深く考えよう。

 実際にトレースだ。


 前に歩く〜てくてくてくてく。

 しゃがむ〜前進の勢いが殺される。

 前斜め下と同時にパンチ〜地面にパンチする。


 うん、どうしてもこんな動きになるな。

 爽快感ゼロ、気持ちの良い動きではない。

 もっと短縮してみよう。


 →前に進みかけ

 ↓しゃがみかけ

 ↘︎足元の少し先にパンチ


 ……やはり変な動きだなぁ。


 それに今更だが疑問が出てきた。

 前上方向に攻撃だったら↗︎コマンドになるんじゃないか。

 そりゃ→↓↗︎なんて入力が難しくて肝心なところでミスしそうだけど。

 一応この動作もやってみよう。


 →前進

 ↓しゃがみ

 ↗︎ジャンプ

 Pパンチ


 あ、今何か閃きが走った。

 これじゃあダメだ。

 やはり→↓↘︎Pには理由がある。


 ーーそうだ、この世界は魔法だってそうじゃないか。

 素直なイメージどおりではなかっただろう。



 さて、考え直しといこうか。


 →前向き、攻撃の意思、前捌き。

 ↓潜る、地下、跳躍・飛翔の前兆、雌伏、頭上注意。

 ↘︎躓く、ブレーキ、前転、用心深さ。




 色々考えて試してみた。

 それでも納得できる技にはならない。


 ふぅ……

 ついため息が出てしまった。



 →↓↘︎

 そうだ、まだ昇竜コマンドが難しい部類だった頃には、出し方のコツが紹介されていたこともあったっけ。

 Zを書くようにすると上手く出せるとか。


 ーーZって、orzのお陰で挫折っぽいイメージあるよね。

 Z戦士も普通の人間なんてゴミクズ扱いできるぐらいに強いのに、新しい敵が出るとよくやられるし。


 挫折か。

 挫折してもすぐ立ち上がればいいって言うけれど、実際挫折したら暫く無気力になるのも仕方ないよね。

 じっくり充電してから出発したっていいじゃない。

 え? 世の中には過充電してる人が多過ぎる?

 ……社会問題は難しいね。


 しかし気の充実を図っている私が無気力のことを考えるとは。


 ……無気力……


 ふと気属性の“分散”を自身の内から使ってみようと思った。



 ドフン


 体を縛る圧力のようなものが一気に抜けた感覚。

 無重力に放り出されたらこんなんだろうか。

 この状態中に攻撃を食らったら大ダメージを受けそう。


 ーーなのにやってみずにはいられない。


 私は好奇心に負けて、レベッカにそこそこ抑えた攻撃を放ってもらうよう頼んだ。


「がってん承知であります!」


 何張り切ってるのか。

 むしろ力抜いてほしいんだけど。


「行くであります!」


 彼女の掛け声に合わせて私は無気力の気を使う。


 彼女はゆっくり宙に浮き、胸を反らして口に光の粒子を吸い込み始めた。


「滅びの!」


 !?


「バーストシュトローム!!」

 

 極太ビームが射出された。

 超獣を横取りされたやつだ。


 おい! そこそこ抑えた攻撃って言ったでしょ!

 フィニッシュ決めにきてるじゃないか!


 もう私の無気力状態は体から逃げる力すら奪っている。

 レベッカは何かまずいと思ったか、顔を横に向けビームの軌道をずらした。


 いやいや、口閉じなきゃ。

 先に射出されたビームはこっち来てるから。


 それが私に直撃した。


 ほわわわわ〜ん


 変な音がする。

 弱った心から生み出された砂漠の怪物が、浄化される時の声みたいだ。



 あれ? ビームが私の横を走って遠ざかっていく。

 いつ私に当たったんだ?


「幻?」

「いいえ本物であります! 丸焦げになっても……いえいえ! 完全に当たっておりましたが、自分もびっくりであります!」


 丸焦げにするつもりだったのか?


 それよりも、もしかして、無敵だった? 今。

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