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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第四章 対決!三魔像編
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第九話 横取りはトラブルの元

 カウンターがきれいに決まった。

 してやられた後の逆転だけにすこぶる良い気分だ。

 最高にハイってやつだ。

 このテンションのまま猛攻してK.Oまで突っ走りたい。


 だが超獣がそうやった結果、今の有り様なのを考えると躊躇がある。

 攻撃の先端だけを当てにくるような慎重さを見せている敵も、ついさっきまでは今の私と同じだっただろうから。


 集中すれば、攻撃を見てから反応しても十分防御が間に合う距離。

 私の攻撃もまた敵にとっての非脅威の間合いである。

 もどかしいが今は集中だ。


 しゃがみ中キックの先っぽだけを当てる絶妙な距離感を維持。

 敵のうっかりに乗じてダメージを与えられれば良し。

 そうでなくても問題ない。

 敵の攻撃パターンを読んで、挙動の起こりを捉えれば……


 ここだ!


 恐らくは中攻撃程度の、敵の触手攻撃に合わせて突進系パンチを当てに行く。

 初動を潰しつつ間合いを詰める作戦。


 よし、触手を伸ばそうとしている。

 気属性を込めているから打ち勝てるぞ。


 !


 伸びてくるはずの触手が切り離された。

 私のパンチは触手を粉砕したが敵は防御の体勢を取っている。

 そして来るのは二度目の超必殺技か。

 さっきの反撃で怒りゲージが溜まっていたと見える。

 これをまともに食らえば私の負けだ。


 眼前に触手となった敵の体が口を開ける。


 負けーー




 食らえば、だが。


 先程の私の突進系パンチは、敵に当たれば勢いを止めるタイプの攻撃だ。

 つまり私は敵の懐に飛び込む前に、止まって()()()()()()()()()()()()()


 「レイジング・ストリーム!」


 飛び道具を気によって地面に反射させ、自分の周囲に防壁を吹き上がらせる。

 少しばかり体力を失ったが、敵の超必殺技をガードしたと思えば断然軽い。

 カウンターが入れられる分だけこちらの方が心沸くだろう。



 敵の触手が多過ぎて、ほんの数本防壁を抜けて私に刺さった。

 それでもほとんどの触手は千切れ、ズタボロな断面を晒している。

 再生が半端な状態で超必殺技を使った反動だろうか、敵の体は再生を始めない。


 いよいよとどめだ。

 ここにきて油断などしない。

 一気に決めてやる。


 気属性を足に集中させる。

 弩弓の如く己を撃ち出して、両足で敵を貫くのだ。


「超烈……」



 シュゴオオオオ!!



 っ!?


 背筋と腕を使って地面から飛び上がろうとした私の横を、熱波が、極太の赤いビームが通過した。

 満身創痍だった敵はその一撃で滅却された。


「はあっ!?」


 思わず大きな声を出してしまったが仕方ない。

 独力で勝利を掴む権利を奪われてしまったのだから。


 振り返り熱波の出所を確認。

 んちゃ砲を撃った眼鏡の女の子みたいに大口を開けて、ピンク髪の美少女が踏ん張っていた。



 ーー誰よあんた。

 初対面なのに不思議とイラッとするのは、対戦に割り込まれたせいだけか?

 白いベレー帽、黄色っぽいブレザーに紺のミニスカートって格好があざとい感じで私のイライラを刺激するぞ。



 私の睨みに気づいたか、少女が姿勢を正した。

 そしてじっとこちらを見ている。


 何だ、やるのか? お?


 少女は突然走って近づいてきた。

 私の前で急停止した彼女は、満面の笑みで頭を下げて言った。


「危ないところだったようですが、ご無事で何よりであります! 自分のブレスはどうだったでありますか!?」


 目をキラキラさせて尋ねてくる。

 が、同時にブレスで助かっただろと恩着せがましく迫られているようだ。


 ポカリ


「痛い! 何するでありますか!」


 あ、ついゲンコツを落としてしまった。

 初対面の人に対してこんなこと……

 少々動揺して少女の顔から目が離せない。


 淡いブルーの目で瞳孔が縦に割れている。

 おや、どこかで見たことある気がする爬虫類系の目ですな。


 誰だろう。

 ゴニューゲル師やリッズアド先生が似た目をしてるけど、二人ともドラゴニュートで少女とは違うっぽいし、それに二人は男だ。


 私が眉根を寄せて考えていると、少女は怪訝な顔をして下から横から私を覗いてきた。


「どうしたでありますか? 敵が強過ぎて負けそうだったからショックでありますくわ?」


 あっ、分かった!

 分かったついでに一発。


「痛い! さっきからなぜに!? 自分が何したって言うでありますか」


 し・た・ん・だ・よ〜!

 獲物の横取りを〜。

 あと一発だけで勝てたやつを〜。

 殺意の波動に目覚めた武闘家から割り込まれて、戦闘前のラスボスをボコられるのとは違うんだぞ。



 分かってんの? こら、レベッカ。



「そ、そうだったでありますか! さすがご主人様! そうとは知らず失礼したであります!」


 レベッカはバッと九十度のおじぎを見せ、姿勢を戻すと同時に手を広げてヒラリと回転。


「ところでどうでありますか、この姿?」


 どうって、そりゃ見た目は美少女よ?

 でもその前に説明することがあるでしょうよ。


「ご主人様や妹様みたいになりたいな〜って思ってたら、ここでその願いが叶ったんでありますよ」


 どういうことよ。

 適当すぎじゃない?








 聞けばレベッカは魔女神様に扉へと飛ばされて、体感一年以上私の影や後輩の影と修行していたそうな。

 その過程で変身能力を身につけ、影を倒し次のステージに進んだと。

 そこで遭遇したのが私……と、私がとどめを刺すばかりだった超獣。


 いやまあ、あまりしつこく言うのはやめよう。


 だが聞き捨てならんことがある。

 私と後輩の影を倒した?

 一年そこそこの修行で?

 時間の進み具合が狂った精神的な部屋なの?

 それにしても倒した?

 そこまで強い気配は感じないが?


 私の疑う内心を察したか、レベッカが両手を胸の前で振って弁解の構えを見せている。


「か、影なのでご主人様や妹様のパチモンであります! 猿真似であります、この猿野郎!」


 ーーえ、なに?

 今さらっと罵倒されなかった?


「メイドボ……」

「間違えたー!! 違うであります! まださっき話せるようになったばかりであります! 間違えても仕方ないであります!」


 とても流暢な人語を話しますよね?


 まあ良かろう。

 こやつを屠るのはいつでもできる。

 それより案内してもらおうじゃないか。

 一日で一年修行できそうなその部屋へ。


 よろしく、の意味を込めてレベッカの肩をパン、と叩く。



 どこからともなく旅の仲間が増えた時の音楽が流れた。



 レベッカが驚いてキョロキョロしている。

 ボス戦の音楽や階段を上り下りした時の効果音などは、この子一人だけの時には流れなかったそうだ。


 そんなことはどうでもいいから。

 はいどっちに行けばいい?



 レベッカの指示を受け私が先頭を歩く。

 先導してくれればいいのに。




 ーー歩けども歩けどもレベッカが元いた場所に着かない。

 彼女(?)も首を傾げている。


 やっぱり先頭行きなよ。

 敵とか出ないじゃん。


 背中を押して彼女を先頭に立たせた。


 カチッ、ピコン


 また変な効果音が鳴った。




 そしてレベッカが先導を開始して程なく、次の部屋への入口が見つかった。


 ーーそういうことね。


 さっきのカチッ、ピコンは先頭キャラ変更の効果音。

 それで私たちのいるこのエリア、もしくは三魔像の世界全体は、先頭キャラによってその性質を変える、と。

 全然見当違いかもしれんけど。








 次の部屋は白い雲の漂う青空みたいな空間だった。

 私は今、空を歩いているけれど、レベッカは楽しそうに飛び回っている。

 自由に大空を飛びたいという彼女の願望がそのまま叶ったかのようなステージだ。


 ところで影とやらはどこに?


 ピタリと空中で停止して、レベッカはじっと雲を見つめ始めた。

 もくもくむくむくと雲が形を変えていく。


 ヘイ! ゴースト退治屋!


 出来上がったのは完全にマシュマロマンだ。

 どこが私よ。


 ドヤ顔するレベッカの頭をくしゃくしゃに撫で、マシュマロ怪人を瞬殺。


 はい、隊列変更。

 先頭私ね。


 心を込めて雲を捏ねる。

 こねこね〜、こねこね。


 できました。

 強さ設定自由、技オプション付け替え自由の格ゲー戦士、カラテ紳士。


 よし、お前のクンフーで私を鍛えるのだ!

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