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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第三章 勇者死すべし! 編
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第十一話 詰んだ?

 一つの装備を手に入れた。

 まだ性能の全ては明らかになっていないが、魔遊帯に立ち入った感じでは中々の優れ物だと思える。


「この分なら俺の弓も期待できるな! 流星群みたく空から降り注ぐとか? 世界一周する矢もいいな!」


 そのため次に入手する予定の弓に関しても、サジの期待が高まるのは自然なことであった。


「そんなわけないでしょ」

「それはスキルの領分じゃないかと思う」

「夢見過ぎですよ、サジさん」


「いいから! 武器に夢見るのは男子の性分なの!」


 仲間の評価は冷静だ。

 冷たいと言って良い。


 それにもめげずに夢想するサジは、仲間三人と現在魔遊帯を左手に、東へと進んでいる。


 次の目的地はこの先の密林を抜けた所にある一つの里。

 地産の弓矢による狩猟が盛んな地域で、世界最強の一人と名高いミナテミスの出身地である。


「世界最強が弓使いだってよ。くぅ〜っ、こりゃ弓使いがそう言うポテンシャルを持ったジョブってことじゃね?」

「バカね。かのヘラクレスだって弓も剣も使う豪傑だったのよ。そのミナテミスがゴリマッチョなだけでしょ」

「たすかに、サジさんはヒョロヒョロですからね」

「ガーン」


 ローラはともかくとして、意外なルケアからの辛辣な言葉。

 サジはショックを受けた。


「ガーン」


 ついでにカッツォもショックを受けた。

 彼もヒョロガリ系男子の自覚を持った一人である。

 元の世界では中肉〜ちょっとスマートぐらいだったのだが、この世界の戦士たちと比べると何と見劣りする体格か。

 強さが戦闘力という数値に依るとしても、せめてアスリート的な体は欲しいと思うのだ。


「いや、一応少しは付いてきたと思うんだけど。筋肉」


 胸板や腕を触って独り言つ。

 サジも隣で同じことをやっている。


 ……もう少し鍛えよう。


 カッツォはそう思った。








「アマゾn、じゃなくて密林!」


 サジは驚愕した。

 目の前の木々の密度に。


「もう壁じゃん。どうやって抜けんだよこれ」


 あまりにも木が密生しているため、人が通る隙間すら無いかのように見える。


「大丈夫です。この森の外周はこんな風ですが、内部はもっと隙間が空いているはずです。外周も探せば通り道が見つかるはずです」


 外周の木々が範囲を広げる勢いは凄まじいが、密生し過ぎていて枯れる木も多いらしい。

 四人は外周伝いに移動を始めた。




 波打つ木々の壁を見て歩いては、時々見つかる隙間に体をねじ込もうとして諦める。

 もう何度同じことを繰り返しているか。


「このまま進んだら森の切れ目まで出るんじゃない?」


 カッツォはうんざりしてルケアに尋ねた。


「ものすごく高い岩山が聳えてるそうですよ。ほぼ垂直の岩壁を登れる人ならそっちから行くみたいです」

「じゃあ無理だ……」


 ロッククライミングなんてやったこともないし。

 もしかしたら今の身体能力ならできるかもしれないが……

 それでもカッツォは諦めて密林を抜けることにした。

 落ちたら死ぬとか、全くもって怖すぎるからだった。




 雑談やら各々考えごとをしている内にようやく通れそうな場所を見つけた。

 体を横にしたり少しばかり木登りをしたりして木々を縫うようにして抜けた。




 木の壁を抜けた四人は一息吐いた。

 ルケアの言うとおり内部は木と木の間も幾らかは空いている。


「……でも暗いな」

「葉がこれだけ茂ってるんだからしょうがないかな」


 ルケアの魔法で光を生み出しているが、そうでもしないと互いに誰かも認識できないぐらいの暗さである。


 そんな中、ローラはルケアにしがみつかんばかりに寄り添っている。


「何してんの?」

「だって……ひっ……カサカサって足元や頭の上でひっきりなしに音がしてるのよ?不気味じゃないのよ……」

「そんな、ただの小虫で……」



 ドサッ



 呆れるサジの頭に何かが落ちてきた。

 ドム、と弾力がありズシリと重い。


「うお……首が捻挫するかと思ったわ。……ん? 何だよ」


 カッツォたちが目を見開いている。

 特にローラは開けた口を震わせ顔も青い。


 怪訝な顔をしてサジは頭に手を伸ばした。


「ひっ!」


 グニ、という感触が手に伝わる。

 思わず引き攣った声を出したサジだが、思い切って頭上の物体を払うように手を振った。


「うわあぁっ!」


 矢を射ったのは反射的にだった。


 ボンレスハムのような丸々としたヒルが矢を受けのたうち回る。

 だがそれも僅かの間。

 ヒルは助けを求めるように口吻を伸ばしたが、やがて事切れた。


「魔物じゃねえのかよ……」


 魔法の矢となってヒルを貫いた細い金属棒を、ヒルから抜き取り血を拭う。


「驚き過ぎですよ、たかがツツィヌコに。その辺の枝切れで払えば良かったのに」

「これがあの幻の!」


「?」


 どこが幻なのか。

 ちょっとした森に入ればどこにでもいる生物なのに。

 それともさっきからの騒ぎと合わせて一連の冗談なのだろうか。

 ルケアは首を傾げたが、深く考えないことにした。


 一方サジは金属棒を拭く手も止めて驚いている。

 かの有名なUMAとこんな所で遭遇するのか、という驚きだ。


「また落ちて来んのかな?」

「血を吸われたら無理に剥がさないでほしいです。口吻の一部が残ってしまうんで」

「やっぱヒルだろ!」


 サジは地面を叩いた。

 たかがヒルならとっておきの金属棒じゃなく、そこらの棒切れなり石ころでも矢として使ったのに。


「いや、まあ俺が何の媒体も無しで矢を作れればいいんだけどよ…………っと、そんなこたいいや! 早く行こうぜ!」


 気色悪い巨大虫が出る森など早く抜け、武器を手に入れるのだ。

 サジは気持ちを切り替えて三人を促した。



 しかし四人が進もうと思った矢先、ザワリ、と辺りから生き物の気配が遠ざかった。


「え、何……?」


 怯えていたローラですら気持ちを緊張と集中に切り替え始める。


 カッツォたちは既に戦闘体勢だ。


「騒ぎ過ぎたか? 魔物を呼び寄せちまったみたいだ」

「いいから。とりあえず戦いながら安全な場所を探そう」


 互いに背を向け死角を少なくして進み始める。



 ザザザッ


 草と落ち葉をすり散らす音。

 地を這うタイプの魔物だろうか。


「ひぎゃああぁぁぁ!」


 現れた魔物を見てローラは叫んだ。


 多数の節が連なった体は長く、それぞれの節からは一対ずつ脚が生えている。

 尾からは鋭い棘が伸び、もたげた鎌首では橙と黒のマダラ模様の触覚が動く。

 先頭の節から伸びた脚は鉤状に曲がり、ガチガチと噛み合わされており、まるで牙のようだ。


「ム、ムカデエエェェェェ!!!」


 二メートル程の体長と、胴囲四十センチメートル程もあるやや扁平な体はムカデそのものだった。

 多足類の苦手なローラは悲鳴を上げると同時に飛び上がった。


「……え?」


 飛び上がり、すぐ地に着くはずなのに。

 足から何の感触も返らない。

 彼女は瞑っていた目を恐る恐る開いた。


 案の定、自分の体が浮いている。


「え? ど、どうなって……」

「うわあぁぁ!」


 戸惑いの最中、突然カッツォが彼女の周りに剣を乱れ振り、サジが体当たりをしてきた。


「痛っ……! もう! いきなり何すん、の、よ……」


 仰向けに倒れたローラの目に入ったのは宙に浮く魔物。

 頭には二個の大きな目と、それを取り巻くように六個の小さな目が嵌っている。

 胴体は中心部が膨らみ尻にかけ窄んでおり、四対八本の脚がワサワサと蠢く。

 胴体が人程もある、巨大蜘蛛だった。


 よく見るとその魔物の周りには糸が張り巡らされているが、魔物の下だけはポッカリと穴が空いたように糸が無い。

 ローラの顔は真っ青だ。

 カッツォとサジに間一髪で助けられと理解したのだ。


「こ、こいつらもしかして……」

「ああ、最悪だ。クラス四の魔物だってよ……二体ともな」


 詳細に戦闘力を解析している暇などある筈はない。

 だがその強さは四人とも痛烈に感じ取っている。


 ローラはサジの舌打ちが、ズンと体の芯に響いてくるように感じた。

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