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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第三章 勇者死すべし! 編
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第八話 魔族のせいなのね

「おっ母のご飯、おいしいだす〜」


 戦友三人が同じテーブルに着いていることも忘れ、ルケアは目に涙を浮かべ実家の食事を掻っ込んでいる。


「あらあら、はすたないだすよ。王都に戻った時に恥かかないように、ほどほどにね」


 柔らかく娘を注意するルケアの母親だが、娘の元気な姿と実家に帰って寛いでいる様子に目を細めている。


「ええのええの。うちに帰った時ぐらい、たっぷり甘えてけ」


 娘が都会に染まってもう帰って来ないかも、と思っていた父親も彼女の帰郷が嬉しいらしい。

 完全な甘やかしモードに入っている。


 片や四人いるルケアの弟、妹もルケアの背中に乗ったり話しかけたりして、賑やかさの向上に貢献している。



 そんな家族団欒を前にして、カッツォたち三人はほのぼのした気持ちになっていた。


「なんか、いいよね」

「そうだな。俺、今ならお袋に優しくできるかも」

「ふん。親は普段から敬いなさいよ。この反抗期少年が」

「うるせえ。お前も半泣きになってんじゃねえよ」

「うるさい。こっち見んな」

「美味しそうだよ。僕たちも食べよ食べよ」


 里心が顔を出してきた三人は、食事に没頭することでその気持ちに蓋をした。



 ところで農耕と牧畜が盛んなこの村は、食料事情がとても良い。

 カッツォたち三人は当初この世界の食事に不満を抱いていた。

 豊富な調味料に慣らされた世界から来たのだから、仕方ないところはある。

 しかし今ではその素朴な味付けにも大分馴染んできている。

 そんな三人に今出されている料理は十分ご馳走と言えるものだった。


「このミルク濃厚〜。チーズもおいしい〜」

「ん、お嬢さんお目が高いのん。これぁうちで一等育ちのええ奴から絞ったもんだで」

「え〜、そうなんだ〜。うれし〜」

「あらまあルケアが二人いるみたいだすねぇ」


 ルケアの両親はローラのことを気に入ったようだ。

 娘と歳が近く気の良さも感じる。

 娘と仲良くしてくれそうだと思うと自然と笑顔になり、応接も懇ろになるというものだ。



「ねえルケア。寛いでるところ悪いけど、防具のこと」


 ふとした拍子に出たカッツォの言葉に、反応したのはルケアだけではない。


「そう言えばルケア、あの、あなたの身につけていた物なんだけど……」

「……そうだ、おめ、教会で一体何やっとるだ? おらぁ、おめが都会で働きたいって言うから、神父さんみたいなことならええか思て送り出しただが」


 娘が帰宅した時の格好が気になっていた両親は、ここぞとばかりに娘を問い質す。

 騒ぎを起こして村に入った後しばらくして慌てて装備を外したルケアだったが、鉄鋲打ちの布を巻いた拳は、しっかり両親の目に入っていた。

 ルケアの両親とてそれが気になってはいたものの、突然娘が帰って来たことの喜びが勝り歓迎一色になってしまったのだ。


「そ、それは……あの、お、王都での武芸の嗜みだすよ!」


(!?)


 そうか、と首を傾げながらも納得した様子の両親だが、驚いたのはカッツォたちである。


(そんなすぐ分かる嘘言ってどうすんのよ!)

(な、何で正直に言わないの!?)

(なあ、俺たちが本当のこと言った方がいいのか?)


 三人は目配せし合ったが、意思の疎通はできていない。


 結局三人はその後、ルケアの両親からの質問に曖昧な返事をすることで場をやり過ごした。








 翌日も牛馬の世話や畑の手入れに参加しただけだ。

 また一日が過ぎようとしている。


「俺、ルケアの親に言おうかと思う」


 夕方、納屋で干し草を寄せていたサジが言った。

 カッツォとローラはピッチフォークを使う手を止めた。


「言うって、魔族を倒すために旅してるってこと?」

「それしかねえだろ」

「なんかムカつくわね、その言い方」


 ローラがピッチフォークを手放す。

 カタン、と音を立ててピッチフォークが倒れると、「何だよ」とサジが受けて立つような威勢を見せた。


「ちょっと! 何でいきなりケンカ腰になるの!? 落ち着いてよ」


 カッツォが二人の間に体をねじ込むように割って入ると、二人はフン、と鼻息荒く距離を置いた。


「ルケアが言えねえなら俺らから言うしかねえじゃん。嘘ついて旅を続けさせて、それがルケアの重しになったら良くねえだろうが」

「あんたのムカつく言い方だと上手くいかないって言ってんの、私は」

「ああ!?」

「何よ!」


「だから落ち着いてってば!」


 諍い続けようとする二人に挟まれ縮こまっていたカッツォが、伸び上がって二人を撥ねのけた。


「僕たちが興奮してもしょうがないじゃないか! ルケアの親にもいい印象を与えないでしょ」


 珍しく怒り気味のカッツォを前にして、二人の気も鎮まったようだ。


「ふう………………分かった。俺らが悪かったよ」

「そうね。なんだかいつもなら気にならないことでイラついちゃったわ」


 カッツォはホッと一息吐いて、怒らせていた肩を下げた。


「なんか、ごめん。僕も怒りっぽくなってるかも」


「ぷっ」

「ははっ」


「な、何?」


 カッツォが謝ると二人は可笑しそうに噴き出した。


「いや、あんたがあんな怒り方するなんて意外でさ」

「マジでな。思い返したら笑えてきた」

「何それ酷い!」

「いや悪い悪い」

「でも何でかしらね? 小さなことでイラついちゃったわ」

「もしかしてこれが……」

「これが?」


 カッツォは真剣な顔をし、二人はカッツォの次の言葉を待つ。


「魔族の力……かも」

「これかぁ!」

「マジ許せんな!」


「僕、それとなくルケアに言ってみるよ。正直に言った方がいいよって」

「うん」

「分かった。頼む」


 不機嫌の原因を表現できず、以前聞いた魔族の話を押し当てることで納得した三人は仲違いを有耶無耶にした。








 翌朝――


(さて、どうやってルケアに言おうかな)


 昨晩からそればかり考えていたカッツォは、起きたばかりのボンヤリした頭で食卓についた。

 ルケアの両親が真剣な目で彼を見ていることには気づいていない。


(おい、前見ろ前)

(カッツォったら、ねえちょっと)

「え、何? ……あ」


 サジとローラに促されようやく顔を上げたカッツォは、ルケアの両親と目が合い動揺した。


「す、すいません、おはようございます。あの、何か……」

(いや、違う! ここで言わないと……)


 お嬢さんについて、と切り出そうとしたカッツォは目の前のルケアの両親が頭を下げたことで更に狼狽した。


(え? 何何!?)


「娘から聞きますた。何やら世の中を良くするための旅をすてるんだと」

「まったくこの子ったら、わたすらが心配すると思って適当なこと言うもんだから」


「でもちゃんと言ったじゃないだすか」

「分かった分かった」


 クシャクシャと両親に頭を撫でられ、肩を抱かれるルケアは膨れ面ながらも気まずいような、照れたような様子だ。


(そっか、自分で解決できたんだ)


 少しルケアを下に見ていたのだろうか。

 カッツォは反省し頬を掻いた。

 と同時に反対する風でもないルケアの両親を見て安堵した。



「壮大な話の真ん中に娘がいるかと思うと、栄誉かもすんないけどが、やっぱ心配で……んや、もう納得すたことだすな。どうか娘をよろしくお願いすます」


 床に手を突き懇願する夫妻に、カッツォたちは姿勢を正して答える。


「娘さんは僕たちが必ず守ります!」


 口々に紡がれる「守る」やら何やらの言葉に、ルケアは顔を赤くして手で覆った。


 彼女の両親の微笑を見るに、旅を続けることに本当に納得してくれたようであった。



 そして本題の装備のことであるが――


「そう言えば、おめが旅出るんだったらどうすっかなぁ」

「何がだすか?」

「んやな、いつか送ろ思ってな、テパ爺におめの服頼んどったけんど」


 ルケアと三人の動きが止まった。


 ルケアの父親は気づかずに続ける。


「おめが旅出るんなら送っても受け取れんら? 着て旅するにゃ洒落とる服だで」

「おっ父ありがと!!」


 ルケアは父親に抱きついた。


 突然抱きつかれた父親だけでなく、母親も目を丸くした。

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