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闇ニ玉散レ百剱  作者: 亜空間会話(以下略)
集えよ光、束ね束ねて華となれ
50/61

間章 「紅は踊る・4」

(2020/4/22 誤字修正)


 コロナの影響で月の半分休み……執筆期間は取れるんですが、夜勤もないし給料半分以下やんけ+名古屋経由なんで実家に帰れないかもしれぬ。ホットスポットを通って地元にばらまくなんてことは、人死に歓迎派の私でも胸糞悪くてできやしませんねぇ……リアルだしね。


 いずれそういうのも書きますが、資料採取に私情不要、というか集め終わってるからとっととあっちいけ状態です。


 どうぞ。

 一ルーケに迫る刀身を振るい、一身よりもやや低い背丈の赤目ロゴムを斬る。たったそれだけのことを、もう何度繰り返したのかーーペルテナは、騎士たちが疲れを見せ始めていることを察していた。騎竜のクジェロから降りて敵を手当たり次第に倒させ、自分も同じように剣を振るって敵を倒していく。


 第二軍、第三軍も到着し相手をすり減らしていくが、数が減る様子はない。まるで幻と戦っているような気分だった。手応えはあるのに、敵の数だけが減らない。


「おい騎士さんよ、戦士長みてぇなのをもう十人は殺ったってのに、敵の士気がちっとも変わらねえぜ! ほんとに幻なんじゃねえだろうな?」

「……あれか。いや待て、何人いるんだ?」


 まったく同じ武器を持った戦士が三人、同時に襲いかかる。瞬間、傭兵と逆方向を向いたペルテナは同時に四人の赤目を斬った。


「やるぅ……その剣で四人斬るかい」

「貴様こそ、私より早くその剣を振ったな」


 二ルーケを少し超える大太刀ばけものである。一身棒を両手でここまで早く振ることも難しいとされているが、この剣士は片手でそれを振った。


「クジェロ! 突っ込むぞ!」

「ギュルォ!」


 騎竜とする紅錬蛟の背に飛び乗り、騎士は敵の本陣と思しき場所へ駆ける。大太刀を肩に置いたニミットは、鋼筋馬に飛び乗ってそれを追った。


「お伴するぜ、騎士さんよぉ!」

「無茶を……!」


 そこまで広くない森を取り囲むように、三つの分隊が展開されているーー隊長自ら隊列を崩すかのごとき暴挙であるが、兵士はそこにとどまり、騎士のうち何人かは続く。


「余力のあるものは私に続け、一気に森を囲む!」

「「「応ッ!!」」」


 騎士たちは森に迫り、次々に赤目たちを切り伏せていく。幻であろうと実であろうとお構いなしに、ひたすらに切り続ける。そして、どうやらゲリラ戦法なり用いる予定であったらしい木陰に潜むものたち、倒れた兵士から武器を奪ったものたち、そういった残りも徐々に平らげられていった。


「第四軍が到着したか、一気に本陣の森を落としに……!」

「待て、ちょいと早いぜ! 全体を囲むのを待つんだ」


 勇み足でさらに進もうとしたペルテナは、さすがに血が騒いでいたことを自覚した。


「すまない……相手がどれだけいるか、未知数なのだったな」

「いま伝令があった。相手は魔術で数を増やしている可能性があるそうだ」


「なに……? 肉のある幻を作り出す魔術だと?」

「魔王国にもそんなのはいなかったはずだけどな。魔将軍とおんなしくれーの力がある、誰の言うことも聞かねぇ化身がいるならほんとにヤベぇぞ」


 かの「従魔将軍」がその称号を頂いているのは、恐るべき強者たちを下し魔王のしもべとしていった功績があるためであり、優れて魔物自在操術ヴォヅィーキルベに長けるといったような意味ではない。魔将軍ですら、ただ魔力のみで命を量産することはできないのだ。


「それに、三体という事前情報があった三頭偽竜も……」

「ああ」


 ニミットは、視界に入る大きな影が十ではきかぬほど多いことを分かっていた。二人はもっとも近い敵に近付き、協力して倒そうとうなずき合う。そこに地響きのごとく竜の咆哮が轟き、紅の稲妻が爆発的に広がりーー




「また増え……いや、なんだあれはっ!?」

「おい、もうわけわかんねぇぞ! こんなことができんのは紫等級以上のバケモンだけだ、俺らだけじゃどうにもならんぜ、おい!」


 壁と見えるほどに、恐るべき数の軍勢。統率がとれていないことが何よりの救いであると思える、あまりにも大勢の偽竜であった。否ーー統率が取れていなかったとしても、緑から緑青等級である三頭偽竜が百を超える数でこちらに向かっている、というだけでもあまりに惨い仕打ちであろう。


「……行くぞ!」

「無茶苦茶言うんじゃねえ、死んじまったらおしまいだろうが!」


「分かっている! 私が独力で戦ってきたとでも思っているのか!?」

「そいつぁ、俺もだがーーだから死なせたくねえんだ、俺は!」


 王国軍は教育機関としての役割が強いとはいえ、国防を担う組織である。百を超えるモンスターの大軍など発生し得ないが、軍勢を蹴散らす怪物ならばこれまでに何度も出現してきた。そのたびに傭兵団の助けも借り、こうしてともに戦う背景ができている。


「違うな……お前は仲間を守れればいいのかもしれん。だが、私が守るのは国だ。一兵卒として、騎士として……国民として、私は戦場に立つ」

「だから命を捨てるってのか? ふざけんな……!」


 それも違う、と騎士はかぶりを振る。


「部下も同輩も死なせたくはないし、私とて死にたくはない。だが民は死なせられん。誰にも救われず死んでいくものがいれば、私はそれを救う。騎士だからな」

「ったく騎士の矜持ってのは、ほんとにめんどくせぇな……しかも付き合わせんだろ?」


「そうだ。行くぞ、傭兵」

「承知したから……生き残らせてくれよな」


 騎士は、跳ねるように這いずる蛇へ剣を向ける。


「当たり前だ、お前も国民のひとりなのだから」


 騎竜クジェロが鋭く吼えたのに応えるように、蛇は六つの視線でペルテナとニミットを照らした。尾をべたりと地面につけ、首を突き出す構え。利点を心得ているばかりか危険を冒すことを知っている、恐るべき練度を感じさせた。


「……やつは、人間と同じくらいに技を磨いていると思え」

「見りゃ分かるぜ騎士さん、信用してくれよ」


 そこかしこで同じような戦いが起こっていた。戦場を俯瞰すれば、それはごくありふれた消耗のひとつでしかないことが分かるだろうーーしかし、当人たちにとっては生死のかかった局面である。


「ここは死守する。騎士剣、術理解放っ!」


 災濫大陸人のもたらした超技術により細密な立体魔法陣が織り込まれた騎士剣は、いくつかの特殊機構を持つ。内部術式の切り替えには術者の適性を要するため、魔術が不得手なペルテナに使えるのは「魔刃延長」のみ、術理解放をしたところで魔力に任せた剛性を得るだけのこと。無双の活躍は期待しようもない。


 ーーそうであっても、守れるものはある。


 振り上げられた三頭偽竜の頭部が、あやまたず騎士に降り下ろされる。とっさに避けたニミットは、その爆発的な風圧とーー金属塊がひび割れるような、恐るべき高音をまともに食らった。


「うっ、なんだこの音は!?」

「私だ」


 骨格も腱もめちゃめちゃに傷めたのだろう、ざっくりと割れた鼻面から血を流す右頭部が細かく痙攣していた。


 術式「魔刃延長」の性質は「剣を振る速度に合わせて刀身の形をした力場が伸びる」というものである。四つの首を同時に飛ばすほどの剣速は力場を三ルーケほども延長し、相手にその衝撃力を余さず伝えた。文字通り鉄塊のごとき、人の身であれば兜越しでも頭部をまるごと失いかねないほどの威力を持つ一撃は、人よりもはるかに頑丈な体を持つ生物にさえ大打撃を与えることができる。


 蛇は壊れた頭部を支え代わりに使うことに決めたらしく、腰と右頭部という二ヶ所で安定を得たかれはむしろ強化されたように見えた。


「巻き込まれるなよ、傭兵」

「巻き込みながら言うんじゃねえよ!」


 激しい衝突の爆音、そして間断なく暴れ狂う剣の嵐、そこは間違いなく死地である。しかしニミットはそれに対応してみせた。あまたの戦場を股にかけてきたものの勘であり、またいくつかのつもの戦場を生き抜いてきたものとしての豪運でもあった。


 蛇の攻撃はどちらかというと遅い方で、ペルテナが押しているようにも見えるだろう。しかし手数がなければ蛇の攻撃は増え、二人の死は近付く。見た目とは程遠い接戦である。クジェロはというとすぐそばで偽竜と争い、かなり押していた。


「ここ以外の戦況は、まだマシらしいぜ」

「だろうな……!」


 偽竜に大苦戦するほど弱い剣竜もおらず、ほかの場所には名高い騎士ばかりが配置されている。そちらに敵戦力が集中しているため、ここも潰すに最適なだけの力が割り振られているだけなのだろう。


「常に敵戦力が更新される……ということもあるまいが」

「さっきの赤い稲妻、あれで一旦落ち着くんじゃねえか?」


「どうだかな……」


 魔術であっても大きな代償が必要であろう「肉の身を持つ怪物を召喚する」という術ーーあるいは伝承にある龍晶ならばそれだけの魔力を捻出できるのかもしれないが、赤目や飛竜がそれだけの魔力を持つとも思われない。かなりの代償、ことによると命を捧げていてもおかしくない大魔術だ。ニミットの推測もそう外れてはいまい。


「ギュオ!」

「よし、よくやったぞクジェロ!」


 頭を食いちぎったクジェロは、さっそく次の偽竜に飛びかかっていく。


「これ、でーー」


 突き出した頭部を、薙ぎ払う尻尾を思い切り弾き返す。力場越しに蛇の骨が折れた感触が伝わった。ペルテナが作った隙にニミットが滑り込む。


「終わりだぁっ!!」


 胸部を切り上げて首元を抜けた大太刀を返し、骨ごと目もとを断つ。血液が噴き出す前に三の太刀で首をすべて切り飛ばし、静かに得物を下ろした。


「……さて、と」

「ああ」


 命令のままに、あるいは衝動のままに近くにいるものを襲う三頭偽竜の数は減らない。連携することも知らずただ進むことしか知らないものでも、近くの街に到達すれば被害をもたらすことは確実だ。


「日が沈むまでに仕事が終わりゃ、上等だ」

「夜が明けようが付き合わせるぞ、傭兵」


「……当ったり前ェだろが」


 騎士と傭兵は、そして蛇へ攻撃を繰り出した。



 ◇



 洞穴の中で、飛竜は目を閉じている。赤目たちもそれをどうしていいか分からず、ただ戦いが終わるのを待っていた。


『守護者さま……』

『なに?』


 赤目としても小さな、一ルーケ半あるかないかという村長の娘は、飛竜に語りかけた。


『私はーー私は、国を潰して国を建てようなどとは考えておりません』

『は? 今さら言われても遅いんだけど』


 戦争というべき大規模な戦いは、すでに中盤に差し掛かっている。目的を否定されたところで、争いを止めることなど不可能だ。


『あれはさ、言えば止まるもんじゃないの。戦いをやめてください、こんな争いに意味はありませんって言ったとしても、お互いやることやった後だから。口だけで争いが止まるとかアニメでもそうそうないよなー、たぶん』

『そ、それでも! 静かに生きていくほうが、私たちには合っているはずなんです!』


 飛竜ーー三月は、全身が冷えていくような感覚に、わずかなうなり声を漏らした。その尾が動くだけで赤目たちは怯え、いつ殺されるのかとびくびくしている。


『恩返しのつもりだったんだよね……五年くらい前かな? ちょっと強い竜に襲われたけどなんとか倒して死にそうだったときに、肉の分け前ちょーっとだけでしばらく世話してくれたでしょ? あれがすっごく嬉しかったんだけど』

『……お母さまが話してくださった地竜は、あなただったのですね』


 えっ、と声を出した飛竜は、彼らをざっと見渡した。


 そういえばーーそういえば、彼らの生命のサイクルがどれだけの年月で行われるものなのか、ちっとも聞いていなかった。否、ここへ来て数ヶ月も経過していないうえに打ち解けてすらいないのだから、知れるわけもなかった。


『村を危機から救っていただいたこと、重ねて感謝を申し上げます。けれど私は、以前の暮らしに戻りたいと考えてしまうのです』

『あれが平和だとしても、未来なんてないよ? そもそもだけどーーいや、これは』


 言ってはいけないことであり、言ってしまえばすべてが終わりになるかもしれない、と三月は考えている。それほどに事実は重いーー彼がその華能で察知した事実は、残酷というにも足りないほど、致命的に彼の心を砕いてしまった。


 人類は、赤目の進化系である。つまりそれは、人類が台頭したこの地上に赤目の居場所がなくなることをも示している。生息環境を取り合う生物同士が共存するには、どちらかが逃げるほかない。赤目は邪法を学び、森に逃げることで生き残ってきた。それを侵したのは三月自身だったが、場所さえ確保すればどうにかなると思っていた。


 しかし、違ったのだ。


『あ、ああ……』


 推測はきっと当たっている。


『どうして……俺の信じるものは、消えちゃうんだよ』


 褒めてくれた美術の先生は、心筋梗塞で死んだ。のどが渇いたから、と風呂上がりに冷たい水を飲んだからだった。


『なんで……なんで』


 作品を仕上げる塗料を買っていたプラモデルの店は、扱う品物が多すぎたせいで潰れた。マイナーな品物を扱っていたって、田舎の店に客が来るわけもなかったのだ。


『竜は、いったいどれほど生きるのでしょう?』

『もう、いやだ』


 それが答えだった。


 赤目は長くても二十年ほどしか生きない。八歳にもなれば成熟して子を産み、十五になれば立派に指導者の資格ありと見なされるだろう。二十歳の赤目がいたとしても、寝床から動くことはできまい。


 スキャンした戦士たちの年齢は、九歳から十二歳ほどであった。それくらいの年齢が盛りであり、それ以上になればもう戦うことは叶わないのだろう。身体構造がほとんど人間と同じなのに同じ年齢でないことは不思議に感じられたが、成長の速さと老化の速さが比例するとすぐに考えられなかったのが終わりだった。


『ああア、ああ、アアあ……』


 赤目たちの子供はほとんどいない。若者も、ほとんどがスキャンに協力して戦場に出ている。老人たちはいら立ちに任せて殺され、頼むべき三頭偽竜も同様に殺された。


 ーー赤目に、滅び以外の未来はない。


『守護者さま! 何を』


 振り払った程度の感触だったが、娘は吹き飛んだ。上半身をなくし、申し訳なさそうに足だけを残した肉のかたまりがごろりと地面に転がる。


『うああ、……あああああ!!』


 何もかもを失って、それで狂ってしまえるのならばそれも幸福であっただろう。しかし、これまでに乗り越えた試練は彼の心を強くしてしまっていた。


『狂わせてくれよ、もう……』


 これほどまでの絶望でも、彼の心は砕け散らなかった。自ら滅びを選ぶならば、「それ」以外の道はない。自らの愚かさが彼らの滅びを招いたのだ、彼らだけをあちらへ送ることは彼の信条に反する。


『もう、全部、なくなっちまえ……!!』


 彼が感じていた魂の不穏は、形になった。


 華能とは、その世界にあるまじき魂の余剰が出力されるようになったものである。華能を使うということは魂を使うということであり、当然ながら使いすぎは命や魂そのものの存続にかかわる。絶望は、彼に命を使わせた。


『うおお、あああ……あああああ!!』


 何も要らない。すべての力を注ぎ込み、それでも足りぬと命を注ぎ足し、そして今ここに邪法は再現される……術式によって命の形を変え、ある村の住民を束ねる(・・・)ことに成功したババン・ボードボ・クソヤ師のようにーー物質を魔力へと還す術が発動しようとしているのだ。


『ああァアアア!!』


 紅い稲妻がほとばしり、それらは洞穴を抜けてその先の草原や森の地面ん突き刺さる。文字通りすべてをなげうち、魂も肉体も失った飛竜は、もうそこにはいなかった。代わりに、稲妻の突き刺さった場所には何か丸いものが生まれ、それらはゆるりと広がる。


 重厚な甲殻に意思のない濁った眼、海竜種の子孫であることを示す三つ首。尾は不恰好な槍のように重く鋭く尖り、首の生えたすぐ下、強力に動く心臓のある場所には強固な甲殻が配置されている。疑いようもなく、それはグレベルス大陸に広く生息する「三頭偽竜」の姿であった。

 スマホ投稿なんでちょっとあちこち不安がありますが、またパソコンから修正……できるタイミングで……。


 三月くんの力はずばりコピペで、グループごとにまとめて出してた感じ。美術で塑像とか得意だったけど、先生が死んじゃってクサってたら才能まで腐った一般美術部員……まあ、魂は相当なものだったようなので、ちゃんとやってたらもとの世界でも神域に至ってたんでしょうね。勘違いから突っ走るのはマズイ気がしますけど。


 赤目は絶滅危惧種で、人間と共存してる例はひとつだけのレア種族です。といっても、「人間」もアレなんですけどね……。勇者()の力が何回思い返してもヤバすぎる。

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