表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇ニ玉散レ百剱  作者: 亜空間会話(以下略)
集えよ光、束ね束ねて華となれ
48/61

間章 「紅は踊る・2」

 明けましておめでとうございます、お年玉です(迫真)


 しばらくインターネットから離れてたので、うん……明日も投稿できるといいんですが。執筆がんばります、今しばらくお待ちを。できなかったらまた数か月お待ちくだせえ……


 では、どうぞ。

 藍晶蛟竜――彼らはその名称を知らないが――は、久しぶりに出会った「おねえちゃん」がずいぶん変わっているのに驚いた様子だった。しかしその驚きも、あごを乗せてリラックスしたり尻尾を打ち合って感触を確かめたりしているうちに旧交を温める時間へと変わっていく。


「仲良しですね……。うちのやつらもそうだから、そうだろうとは思ってましたが」

「基本的に忘れるということがないからな。だから因縁の相手もいる」


 敵対していたものでも仲良しになることはあるが、傷であれ恩であれ、受けたことは忘れない。昔から忠犬的エピソードに使われる所以である。


 作戦会議が行われるテントに戻ったドルトを出迎えたガームスは、その晴れやかな――というにも少し悩ましげな表情を見た。傍らのトゥロスが何があったかを話すでもなく、ドルトは地図を広げた机の前に立つ。


「心配事は片付いたのか?」

「ああ、綺麗にな。……ガームス、具体的な案を検討しよう」


 赤目たちは散発的な奇襲攻撃を繰り返しながら、戦果が上がってもとくに大したことのない、代わり映えのしない戦いを続けている。軍師としてそこまで優秀であるわけではない、比較的凡庸なドルトにもその狙いは見て取れた。


「大げさな時間稼ぎ、だろうな。戦力を削るというにも、あまりに成果が出ていない」

「その時間稼ぎにどんな意味があるか、という話ですね。また新たなモンスターを従えてくるということもないでしょうが、しかし……」


 古代魔王国がどのような秘術を持っていたのか、それは現在の魔王国にすら十分に伝わっていない。禁断の「生命創造」を成功させたという術師「ババン・ボードボ・クソヤ」は自ら作り出したものたちに滅ぼされたというが、その被造物の一部は現在でも生き残り、空の彼方に居を構えているという――太古の術は、それほどに畏れ多いことでもためらいなしに行うのだ。


「ババン師のようなことはできないかもしれませんが、資材を組み合わせて術を埋め込み、疑屍(リグマ)を作ることはできるのでは?」

魔物自在操術(ヴォヅィーキルベ)を使えるなら、あり得ることだな。優秀な部下じゃないか、将軍どの」


 ドルトは軽く笑い、「明日のことだが」と切り出す。


「騎士団を五つに分け、出発の時間をずらして戦いにあたる」

「その差はわずかだと思うが。名案のつもりか?」


「戦力の漸次投入をするだけですよ。相手が最初から本気を出すつもりには思えませんからね……軍師というにはお粗末ですが、相手側にだって戦略も戦力もある」

「トゥロス、我々の分はいいわけではないのだぞ」


 兵法書を学ぼうが、軍の練度が高かろうが、相手のチカラがそれを上回っていればそうしたものに意味はない。


「力だけで叩き潰されぬよう、こちらも対策を講じる必要がある。いくら騎士団がとくに秀でた者たちだとはいえ、剣竜二十頭と千人の軍勢で飛竜がそう簡単に倒せるとは思えん」


 青等級を超えたモンスターは強力だ。同じ強さをいくらか従えている騎士団でも、かれらに任せきりで倒すというわけにもいかない。そして騎士団の攻撃が届く保証もなく、それが徹るかどうかすら不明なのだ。


 空に憧れた地竜が腕を翼に変えたものが、正統でない天竜――「飛竜」である。かれらは甲殻を強化する性質を備えたままに成長・享華するため、それなりに重量があり飛び方も不器用だ。しかし剣竜種の強固な装甲に飛行能力が加われば、それこそ「竜の槍を得たるが如し」ということわざそのままにもなろう。


「そういえば、あの蛟竜……藍と紫の甲殻の。あれはどうするのだ」

「戦列に加えようと思う。トゥロス、ガームス、どう思う?」


 正気を疑うような表情――でもない。希少な青藍等級の剣竜が加わったということになれば騎士たちの戦意も高揚するであろうと考えられるうえ、それが彼らになついているということになれば制御も容易。かれらの甲殻の輝きに近いせいか、鎧を着た騎士を味方と考えているらしいかれは、おそらく敵の見分けをできている。


「悪くはないと思うんですが、野生の剣竜に乗れるんですか?」

「操竜術を仕込まれていない竜……ふだんはともかく、戦闘時に好き放題動かれては騎士が体を壊してしまうのではないのか」


「それもそうか……」


 独立して戦わせるのもよいか、と一瞬思わぬでもなかったが、ドルトは「いや」と思いなおす。ああ見えてクルナールは教え方が上手い、人も竜も正しく導くことができるだろう。


「トゥロス、騎士団長を継ぐのはお前ではないかもしれん。ただ、どの立場にあっても操竜術は欠かせないものになる……クルナールから、学べることをすべて学んでおけ」

「はい――騎士団長の鞍、お借りします」


 アルナテラ国には強大な軍事力がふたつ存在する。


 ひとつは「王国軍」、国民から志願兵を募って訓練し、魔王国の戦力に対抗できる人材を育て上げるのを目的とした組織である。さまざまな知識を仕込まれることもあり、実践を是とした学院的な意味合いも強い。


 もうひとつは「騎士団」、こちらは王国軍と密接なかかわりを持つ……というより、王国軍の中でより優秀であったり、一兵士の枠に収まらぬ力を持ったものたちが所属することになる選り抜きの団体であった。強力な魔術がかかった「騎士剣」を扱い、あまり大したことがないと言われる団員でも緑等級程度なら一人で相手取れる、という脅威の大戦力だ。


 騎士団は王国軍の中に存在し、騎士団長はすべての長「王国将軍」と呼ばれることになる。すなわちドルト・グリースは騎士団長にして王国将軍、アルナテラ国の中でも最強格の一人と目される騎士なのである。


「それで、クルナールだが――」


 これを伝えれば、かれは経験したすべてを伝え、心血を注いで後進の育成に励むに違いない。そう思ってクルナールに「しばらくはトゥロスとともに戦ってくれ」と言おうとしたときのこと、一人の騎士が主幹のテントに駆けこんできた。


「将軍! 新入りの剣竜とクルナールが何やらけんかを……」

「ケンカを? ドルト、地竜はケンカをしないと言っていなかったか?」


「いや、単なるいさかいではなかろう……私が行く」


 地竜種や剣竜種で争いが起こるとすれば、同族喰らいを殺すような事態くらいしか想定できない。気能「甲殻変性」を存分に活かしていることが見た目にもわかるあの蛟竜だが、まさか各地の地竜を食い漁ったということもあるまい。それならばクルナールは最初からよい反応を示さず、隙を見て殺しにかかっているだろう。


「おそらく、何事もなく終わると思うのだが……」




 時は少し前にさかのぼる。藍晶蛟竜(アオノミズチ)は、尻尾をやわらかく揺らしながら寝そべっていた。昨日の夜に大きめの甲虫を仕留めて食ったこともあり、腹はそこまで減っていない。周囲は歓迎ムードをやや過ぎたこともあって静かで、寝るには最適である。


 とてとてと静かに歩いてきたクルナールが、起きているかどうかをそれとなく確認しつつ、かれに声をかける。


「リュゥーイ?」

「キュウ」


 親交もある年上の誘いを断る理由もない、かれはクルナールについていくことにした。ただ眠るのもよいが、もしかすると兵士や騎士たちに邪魔されてよく眠れないかもしれない。それならば年上の狩り方というものを見せてもらうべき――そう考えることもできた。


 同じ地竜種・剣竜派生のかれらは、おおまかな形を同じくしている。その体の使い方は、自分で思いつく以上に多くあるのに違いない。気能「瞬撃」によって強化され、より自在になり速くなった体であるとはいえ、知らない、思いつかない動かし方はできぬ。並んで歩くかれらはきちんと足音を消しており、獲物を狩る最低限の行動はできている。そしてその先、狩るために動く攻撃の動作に移る――


「リュッ」

「キュイ」


 互いに戦ってでも引き出さんとした技術を披露する相手は、すぐさま現れた。どうやら夜襲をしかけるつもりであったか、赤目どもの魔物自在操術(ヴォヅィーキルベ)の犠牲になり、証として鎖の首輪を巻いた「三頭偽竜」がするすると這い寄ってくる。


 見慣れない異形に藍晶蛟竜はやや戸惑い、三つの首がそれぞれ違った高さで鎌首をもたげることの意味を理解できなかった。


「ショゥ」


 地面すれすれから伸びあがる中央、やや遅れてななめ上から襲いかかる右、横殴りに叩きつけようとする左――反応できない速度ではなかったが、初動が遅れたために無理が生じる。ねっとりと光る牙に危険の匂いをかぎ分けた瞬間には、すでに牙が鱗に触れんとする距離にあった。


「リュゥ?」


 さっと影が割り込んだ。鱗の隙間に牙を差し込まんとした中央の頭が、石を割り砕くかのごとき大音声を轟かせて殴り飛ばされる。


「リュッ、ルゥイ」

「キュギュイ」


 あごでしゃくったり爪で示したりという説明はしっかりと含意を伝える――三つある頭のうち、中央がもっとも重要なのだ。


 奇形生物が定着するために生存コストを削減した結果として、「三頭偽竜」の三つ首のうちふたつは高精度の攻撃が行える攻撃器官に変化している。太い神経節が通っているために誤解されがちではあるが、伝承のように「頭を切り落としても問題なく生きている」ことができるのは、中央が傷付かなかった場合のみである。


「ショォアア……」


 急な攻撃に目を回していた偽竜だが、数度頭を振って持ち直した。そして、種族が定着する前の名残りとして形はそのままに残った、毒牙を持つ左右の頭部を思い切り振るう。紅錬蛟の赤熱する尾はそれを一瞬で刎ね飛ばし、同様に灼光を放つ爪で首元をえぐる。


 グレベルス痕源野に幾度となく戦いに出て、食料の確保にも参加している紅錬蛟はこの地のモンスターの対応策に精通している。時折現れる蛇やその上位種、海竜種の系譜に連なるものが陸生化したヒドラの類は得意とするところだった。


「キュルゥ!」

「ルィ」


 匂いを感じ取った蛟竜は、それが食える毒であることを思い出す。


 怒涛の攻撃が始まる――ほとんど無抵抗にも思えるほど、ヒドラはあっけなく仕留められてしまった。もともと慣れていたクルナール、そして数々の強敵を相手にしてきた藍晶蛟竜は対応も早く、二体いるために手数で追い詰めることも難しい。こうなるのは必定である。刎ねた首をそれぞれくわえたり尾剣に刺したり、体の大きいクルナールが切り傷と焼けこげだらけの偽竜の体を背負い、野営地に持ち帰る。




 門番に鼻先をくっつけたりしておしゃべりもどきをしていた斬殻蛟竜のデクティンドが、帰ってきた二体を見て「シュイ」と楽しげに笑った。


「やっぱり仲良しだなぁ、剣竜は……」


 ありがとう、と礼を言って食料班を呼んだ門番は、デクティンドがごく小さく何か言ったのを聞いたが――ひとまず聞き流し、三頭偽竜(トライヒドラ)の運搬にかかる。


「おおっ、ヒドラか! 肉も多くてうまいんだよなぁ、こいつは」

「何かしら毒を仕込まれてないか、ないとは思うけど見ててくれよ?」


「了解……首輪をつける頭はあっても、毒を仕込む頭はないからな」


 敵戦力を討伐して食料に変える、というのも現実に考えればあまりに無茶が過ぎるというものだが、竜類が畜産されるこの世界ではそれなりに起こることである。ときたま装身具に毒煙をまき散らすものを混ぜたりといった策謀もあるが、赤目どもの知能ではそれを作戦とすることもなかろう。


「門番さん、ちょっといいですか?」

「はいはい、なに?」


 最年少に近いだろう、かなり若い騎士が声をかけてきた。女性が相手だからと笑顔の質を変えるでもなく、分配で揉めてもいないだろうと考えた矢先のこと。


「あの、あれ」

「うん、あれ……うん?」


 クルナールと新入りが、鼻先をぶつけ合っている――口げんかである。


「ルキュイ、ギュウ」

「ルッ、リュォ」


 デクティンドがおろおろしているところを見ると、原因を作ったのはかれだろう。


「大変だ、騎士団長に知らせないと……!」

 応援すると決めた作者さんの作品、引っ越しのごたごたで買えていなかったのをメロンブックスだったかで見つけました。内容からして受けが悪いんじゃないかな? と思っていたんですが、やはり打ち切りのようで。なんでしょうね、ラブコメっぽいのに人間の醜さも惜しみなく描いていたからなんでしょうか。ピンポイントでいいんだが……あと、立ちはだかる壁が一巻と二巻でほぼ同じってのはちょっと……。そろそろ後がないんじゃないかなぁ、と思い始めていたり。


 今日の解説はおねえちゃんなんだぜ! 細身の天才無慈悲ロリVS発育良好火属性世話好きおねえちゃんの構図、どこかのラブコメでありそう。あの、ドルト将軍は五十代なんですけど……(困惑)




「紅錬蛟」(ぐれんみずち)

個体名:「クルナール」

地竜類・剣竜系統派生:武装甲殻類中位種

気能:「甲殻変性」「焼却噴霧」「瞬撃」「清鈴声」

液能:「灼熱刀」


 アルナテラ国の王国将軍にして騎士団長であるドルト・グリースの騎竜。操竜術の基礎教育を担当しており、騎士団の面々からは頼れるお姉さん扱いされている。積極的に同族や人間と関わり、かれのことを覚えている地竜・剣竜は多い。「剱蜥蜴」から「剱大蜥蜴」という変わり種の享華を経由してこの種族にたどり着いた。


 種族としては、グレベルス痕源野で起こりやすい炎に関連するもののなかでも単純な部類の享華であり、魔力を消費して爪や尾剣を赤熱するほどの温度にすることができる液能「灼熱刀」を持つ。住んでいる場所の特徴として尾剣の扱いが上手いこともあり、非常に危険なモンスターであると言える。排熱のためか水分を多く摂取する必要があり、甲殻の隙間にその水を循環させ、一気に蒸気として噴出することで体温を下げる気能「焼却噴霧」を持つ。そのため、開けた場所にじっとしているかれらを見かけたら絶対に近付いてはならない。


 騎竜が少ない時期に騎士団に飼われ始めたため蛟竜への変化が理解できず、蛟竜への享華が遅れていたが、王国軍の兵力としてグレベルス痕源野に出たときほかの紅錬蛟を目撃、これに享華することに成功した。人間を乗せながら戦うことにかけては国いちばんの成績を誇り、騎竜に乗る心得を学ぶ際は必ずと言っていいほどかれが教えることになる。戦闘においては、前足の爪に「灼熱刀」を行使して敵を蹴散らしながら前進する役目を担う。


 生の大半をドルト将軍と寄り添って暮らし、修羅場も共にくぐり抜けてきただけあって絆は深い。また騎士団員もかれには心を許しており、門番を起こしに行ったりといった世話好きな面もあって下手をすると人間以上に慕われているとの意見もある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ