間章 「紅は踊る・1」
すみません、久しぶりに自傷したりしてストレスで死にかけていたら投稿が三日ほど遅れてしまいました。ちょっと死に場所を探してただけです。きちんと見つかったので、自分の中でいい区切りができたら行こうと思います。差し当たってはこいつを完結させて……何年後だよ馬鹿野郎。
間章は情報過多、これは常識だから(言い訳)。では、どうぞ。
亜人と呼ばれる種族の定義は「おおむね人型の生物」程度のものだ。高度なコミュニケーションが可能で人間を手玉に取ることもたやすい種族もいれば、人の社会ではモンスターであるとしか認識されていないものもある。
有名なものとしては人間社会にも多く暮らす、もとは地竜の一種であったと考えられている「青竜人」や、アルナテラ国南方に多い海竜と人間の交雑種「水龍人」、平均的に人よりも高い身体能力を持ち、額から一本ないし二本の角を生やす「鬼人」などであろうか。逆にあまり知られていないものもいるが、それらはほとんどが水際で食い止められ、本には「モンスターの一種であり、危険」といった記載がなされることになる。
「ロゴムの集落があるのは知っていましたが、それが蜂起するとはね」
人とは違う声と独特の言語を持ち、見た目にはおどおどした赤い目の子供にしか見えない亜人種――それが「赤目」である。
「魔将軍が派遣された先の悪夢といい、この大陸で何が起こってるんだ……」
数週間前……ちょうど満月になり、闇月も最高潮に達する夜のこと、魔王国とアルナテラ国の境界付近、フェクト浜で黄金の正統天竜が目撃された。伝承に残る、光の力で万魔時代を終わらせた勇者リュウザキ・マサトと戦った、双月夜の覇者「煌王龍」であろうと推測されているそれは、浜辺に上陸した大量の「生ける死体」と戦い、滅ぼしていった。
目撃されたのはそれだけではない。数多の子とともに物量で敵を殲滅する海龍のキメラ「連魔将軍」や、無限追跡能力を持つ光剣と岩塊すら消滅させる落雷を操る「雷魔将軍」の姿があったという報告が上がっており、対多数戦において力を発揮する魔王国幹部がほとんど召集されたのではないか、と考えられているほどである。
「まず、ロゴムの戦力についてなんだが……」
話を先に進めんとした男の名は「ガームス・ドビロス」、アルナテラ国内の亜人について深い知識を持つ文官である。
「身長が低いから武器の届く範囲もそう広くはない。しかし、昔ながらの魔物自在操術で飛竜を捕らえたようでな……三頭蛇のたぐいを数体従えているおそれもある」
「従えると言いますが、操竜術とどう違うんです?」
騎士であるトゥロスは、文官ほど歴史には詳しくなかった。
転生者の持ち込んだ「モンスター」という言葉が使われる前のこと、魔力を多く含む巨大生物はいっしょくたに「ヴォヅィーク」と呼ばれていた。失われた闇の魔術――心をねじ曲げ、あらゆる生物を隷属させる傲慢――「精神支配」、それこそが「魔物自在操術」と呼ばれるものの正体だ。
「操竜術は……クルナールといったか? あの紅錬蛟を見ればわかる、絆を結ばねば使えたものではない。魔物自在操術は、術を使いさえすれば人に決して馴れぬようなものでも下僕のように振る舞うようになる。闇の魔術といわれる所以だ」
操竜術は、地竜を馴らすコツと騎乗する技術からなる、操るとは言いがたい技術体系である。アルナテラ国で騎士の訓練を受けたものならば、四足の地竜や蛟に乗ったことのないものはあるまい。尾剣と騎士の剣を打ち合ってともだちになり、共に過ごし同じものを食い、そうして初めて糸口に立てるのだ。
「トライヒドラならばあるいは、まだ相手のしようもあるが……飛竜を相手取るには、あの頭の固い引きこもりどもを戦力として数えることになろう」
「国家術師団ですか……。将軍、今からではさすがに……」
「間に合わないだろうな。言うまでもないことだ」
王国将軍ドルト・グリースは、腹心である「トゥロス・ベルトリオ」の言葉を補強した。
「ここまで来るのにかかった日数が三日、野営地を張るのにきょう一日だ。やつらの分を増設するのに半日しかかからないとしても、ロゴムが三日も侵攻を待つとは思えん」
「それは当たり前だ……騎士団に魔術も使えるものは?」
「少なくはない。飛竜に対抗できるかというと別だ」
ドルトの方針は「とにかく使える技術は身につけておけ、適性があるなら伸ばせ」というものだ。騎士の剣を佩くことに憧れたものの中にも、もと術師団所属のものや剣以外を振るっていたものがいる。
「それはつまり――やつらが飛竜を出してくれば負けが決まる、ということですか」
「その可能性もある」
飛竜の強さにもよるが、防ぐことが叶わないぶん空からの奇襲は強力だ。飛竜を落とせないということになれば、騎士団の敗北は必至である。
「矢に術をかけるほかなさそうだな。術師団から抜けてきたのは、こっちでこそ役立てると志してきたものが多い……どうにか飛竜に対抗する手段を見つけねば」
「飛竜を落とせる術を知っているものがいれば、すぐにでも知らせてくれ!」
ガームスとドルトの要請は瞬く間に野営地を駆け巡り、十数人の男女が集まった。強力ではないが雷の玉を飛ばして相手をしびれさせることができる元魔術師、崖登りの鉤縄を使えるかもしれないと意気込む騎士や、蝦蟹の撃ち出す空気弾を魔術で再現したとのたまう強豪などなかなかの顔ぶれが揃っている。
「よく集まってくれた。ひとまずは威力の検証をしてから作戦の考案に移りたいと思う。では鉤縄を提案してくれたクォー、さっそく何ルーケ飛ばせるか見せてくれ」
「分かりましたっ! そりゃあ!」
やや鍛えすぎの感がある大男が機敏な動きで前に出て、鉤縄をぐるぐると回してから思い切り投げ上げる。
「お、おお……これはすごいぞ!」
「40ルーケほどか? これならば充分だな」
高さにして40ルーケ、人とは思えぬほどの馬鹿力である。
「では次は空気弾だな。メチル、頼んだぞ」
「了解ィーっす……ほいのほいのほい、はい」
仰々しい詠唱もなく、風の矢と長い筒のような構造が形作られた。先に至るほどに細くなるそれは、見覚えのあるものである。
「吹き矢筒か。なかなかに面白いものを使う」
「よくお存知ッすね。本領はこっからですぜィ」
唇を広げて歯を見せるような、独特の不気味な笑みを見せたメチルは「……ん?」と笑顔を崩す。
「ちッとお待ちもらいてえ、蛟竜がいやがりますね」
「蛟竜? ああ、魔力の流れで見えたんですか」
魔術師はその性質上、大気中や水中の魔力の流れを感じることに長けている。
「撃つのは危険がヤバい、青藍等級で……俺にゃどうしようもありませんナ」
「蝦蟹の魔術といえば、享華せずとも竜を仕留めるという話だったが……。トゥロス、主だった戦力を集めろ」
「はい。クルナールを起こしてきます」
「いや、おれが直接行こう。あいつの反応も見たい」
知能がそう高くないトカゲから享華した地竜類は、互いに仲良くなりやすく、仲間をずっと――たとえ享華したとしても、人間には不可知の手段によって覚えている。出会ったことがなくとも尾剣を打ち合って仲間になるような陽気な連中、クルナールはそんな地竜の中でもグレベルス痕源野の影響を強く受けて享華した「紅錬蛟」だった。
大きめのテントのすぐ横に、騎竜の寝床が用意されている。ドルトはその寝床にそっと近付き、ほとんどテントにくっつくように休んでいるクルナールに声をかけた。
「クルナール。起きているか?」
「ルゥ、リュィ」
やや橙を帯びた茶色、ところどころ宝石のような赤をのぞかせる、ひび割れた岩のような甲殻。二十年以上も騎士を乗せてきた経験からかコミュニケーションも磨かれ、地竜にはなかなかいない美声の持ち主でもある。利発そうな目に少しの疑問を浮かべながら、かれは「何かあったの?」といったジェスチャーをした。
「かなり強い蛟竜が現れたようでな、お前にも来てもらいたい。いいか」
「ルゥー……」
腹ごなしの昼寝を邪魔されたから、という不機嫌さではない。それは「ここからでも分かるよ」というような、不穏の気配である。
「なるほど、少しは分かった。進軍にあたっての不安はなくしておきたいんだ、ことを構えるかもしれん……来てくれ」
不満そうではあるが、クルナールは立ち上がった。
「リュゥ」
「うん? なに、どれだ」
鼻先で「忘れ物があるよ」とせっつくかれは、尾剣で手のひらほどの箱を示す。
「それは、離れ形見の箱……」
忘れもしない、レギロ領滅亡の一週間後に起こった王国軍壊滅事件。「屍魔将軍」一門の繰り出した竜屍たちにじわじわと削られていった軍の前に現れた「つぎはぎの怪物」――あれが何者であったのかは知れない。雷を放つ鹿の角、羽を飛ばす翼、空気弾を撃ち出すハサミに針弾を撃ち出す蛇腹状の蜂の腹。ありとあらゆる生物の攻性部位を継ぎ合わせて一体の化け物を作り出したとでもいえば、もっともらしい説明にもなろうか。
(――違った。違うのだ、あれは)
そのときもっとも優秀だった剛剣竜のベノートは、怪物に一矢報いることに成功した。その直後に胸を薙がれて血を噴き死んだが、かれは証拠を残したのだ。するりと引っ込もうとした角は切り落とされ、べちゃりと液体になって四散した。
(書を読み、知識を身につけた今ならば断言できる。あれはスライムの一種だ)
生まれた瞬間に死ぬか、もしくは国ひとつやふたつならば相手取り、ただでは死なず百年の爪痕を残すという凝魔霊命体の一種「スライム」――怪物の正体はスライムだった。とはいえ、伝承に残るそれは「池や川、湖を乾し、大きくなりすぎて湖を満たした」「石に近い体を持つゆえに鉱脈に変わり、五十年街を潤した」など特殊な性質をたったひとつ極めたものばかりである。
命からがら逃げ延び、森に入ってもはやこれまでかと覚悟したそのとき、一匹の剱蜥蜴が現れた。かれはドルトの負傷を見てザスの実を取ってきた――すでに誰かを助けたことがあるかのような迅速な行動だった。
「あのトカゲかもしれんということか……?」
クルナールは鳴かなかった。
わずか数分で、地竜と戦った経験のある戦士が集まる。その中には日雇い斡旋でやってきた傭兵もいた。
「おいおい、正統天竜でもねぇっつうのに警戒しすぎじゃあねえのか、騎士団長さんよ。悪夢が夢にまで押し寄せてきてんじゃねーだろうな? ギャハハ……!」
「そりゃ傑作だぜ! 地竜ごときにオレらがよ……実力者がうんぬん言うから来てやったってのに、進軍の露払いだ? ナメてんじゃねえぞ?」
不安から無茶を言うものもいれば、ただのバカもいる。
「相手は青藍等級だ、不足はなかろう」
騎士団長ドルト・グリースがそう言った途端に、笑いがざわめきに変わる。
「クルナール、ビスルティ、デクティンドも参加する。その意味が分かるな」
「過剰戦力だとしか思えねえんだが……ま、サラちゃんにまた来るよって言っちまったからな。帰らねえとな」
ひとまずやるぜ、と傭兵のニミットは背負う剣を握った。
紅錬蛟のクルナールと「斬殻蛟竜」のデクティンドは青等級、鋼鱗蛟のビスルティは緑青等級だ。尋常の人間よりもはるかに強い騎竜たちが場に出されるということは、相手の脅威は未知数であるという何よりの証明。ガラの悪い傭兵たちもさすがに軽口を叩いてはいられなかった。
「行くぞ――いや、迫ってきている!」
ゆっくりと、野営地を張り終わった充実を照らす夕陽が消えていく――ふざけたように鮮やかな色の雲にも染まらず、それはあくまでゆったりとしたペースで歩いていた。
「デクティンドにも匹敵する重装甲……しかし重みを感じさせない動き」
普段からデクティンドとともにあるトゥロスは、その装甲をよく知っている。かなり分厚いように見えても、生体・金属を問わず繊維同士が複雑に絡み合う層を重ね合わせた「エクレア構造」を形成する甲殻は思ったより軽い。さらに軽量化は進んでいるらしく、ところどころから張り出した突起は大きめでも、全体には細身である。
長く伸びた影が、騎士たちに届いた。
「――ッ!!」
色を失くしていく空に、ひどく黒っぽい蛟竜が立っている。見ればたったそれだけの光景でも、伝わってくる魔力波動は彼らの髪をなびかせんばかりだ。
「ルィ?」
「クルナール、どうした?」
「リュウ」
「……頼んだ」
何言ってんだよ、と突っ込む傭兵に「私が先に行くと言ってる」とトゥロスが翻訳した。しぐさをよく見ていればそれなりに理解可能な、ごく単純なことばだ。
「何をするつもりなんだ……?」
「まさか、あれは――」
ドルトは、腰に提げていたあの箱を開く。そこには、ちょうど目の前の蛟竜と同じような色の鱗が収まっていた。
「とうに気付いていたのか……!」
いったいどのような偶然か、はたまた運命か。
「リュッ、ルルゥ」
「キュゥーイ!」
青藍に染まった宵空の下で、剣と剣が音高く打ち合わされた。
・オリ種族ふたつ登場(ネアジラは「我が愛しの姫君に捧ぐ」で正式に登場)
・タルクさま出陣してた
・クラス転生の原因は……(悪気はないし狙ってもいなかった)
・魔王国古語についてちょっとだけ
・おねえちゃん享華してた
・レギロ領滅亡の原因はスライム
詰め込み過ぎィ! でもほんへが知能レベルとかげで進んでるから、人間が知ってることを詳らかにするにはこっちに詰め込むしかないんですよね……。もうちょっと詰めたいんですが、これ以上やると作者にもダメージ来るからちょっと。
ブックオフで本の買取りをしてもらったんですが、一年以上前に打ち切られた電撃のやつがたったの5円で買い取られてて泣きたくなりました。見るに「信者は新品しか買わないから売れそうにない安いやつ」とか「中古でしか買われないだろうからちょっと値段高めのやつ」「信者は買うだろうけどほぼ肥やし」「安定した人気のあるシリーズもの」「ゴミ」などなど、いろいろあるみたいですね。アニメ化されたラノベでも旬を過ぎると5円になっちゃうらしい……文章ゴミすぎたからしょうがないね。
なろう作家目指してる人いるみたいですけど、5円にはなりたくないなぁ……。素がほとんどバケモノな感じなので「制約なしにやれるってマジ!?」とか言い出すとだいたい暴走する(なろう初投稿作はエログロがマシマシ、運営に注意食らって消した)。人間たちに受容されるのは無理だろうと思っています。「ゲームだからリスポーンできるし……」で主人公を無限レンチンしちゃうのはさすがに自分でも頭おかしいと思います。話として辻褄が合ってたのが凶悪。そこまでして殺したかったか、こいつが。




