4「単純明快」
(2019/07/05 ミスを修正)
スピードタイプのキャラはあんまし強くない、とか言われてたけど威力が同じくらいなら速い方が強いに決まってるじゃん?(当然) なろうだと剣の強さも戦力に入ってるんでアレだけど、剣豪ものとかだと銘はともかく威力やランクの違いとかほぼないから技術が見られるんですよね……ちょっと「居眠り磐音」で剣劇を勉強することにしました。
どうぞー。
ぼうっと戦いを見ていたミズチは、自らの刃気を自在に操ろうとして何が起きたかを覚えていた。ゆっくり移動させるだけでもそれなりに魔力を削られるのに、高速で相手に突き込んだときなど頭がくらくらするほどに魔力を吸い取られ、半分ほど意識がない状態で手負いの凶暴化した豪槍猪と戦う羽目になった――二度とごめんだ、というのが素直なところだ。
そもそも、あれを光に変えている方法がさっぱりわからない。跳ね返す方法は分からぬでもないが、あのような刃気の使い方はできないだろうということはミズチにも察せられた。無数にいる相手の中でも断トツでトップにいるのだろう相手、そう簡単に真似をできるわけもない。次に戦う相手に全力を――そう覚悟したところで。
『そこのと……そこの。来な』
ちょうど呼び出しがかかり、かれの体は浮遊してするすると引き寄せられていく。壁の内側に入り、相手になるモンスターと目を合わせ――ふいに、ミズチは嫌な感じに襲われた。
わりに地味な、蒼哭銀とロクテノ、鉄の混じったらしい甲殻。剣竜類に属するのか尻尾は非常に細く鋭い刃になっており、肩や腰にも補助的な甲殻が剣山のように生えている。凄まじくとげとげしい全体像の中でも目を引くのが、腕に伸びる爪刃――五本指のうち小指が外側に折れ曲がり、爪を幅広の刀のような形に伸ばしたものだ。たった今カチリと音を立てて奥に引っ込んだところを見ると、広げることも可能であるらしい。
恐ろしいほどに研ぎ澄まされた戦闘経験をうかがわせるが、それにしては甲殻が地味すぎる。獲物の好みが非常に偏っているようだ――少なくとも、このグレベルス痕源野の甲殻類はほとんど口にしていないようである。動物を専門に狩っているものもいるが、それはそれで甲殻において金属成分の比重が大きすぎる。
「ゴロルルル……」
ピリピリした空気が、喉元で止まった凶刃に変わる。
トカゲの喉はそのような声を出すようにはできていない……ある種の酵素で頻繁に侵されることでもなければ、そう声が変わることはない。歳をとっても低くかすれるようになるだけで、根本として恐ろしいものにはならないのだ。
ある種の酵素――かれら剣竜類が金属を体になじむ形に消化するために蓄える、強烈な腐食性を持つ酵素。そんなものをいつも摂っていたのでは喉も荒れ、出す声の質も違って来ようというものである。
ミズチが相対する「爪刃竜」は、トカゲ喰いのトカゲ――共食い専門の狩人だった。
『ああ、そうそう……ちょっとそのまま動かないでおくれよ』
壁がぐっと拡張され、そして壁の中の地面がところどころ盛り上がり、土でできた樹木のようなものが轟音を響かせながら次々に突き出る。
『見たとこ、あんたにゃものすごい機動力があるねぇ。もちろん存分に使ってくれて構わないけど、楽をした勝利をそうポンポン渡すわけにはいかないのさ』
言葉を理解している様子ではないが、わずかに不満げな様子を見たのだろう、龍晶は納得させようと蛟竜を煽り立てる。
『ちょっとくらい強い相手と戦わなきゃあ、その刃も鈍っちまうよ。なにかい、自分より弱いのを確実に有利に倒さないと怖いのかい?』
「ロゥウウ……」
図星であっても、エサが欲しかっただけだなどとは言えぬ。
『それでいいだろう?』
『ああ……何が目的でもいい、生き残るものを求めている』
タルク・ザーンの実験は経過観察中だ。
実験体のうち二体はほとんど完成しているが、一体は向上心を失くし、一体は暴走している。領王の治める魔王領辺境をいくつか滅ぼし、その辺りに潜伏していると考えられているが、制御はできず居所も掴めない――判明しだい殲滅される方針である。
フレグィリエ・メーニス・エトルヴリスは実家に籠って修行中、タルクの呼び出しにもあまりいい顔をしないところを見ると成果は芳しくないようだ。そして「あれ」がどこにいるのかはまったくもって不明――命力を含まないものであるからだろうか、探して見つかったためしがない。
蟲毒から生き延び、吸収率はともかく双命核も食い、技術や栄養を順調に身につけている鋼鱗蛟はタルクがもっとも気に入っている個体である。困った暴走もせず、命力にあふれ、学習能力も高い。求めるすべてを満たし現実的な強さを持つ、理想的な個体だ。
『さあ……』
獲物を見る目、そして殺すべき敵を見る目。
鋼鱗蛟の尾剣は鋭変し、最大切断形態に整えられた。
竜の爪刃は開かれ、ゆるりと妖しく空気を撫で切る。
『行きな』
両者を隔てる壁が消えた瞬間に――蛟竜は一撃必殺を繰り出した。細身の体に恐るべき跳躍力を与えるその後脚で「瞬撃」を発動して跳躍、ミズチの尾剣にも迫る威力で切り付ける。すっと首を下げて威力を流したかれは、わずかに触れた尾がじんとしびれるのをこらえた。鱗が削れるようなダメージではないが、繰り返せばひびが入るだろう。
速い――いつか戦った人語を話す赤い虫のように、視界の端に映った影を目で追うのがやっとだ。そしてさらに凶悪なのは、相手が三次元空間を十全に利用していることだ。とにかくがむしゃらに相手の速度を上回ろうとしていたあの虫とは違って、戦力を殺ぐ効率的な動きが身に付いている。それも当然のこと、竜になるほどに経験を積んで成長した個体――加えて同族喰らいである。蛟竜にとって、トカゲたちは「楽な相手」だった。
知ってか知らずか、ミズチは相手の軌道を予測する。
裏をかこうというのでもなく、いたぶろうとするのでもなく、ただ殺すための効率的な連続斬撃。ミズチも経験則から、手早い殺しに何が重要かは把握している。
「ルゥ……」
「グロォオ!!」
刃気が、突如として首元に現れたとしか思えないほど速い爪刃を止めた。風圧だけで目が傷付きそうになるが、驚いて目を閉じるほど愚かではない。ミズチはさっと後ろに退いて岩樹に紛れようとした蛟竜を、跳躍して追いかけた。
「グィォオ……!」
身のこなしはややぎごちないものの、危険の予測や筋力に関しては大差がないらしい。ミズチは、蛟竜がするように岩樹を渡り歩くことができた。これで蛟竜の一方的な有利はほとんど消えたかに思われたが――
走り寄ったミズチが蛟竜に殴りかかると、かれの体は空中に投げ出された。さほどの高さではないが、高さに慣れていないミズチにとってじゅうぶんに恐ろしく感じられる高さだ。
……が、手ごたえのない墜落は故意のもの。ミズチが追いかけようと一段低い枝に降りたそのとき、首筋を死風が吹き抜けた。ピン――と鱗が数枚はじけ飛び、晶殻の先端が欠ける。後ろから回り込んだ蛟竜が空中で不可解な軌道を描いてミズチの前に降り立った。素直な突進斬撃を尻尾で受け止めたかれは、その威力を推察する。
爪刃の攻撃は、最大切断形態の尻尾で受けるならば何の問題もない。変な形をしたオンナもどきの持つ剣のような、骨まで歪ませるほどの重さはなかった。しかしながらその鋭さ――威力でなく切断力は、かれの鱗を削り取るほどにすさまじい。
殴りつけた手を刃で受け止めた蛟竜は、低く嗤う。さっきミズチの首筋の鱗を数枚削り取ったはずの部分には、わずかな刃こぼれもない。力圧しで相手を地面に倒そうとしたミズチは、逆に払いのけられ体を揺らされた――枝から落ちる寸前で勢いを利用して跳躍し、もう少しだけ足場が大きい太めの枝に移動する。蛟竜はぬらりとした動きで同じ枝に跳び上がり、爪刃を広げて威嚇した。
尾剣の一撃をするりとかわし、蛟竜は右腕の爪刃を収納した――かれの武器はひとつではない。ガリッ、という音がミズチに灼熱をぶちまけた。
「ギュォオッ!!」
頭をやられた――目が見えない。思わず、いつもの手入れの調子で傷を塞がんとした舌に、味がふたつ襲いかかる。
仕留めた直後の獲物を食ったときの、むっとするような血の匂い。親しみのある味に似てはいるものの、感じる不穏は傷から出た血であるからだろうか。
加えてごく薄い味――さらさらとした、あまり縁のないものだ。しかし、直近に人間たちと出会ったときに口にしたものの中に含まれていた味である。あのときに食ったのは「水矢鯉」のアラ、大きめの肉がついたひれの部分をいくつかと、頭――
頭蓋を雷に貫かれたような激痛とともに、ミズチは悟った。
――目を潰された。
通り過ぎるときに跳ね上げた尾剣は蛟竜の尾を切り飛ばしていたが、こちらの受けた傷があまりにも大きすぎる。地の利はあちらにあり、片目を失くした。傷を受けたことも、何なら尻尾を失ったこともあるが、それよりもはるかに死に近い窮地である。
――いちかばちか、賭けに出るしかない。
蛟竜は身軽だ。そして尋常ならざる速度を持っている。そこまで、ミズチの認識は合っている。しかしそこからは決定的に間違っていた。
――追い付くしか、ない!!
今回のインスピレーション:「地龍ゲエレ」
ここ「小説家になろう」に投稿されている小説「蜘蛛ですが、なにか?」に登場するモンスター。レベル24……といっても進化して種族が変わるたびレベル1として計算されているので、いくつくらい種族を積み上げて龍になったのかは不明。前段階や初期段階っぽいモンスターも登場しているので、主人公より少し少ない程度だろうか。名前は綴り「GEALE」からして「ゲイル(Gale)=疾風」のもじりだと考えられる。
速度特化――といってもほかのステータスが使い物にならないほど低いということはまったくなく、バランスはいいが速度が特に優れている、といった印象。スキル構成を見ると感知系・物理攻撃系が非常に強く耐性もそこそこあって防御にも隙が少ないため、そんなにひょいひょい回避できていたわけではないらしい。戦闘シーンはほとんどないが、両手から伸びるブレード(ガタキリバみたいな感じ)とブレスが武器。
かなり高いレベルになっている「大地攻撃LV8」「大地強化LV8」を見ると、ブレードの攻撃には大地属性が入っているのではなかろうか。速度型なのに「暗殺者」の称号がついてないところ、防御・耐性スキルがきちんと備わっているところを見ると真正面から戦う武人、地龍らしい性格をしているようだ。なぜか「雷耐性」を持っているが、本編中には雷魔法を使うモンスターは見当たらない。どっかに未知のモンスターがいるか、人間とでも戦ったのだろうか。
132話において初登場、次話冒頭において「即転移で逃げた」と言われるほどの強さを誇ったが戦闘シーンは攻撃手段を説明するだけで済まされる。189話「189 身体機能検証」にてアラクネに進化した主人公の戦闘テストに付き合う羽目になり「こやつには勝てぬのでは……?」的な雰囲気ながら攻撃に入ったが、ブレードをあっさりかわされたうえ連携したカグナのブレスも完全回避、文字通りテストにこき使われる。ブレードを叩き折られたかと思えば糸で振り回されて仲間に激突させられ、糸で身動きが取れないまま圧倒的攻撃力で殴り殺された。
産地表示……つまりパクリ元を明示することで「これを見て思いつきました、好きだから書きました後悔なんてねぇやりやがれ!」って理屈。間違いなくクッソ強いのにまともな戦闘シーンないから書いた、勝手に似たようなの書いてすみません本当に。
ちなみに「爬虫類→ミズチ→蛟竜→偽竜→竜→龍」って感じの出世。段階が上&機動力において相性最悪の相手……目まで潰されてどうなるのって話ですが。でも治るからまだまだ痛めつけるよぉ……まだまだ足りんよね? 戦える限界まで……ねぇ? やるよねそこは?




