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闇ニ玉散レ百剱  作者: 亜空間会話(以下略)
畏れ多き龍脈にて
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C-Cherry Crystal Cross:2

 水着の棗お姉さまが美しい。ところでアプリの紹介にあった棗お姉さまがぷっかり浮かんでるあのイラストってどこに行ったら見られるんですか……? あのシナリオってどこにあるんでしょうか? 知りたい知りたい見たい見たい見たい知りたい。ゆゆゆいの水着キャラは杏ちゃんが一番好きなんですが(それでインスピレーション湧いて一本書いて応募しようと思ってるくらいに)、あの棗お姉さまが見たいんだ……


 どうぞ。

 彼女は、ずっと考えていた。何よりも早い剣とは何だろうか――と。気能「瞬撃」を持つものの一撃であっても回避しうるものである。魔法などというかすりもしなければ当たったところで被害もないものも、速度において大した違いはない。ただの攻撃ではなく、気能を超え、液能の補助を受けてそれをさらに超越したものを編み出さなければならない。すなわち華能――たった一度が、戦いの趨勢でなく勝敗を決定するような一撃。


 華能を日に何度でも放つことのできるただの攻撃と化すまでに、彼女は長い修練を必要とした。大きな才能を持つ彼女であっても、生み出した一撃を自然なものとするためには十年近い歳月を費やす必要があった。それもそのはず、最大最強の一撃を放つに消費するコストを極限まで効率化すること、それを自然な動作で放つこと、それがじゅうぶんな威力を持つことを確認するのには長い年月が必要だったのだ。


 しかし、それすらも無意味だった。


 母は言った――『なんだ、そんなつまらないものが答えかい?』と。


 誰にでもたどり着ける平凡な答えではいけなかった。独自性があり、その個体のものとして使いこなし、さらなる昇華を経て無敵の領域へと至る「答え」。それこそが母の求めるものであった。


 速さ(・・)


 彼女は、速度に重点を置いた。しかし、速度には限界がある。金属に魔力を吸着した結晶体である自分の体は、控えめに言っても重い。ただ重量があるというだけでなく、関節部分に負担をかけすぎることもできないだろう。


 体を使ってたどり着ける答えではなかった――彼女は、動き回る修行をやめた。


 肉体に頼らない速さ……というものが存在するのかどうかはともかく、彼女はそれを探し求めた。静かに落ち着いて瞑想できる場所を探し、座って、発狂する寸前まで自分を追い込み、「速さ」を追い求め続けた。


 考えた結果として彼女が導き出した答えは「体を使わず移動できるわけがない」というものだった。肉体を持つものならば当然のことだ。彼女は自分に失望した。母もきっと失望するだろう――絶望して、現れた人間たちの餌食になろうと試みた。


 何事かを叫んで飛びかかる、剣を持った男。


 長々と詠唱して魔法を放った男。


 結界を張って、万が一の抵抗に備えた女。


 男が放つ魔法が自分の顔を狙っていることに気が付いた桜玉牙は、ついまばたきをしてしまった。母が聞けば冷笑するだろう――衝撃を覚えてさえ傷を受けないつぶて程度、それがどれだけ加速されようと同じこと。


 しかしてまぶたは開き、彼女は顔面に迫りくるつぶてを見た。


 不思議な――まことに不思議な感覚。


 馴染みきった動きで手がつぶてを弾き飛ばし、男と剣を砕き結界と女を爆散させ、魔法使いが白目を剥いて気を失う。腕はそのままに生き残った男を粉砕した。


 ついさきほどまで死のうとしていたことなど忘れて、彼女は剣よりもつぶてよりも速いものを見た。


 ――彼女は、「答え」を見つけた。




 剣気の壁で二人を隔て、母はお膳立てを整える。


『二人とも、準備はいいかい?』


「ええ、母様」

「いつでも行けるわ」


 紅――母親の持つ色から抜き出した、好戦的な色である。もっともその分析自体に意味はなく、個体がどのような力に目覚めるか、すべてはその一点にかかっていた。もとより享華とはそういうもの。最初の享華ですでに「目覚めている」ものは、その先が完成している――この「紅玉牙」のように。


『始めるよ――そらっ!』


 二人を隔てていた剣気の壁が、さらりと崩れた。瞬間に紅玉牙は腕剣を振りかぶり、地面を叩く。土ぼこりと岩片がばらばらと飛び散り巻き上がって、それを順に砕く紅玉牙が隠れていった。えらくつまらない手段を使う、と思っていた桜玉牙は唐突に攻撃を受けた。攻撃の威力から推測すると、それは岩のつぶてなどというちんけな攻撃ではないようだ。玉牙の表面にくっきりと傷を刻むことができるのは、相応の――少なくとも岩盤の崩落よりも恐るべき事態でなければならない。


 魔力で加速した腕の薙ぎ払いが土煙を消し飛ばし、今しがた繰り出された紅玉牙の攻撃をも受け止めた。


「やるわね、妹」

「……やることが汚いですよ、姉さん」


 初手から攻撃の正体が分かってはいけないと踏んだのだろう、彼女の選択は正解である。見えていれば受け止め、回避することも難しくはなかっただろう攻撃、つまるところただの斬撃だ。


 もっとも、そう言えるのは彼女らが同格であるからこそだろう。人が巻き込まれれば数秒と保たず、肉片すらまともに残るかどうかも怪しい、すさまじい攻撃の応酬。生まれた時期はほとんど同じ、享華した時期も同じ――技術も同格。勝敗を分けるのは、どのような力を持っているか、ということだけである。


 斬撃――魔力によって生成された力場が射程距離を伸長する、物理的な実体としての腕剣を媒介にした液能「透剣気」。力場に距離は関係なく、伸びるとはいってもどこかに引っかかる恐れはない。それはただ、敵手に投射する刃の力である。剣気であって剣気ではない、液能というルールに反逆する、形を持たない形の力。


「まともに打ち合っても傷付くだけよ?」

「理解、しています」


 桜玉牙は聡い。この攻撃を破る方法がないことはすでに察していた。正攻法で相手を倒して、どうにか相手の力を殺ぐ以外にはどうしようもない。


『どうしたんだい、さくら! クレに押されっぱなしじゃあないかい』

「殺すのが、嫌で――」


『しょせん奪い合いなんだよ、命は! 殺さなきゃ殺されるだけさ、ひとりで生きるならね……それが嫌だってんなら死にな、なにも殺さなくって済むよ』

「死ぬ……」


 死とはなにか、彼女には分からない。一方的に奪える力を持っている彼女には、現実感を持って考えることができなかった。


 ただ、これだけは悟っている。


(死のうとしても、体は動く。私は死にたくないんだ)


 そう、彼女が自らの答えを手にしたときのこと――死のうと目を閉じた彼女は、その瞬間に目を開けた。それは生きとし生けるすべてが持つ本能、ただ死ぬことなどできるはずもなかったのだ。


(死ねないなら、生きるしかない……嘘でも何でもないんだ)


 多くの生物は、そんな答えを必要としない。生きるために生きているのだから、死ぬことを避けるために必死になっている。必死で生きる彼らに、心が死なないためのヒントなど不要なのだ。


 やるべきことはひとつ、そしてそれを妨げるものは存在しない。


「姉さんは生きたいですか?」

「言ってる意味が分からないわね。生き残るために戦うんじゃないの」


「ええ……そうでしょうね、きっと」

「死ぬ前に「生きたいか」なんて、妙なことを聞くのね」


 勝利を確信して疑わぬ、自信にあふれた……ことによると嫌味ったらしいようにも感じる口調。それも当然のことだ。相手は防戦一方、紅玉牙の勝利は簡単に揺らぐものではない。傷は浅いが、彼女の身に付けた勘は石の「傷が大きくなる場所」をすでに見抜いている。


「ふふふ。あなたも生きたいでしょうけど、さようならね」

「ええ、姉さん――さようなら」


 勢いよく振りかぶった腕剣が振り下ろされた。


 勝負はついたはずだ――ほんとうに、桜玉牙が防戦一方だったのなら。




 何よりも速いものとは何か――。魔力工学が発展し、科学的な方面ではあまり発展を見ていないこの世界には、正しい答えを出せるものは少なかろう。もしくは、いないのかもしれない。あまりにも当たり前に存在し、それを意識することすら少ないもの。


 転生者ならば即座に答えるだろう――「光だ」と。あるいはその答えにたどり着けた時点で、桜玉牙は世界で唯一の天才と言えたのかもしれない。彼女はそれを使う方法を生み出し、力としての光を自身の液能に組み込んだ。


「あら? (わか)れのあいさつは済んだはずだけど……?」

「ええ、済ませました」


 もう、ほんのわずか先に生まれた個体を姉と慕うことはないだろう。姉にはもとよりその気はなく、ただ争う相手としてしか見ていなかった。覚悟を決めた桜玉牙は、その力を極限まで尖らせて、腕剣に収束する。


 隙を逃さず紅玉牙の「透剣気」は彼女を打ち据え切り刻まんと振るわれるが、結節質アルエリウムと物質化魔力の複合結晶はそうたやすく切断できるものでもない。魔力工学の世界でさえ、それを切断する役目を与えられているのはエディルム・モールト鋼の回転鋸なのだ。衝撃音や亀裂の音、地響きのように激しい音が幾度響いたところで、負った傷は知れたもの。


「ふうん……それがあなたの力ってわけ。ただの剣気にしか見えないけど」


 言葉を返しはしない――もはや、それは無為。すでに決められた運命が閃くときを待っている状態で、あえて嫌味な言葉を残すこともなかろう。


 小細工はあれこれと用意してあるが、それを使うつもりなどない。ただまっすぐに貫くだけがもっとも強い攻撃だと思っている彼女は、ためらいなくそれを実行する。腕剣から、まばゆい光がほとばしった。


「なに、その光は……?」


 桜玉牙は光を手掛かりに、敵の命脈を視る。頭部と胸に命力が集中し、腕にはあふれんばかりの魔力が蓄積中、放たれるときを待っている。腕に魔力が集中していることは魔力眼でもわかること――命を視認することができる目はまた別物である。


 光の形を成している命力に、少しばかり違う力を持った別の光をぶつける――あとで体内に戻す予定の血液に、違う血液型のそれを混ぜるがごとき暴挙。


「ぉごぼ、ぼっッずぐ」

「さようなら、姉さん」


 肋骨の内部がすべて消し飛んだのと同じ程度、と述べればおおよそのダメージを想像できようか。なまじ命が形となって見えているだけに、そのダメージは防ぎようもない。そして、命を見ることができる彼女の液能との相乗効果(シナジー)は、恐るべきものがある。


「姉さんには死んでほしくなかったけれど……。あえて言わせてもらいます」


 その程度(・・・・)だったのですか――と。


 軌道も読める、徹らない、同じような強さを持った相手(わたし)にはまったく通用しない攻撃を、あれほどの自信をもって使おうとしていたというのですか、と。


 重くのしかかる罪悪感とともに、言い訳のようにつぶやいた。

 もうゲーム的に解説とかできなくなってきた液能たち。うーん、無理やり例えてみるか。


命力ゲージ:緑

気力ゲージ:黄

魔力ゲージ:青紫

管理「っていうふうになってます」


さくら:命力に攻撃

管理「あれ、HPが黄色くなってますよ? SPに統合、補充しとくか」

クレ:(死亡)


 命が別のものになったので、ガバ判定で「え、でもHPゲージに入ってるから」とか許されず「色で判定してるよね(威圧)」ってふうに、命が強制的に塗り替わる感じですかね。死力で動いてるアンデッドはHPがマイナス判定だけど、プラスが入ってくるとゼロに近付き、ゼロ=「死」にたどり着くとアンデッドとしての死を迎えるという設定です。プラス命力は空気中にいくらでも漂っているので、充填した死力はすぐ抜けて反応してなくなる……だから充填式はダメなんだよ。

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